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さいたま文学館(埼玉県桶川市・桶川駅)

埼玉に関係する文士たちを特集しているさいたま文学館はミュージアムの他に図書室や桶川市民ホールが入っている複合施設として桶川駅から5分ほど歩いた場所にある。この施設の1階と地下階がさいたま文学館となっており、今回は企画展として澁澤龍彦に関する展示を開催している。

入口すぐの1階部分は埼玉県の地図を表示しながら、ゆかりのある文士たちを紹介するコーナーとなっている。埼玉の生まれ、埼玉に一定期間の居住、埼玉が舞台の作品を描いた人物、といったものにスポットを当て、該当する90人ほどの文士をパネルで紹介しながら、そのうち知名度や業績、ゆかり度合いなどから選ばれた19人を地下階で詳しく紹介するというもの。階段を下りた地下階では、まず常設展としてその19人の作品を展示している。

展示室の入口

埼玉を作品かした武者小路実篤や田山花袋、埼玉に居住した中島敦や深沢七郎、埼玉で生まれた三上於菟吉や豊田三郎といった人物が展示の中心で、自身の理想郷として作った「新しき村」を宮崎県から埼玉県へ移した武者小路実篤、幼少期から過ごした中島敦の写真や手紙など、作家の人物像を浮き彫りにする展示内容となっている。また小説家だけでなく俳人にもスポットを当て、加藤楸邨や石田波郷、中村草田男などの作品も紹介している。

入り口すぐの展示室

そのほかにも県内の有志によってコレクションされた永井荷風の作品コーナーや、『クマのプーさん』などの翻訳で知られる石井桃子のコーナーなどもある。企画展の対象である澁澤龍彦も埼玉に居住しており、常設コーナーの一部では川越で幼少期を過ごした澁澤の生活や、浦和での高校時代にフランス文学と出逢い、その世界へと傾倒していった歴史を紹介している。

地下への階段 撮影できるのはここまで

企画展では澁澤龍彦の「ドラコニア」についてを特集。「ドラコニア」とは澁澤龍彦が思い描く文学世界のことで、龍彦の領土という意味。フランス文学に傾倒しその翻訳や研究者として執筆をする途上でデカダンスに美を見出して収集した多くのコレクションは今も鎌倉の自邸に眠っているという。マルキ・ド・サド『悪徳の栄え』翻訳によって猥褻物頒布罪に問われた通称「サド裁判」を経て、エッセイや評論、さらに小説の執筆を行なった澁澤龍彦。コーナーでは三島由紀夫との関係や荒俣宏、唐十郎との交流といったコラムも添えながらその生涯に渡る作品を紹介している。澁澤ファンであればぜひ訪れておきたい展覧会である。トイレは洋式。

たっちゃんの企画展やってます


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