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世田谷美術館(東京都世田谷区・用賀駅)

世田谷美術館では企画展として「マルク・シャガール 版にしるした光の詩」を開催。神奈川県立近代美術館のコレクションから約140点の作品を紹介している。シャガールというビッグネームであるものの、会期が2ヶ月足らずと短いので急いで訪問することに。今回は絵ではなく版画を中心とした展示となっている。

毎回こちらの美術館に訪れる時には東急田園都市線の用賀駅から向かうのだけれど、用賀駅から歩いて20分近くかかる距離にあるにも関わらず苦にならない。それは駅から美術館のある砧公園へ向かうまでの道がほぼ平地ということと、美術館までのプロムナードが「いらか道」として整備されているためで、特徴的な装飾のプロムナードにはいろいろなところに百人一首の句が刻まれていたりして歩いていて飽きない。

いらか道 床などに点在する百人一首の句をさがすのも楽しい

そんな高揚した気分で訪れる世田谷美術館、こちらも建物自体が素晴らしい施設になっていて、入口から展示室までのアプローチも美しく、展示室の手前にあるロビーも良い眺めになっている。最初は『ラ・フォンテーヌ寓話集』から。動物たちを主人公とした寓話で、失敗談などから教訓のようなものを示しているこの童話集、シャガールの洒脱なタッチもさることながら横にあるキャプションで物語の説明があるのと相まって見応えが充分。聞いたことのある話もいくつか存在するはず。

展示室に至るまでのアプローチが美しい

続いては『ダフニスとクロエ』の挿絵である。こちらは原作を読んだことがあるのだけれど、とにかく精霊に祝福されてチート状態のダフニスとクロエがくっつくまでの話。災難に遭おうが何しようが精霊に祝福されているので乗り越えてしまう。その話の一つ一つの場面を鮮やかな色彩で描く。ほとんどがダフニスとクロエが抱き合ってたりいちゃついているのがウケる。併せて『悪童たち』という作品を紹介。ジャン・ポーランの原作に共鳴したシャガールが絵を添えており、作中にはポーランとシャガールを模した人物も登場する。

展示室は撮影NGなので代わりに館内の様子をお楽しみください

次の部屋では今回の展覧会の中でもタイトルにもあるように自身の作った詩と、それに添えた絵を描いている『ポエム』のコーナーとなっている。おそらくシャガールにとっては今回の中で最も思い入れの強い作品群かもしれない。画家としてだけでなく詩のクオリティもかなりのもの。シャガールの人生の集大成を振り返ったような感じだろうか。また隣室では『馬の日記』という馬からの目線で書かれた日記として風刺を描いた作品も紹介されている。

展示室は撮影NGなので代わりに館内の様子をお楽しみください

最後は『サーカス』の挿絵。制作に取り掛かってから中断した時期があるので実際は古い時代から描かれたものだけれど、今回の展示されている作品の中でも『ポエム』と並んで新しい時代に完成している作品群となる。踊り子や動物、天使といったモチーフはまさにシャガールらしさに溢れており、展示会の最後を飾るのに相応しい。テクニックと精神、両方の意味合いで脂がのった時代の作品。

展示室は撮影NGなので代わりに館内の様子をお楽しみください

2階では常設展示のミュージアムコレクションとして「雑誌にみるカットの世界」を紹介。雑誌『世界』と『暮しの手帖』をもとに、目次欄などにある挿絵のカットに注目して紹介するという、かなり意欲的な試み。普段あまり気にしたことのないこういったカット絵も、中川一政、山口蓬春、池田満寿夫、加山又造をはじめとして錚々たる面々が手掛けている。『暮しの手帖』は編集長でもあった花森安治が表紙画を手掛けている。

展示室は撮影NGなので代わりに館外の様子をお楽しみください

最後は北大路魯山人の手がけた陶磁器と、彼を支援した塩田岩治と南莞爾を紹介。こちらの美術館は展示室だけでなく屋内や屋外の展示物も美術品が多く点在しており見応えが充分。トイレは2階が和式と洋式、1階はウォシュレット式。

展示室は撮影NGなので代わりに館外の様子をお楽しみください


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