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郷さくら美術館(東京都目黒区・中目黒駅)

中目黒駅から歩いて数分、目黒川を渡り、川沿いすぐにある郷さくら美術館では日本画家である村居正之の個展「村居正之の世界―歴史を刻む 悠久の青―」を開催。画家として活動し50年以上のキャリアを積み上げてきている村居正之の後半30年を中心とした作品を展開している。

村居正之がギリシャへ渡った時に魅了された風景をテーマにした「ギリシャ・シリーズ」が中心になっており、ギリシャの遺跡や建築を描いたかなり大きな作品が1階から3階までの各フロアに数多く展示されている。竹内栖鳳の流れを汲む池田遙邨・道夫の主催する青塔社で学び独自の作風を作り上げた村居正之は特に群青が特徴的な作品を多く手がけている。「青い墨絵」とまで称されるこの深い青に圧倒される。

『月照』この青の美しさったらない

大きな絵にたくさんの群青が使われていることから、ただでさえ高価な岩絵具にどれだけの金額が掛けられているのか勘繰ってしまうけれど、この群青は作者が自ら原石から精製したもの。高価な岩絵具をそのまま用いるのはそれだけでコストがかかるということから、ならばそれに比べれば安価な原石を購入して、自分で岩絵具へ精製すればいい、ということではじめられたのだという。遠慮のない群青の色遣いがとにかく美しい。

写実のような水面が映える『映』
水の深さに溺れそうになる『洸』

山あいに佇む民家の灯りが印象的な『メテオラ』や夜の神殿を照らす月明かりの『月照』、時の移ろいを感じさせる写真のような『刻』、中空に浮かぶ月が映える『アクロポリスの月』など1階の大きな作品が印象的だが、中でも『輝く夜』は、2mmの面相筆1本のみで描かれたという大作。完成までに3ヶ月を要したといい、作者自身も二度と経験したくないというほど過酷な制作だったという。ほかにも街並みの白さをギリシャの深い青と対比させた作品など見どころがたくさん。

『輝く夜』とにかくでかいんです これを2mm筆1本とか信じられない

トイレは1階が多目的トイレでウォシュレット式。2階には男女が別になった個室トイレがありこちらもウォシュレット式。各フロアには部屋の真ん中にソファが設えてあるため、非常に落ち着きながら作品を鑑賞できる美術館。期間ギリギリになっての訪問だったけれど多くの人に知ってほしい美術館と作品。

こっちは3階 明るい青の作品も際立つ
こっちは2階 群青だけじゃないんぜ
黒光りの建物も重厚感があって好き


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