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小黒恵子童謡記念館(神奈川県川崎市・二子新地駅)

都内近郊の個人ミュージアムには画家のアトリエだったり文豪の住まいだった場所をそのまま生前の偉業を伝えるための博物館として利用している例が多い。音楽家もその例外ではなく、都内だと神楽坂の宮城道雄記念館や代々木上原の古賀政男記念館あたりがその最たるものだろうか。代官山の美空ひばり記念館もそういう意味ではこの枠内に入る。都内から多摩川を越えた神奈川県川崎市にもその一つ、いくつもの童謡の作詩を行った小黒恵子の旧宅をミュージアムにした小黒恵子童謡記念館がある。

もともと邸宅としていた場所を生前よりミュージアムとして開放しており、死後に川崎市に寄贈されたというもの。広い庭にはたくさんの樹木が咲いている。2棟ある建物のうち、片方はピアノレッスンなどに使われている貸室。「シンデレラのスープ」という自身の作った作品のタイトルが付けられている。展示室があるのはもう片方の建物。入口から広いホールが広がっている。

これが正面玄関です

ホールに見える多くのアンティーク楽器に惹かれつつも、まずは2階の展示室から見学。2階は自身の作品から「ニャニュニョのてんきよほう」というタイトルの部屋になっており、こちらでは小黒恵子の生前の軌跡を紹介している。「ハダシとハダカ」で日本作詩大賞、「飛べしま馬」「ライオンの子守唄」で日本童謡賞、「やあこんにちは」で赤い靴児童文化賞など、数々の童謡を手がけてきた小黒恵子は、NHKの『みんなのうた』や『おかあさんといっしょ』などにも多くの作品を提供した。

童謡、こども番組の名手

谷内六郎の童画に触発されて童謡をつくりはじめた小黒恵子は詩人であり童謡の歌詞を手がけていたサトウハチローに師事し同様の基本を学んだ。作曲家の高木東六とのコンビで多くの作品を手がけ、『おかあさんといっしょ』のうたのおにいさんだった田中星児とは、歌だけでなく、作曲作詩のコンビとしても多くの作品を手がけている。児童文学に関連する分野での交流も多く、やなせたかしや中田喜直、江間章子、藤浦洸、まどみちお、服部良一といった大正・昭和を代表する作曲家・作詞家・児童文学家たちとの手紙も残されている。変わったところではいけばな草月流の師範でもあり、台湾国家元首の蒋介石の生誕祭の会場にいけばなを飾ったりしている。

生前から巨大オルゴールなどを設置

作曲家の小林亜星と共にパンダのトントンの名付け親になったり、全国の児童合唱団に向けて顕彰と助成のために「花とライオン児童合唱音楽賞」を設立するなど、自らが世に出るきっかけとなった児童文学への恩返しをするような形で、常に児童のために、という眼差しで臨んできたその生涯に触れることができる。

続いて1階の展示室は「モンキーパズル」という名前の貸ホールとなっている。展示室の奥にベーゼンドルファーのグランドピアノや蓄音機、それにアンティークのオルゴールが数台ある。特に3台並んで立っているオルゴールは100年前に作られたもので、ドイツ製が2台とアメリカ製が1台、これらは実際に試聴することができる。逆に動かさないと劣化してしまうため常に動かす習慣をつけているそう。貸ホール内では日によってコンサートが催されており、アンティークに囲まれながら優雅な時間を過ごすのも良いかもしれない。トイレは多目的トイレと男女共用でウォシュレット式。

貴重なオルゴール 実際に動かしてくれます


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