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奈良 興福寺のすごさ

興福寺の御仏の中でもっとも人気な阿修羅像。 

阿修羅はもともと戦いに明け暮れる生活を送っていましたが、ある時仏心に目覚め、仏の弟子になります。 

その時気持ちを変えたのが「鐘の音」だったそうで、その妙なる音色が心を動かしたとか。 

生活を180度変えるような音色とは、どんな音だったのだろうと思うのですけど、古来より鐘の音は仏の声などとも言われてきたそうです。 

鋳造という技術も、外国から入ってきたものでしょうから、昔の日本人は金属が鳴る音というのに、とても不思議なものを感じたでしょう。 

古墳から出てくる銅鐸も同じような感じだったのでしょうか。 

思えば興福寺には実にすごいものが、ずっしりと詰まっています。 

阿修羅像は奈良時代の傑作ですが、阿修羅を安置していたお堂は燃えてしまって、鎌倉時代に新しく建てられたものが残っています。 

鎌倉時代といえば運慶・快慶です。 

運慶が作った傑作の一つ、無着世親像が北円堂に安置されており、それが公開となります。 

興福寺は法相宗の寺で、その教えを伝えた始祖とも言うべき人々が弥勒如来であり、無着世親です。 

阿修羅像と無着世親像はまったく違いますが、運慶たちはまだブレイクする前、奈良の古社寺の仏像の修復などをして訓練していたといいますから、阿修羅のことはかなり研究していただろうと思います。 

当時はまだ阿修羅の色の残り具合もよかったはずで、私達とは違う感想を頂いたかもしれません。 

阿修羅の前に立っていたであろう運慶が作った仏像が無着世親で、その無着世親の前に立つ私たちは、長い長い歴史をそのまま仏像に見ることができます。 

みほとけという信仰の対象であり、芸術であり、歴史そのものである。 

そういうのに出会える、興福寺はほんとにすごい場所です。 

巻頭イラストはTake Kurokiさんのものを拝借しました。ありがとうございました。

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