見出し画像

日本霊異記イベントやります!

古事記とか日本書紀とか、日本には古くから伝わる素晴らしい書物が色々あります。

その中で『日本霊異記』というものがあります。

多くの方が知らない…聞いたことがない!とおっしゃるかと思いますが、これがめっぽう面白いのですよ!

この本をテーマにしたトークイベントを2024年11月30日(土)大阪で開催します!

日本霊異記とはなにか?

平安時代のはじめ頃に作られた「仏教」に関するお話アンソロジーです。

でもただの「仏教」バナシが集まっただけでありません。

当時は仏教が伝来して、もうかなり世の中に浸透してきた時期でした。
そして同時に「末法の世」と信じられていた時代だったのです。

お釈迦様が開かれた仏教は、最初の1000年は正しく伝わり、次の1000年は形だけになり、その次の1000年は、すっかりその効力が失われてしまうと考えられていたのです。

仏教のお力が失われてしまったなら、あたいたちは何に助けてもらったらいいの!?

こんな不安が浸透していた世の中。
仏教を信じていた人には、恐ろしくてたまらなかったことでしょう。

『日本霊異記』の作者は景戒というお坊さん。
彼もまた、同じような不安にドキドキしていたかもしれません。

そして同時に、この時代は庶民にとってとてもツライことが多い時代でした。

今のようにインフラは整っていないし
人権なんて概念はないし
病気しても病院があるわけでなく
福祉が充実してるわけでもなく
お薬はもちろん栄養だってどれだけ取れるか?
元気で健康で太い実家があって、頼れる親戚や役人のコネがあればハッピーライフもあったでしょうが、多くの人は生きているだけであーしんど!という世の中だったのです。

そんな時代ですから、いかに仏教が頼りにされていたのか想像できるかと思います。

そんな時代に生きる人達に、仏教の教えがいかに大事で、守るのと守らないのでは人生が変わってくるよ!ということを伝えるのがこの『日本霊異記』なのです。

色んな仏教的な説話が収録されているのですが、その内容は今の私達にも通じる
「両親を大切にしよう」
「恩をうけたらちゃんと返そう」
「神仏は大切に」
という道徳的な内容。

でも、私はこれに加えて、こういうことを念頭においてこの時代を生き抜いた人々の様子、その生き様にぐっときているのです。

これだけでしたら「そうか…昔の人の価値観って今の私達と似てるんだよな…」で終わってしまうのですけど、さらに加えて当時の人々の過酷な日々も見え隠れして、そこに非常に興味がわくのです。


たとえば…

■『実録! 平安時代のクズ男!』

・弥勒菩薩の願うところに応じて奇形を示したまひし縁

という章では、現在の滋賀県に住んでいたある男の話が出てきます。

彼はまず「あるところに金持ちがいた!」と紹介されるところから始まるのです。

パーソナリティを紹介するのに「金持ち」というカテゴライズがすでにおもしろい。

さらにこの男は信心深かったので『瑜伽論』という大変ありがたく難しいお経を書き写すことを考えます。

お経は読むことも大事ですが、書き写すことに大変功徳のあった時代です。

しかしこれが難事業で、うまくすすみません。
そうこうしてるうちに、財産は乏しくなり、生活は困窮していきました。
そこで男はどうしたのか?

妻子を捨てて逃げたのです!

ええええ…

そのあと彼はどうなったのか…
実は熱心に仏道修行に邁進して、その結果弥勒菩薩の導きに会うのです。
そして幸福になったというのです!

仏教では、執着を捨てることが教義の中でとても重要なのですが、家族もこれに入ります。
お釈迦様も妻子を捨てて修行の旅に出られました。
この男はそういったことをうっすら彷彿とさせるのです。

これを読んだ当時の人々はどう思ったのでしょうか?
「御仏の教えにしたがって、家族を捨てて仏道に邁進すればいいことがあるのか…」
「いやいや、そんな究極の選択ってどうなのよ?」

あなたはどう思いますか?

『日本霊異記』は、どんなに時間が経っても、人間というものは変わらないということ。迷い、悩み、苦しみ、なにかにすがりたい生き物だということ。
そしてそのすがるべき先は「仏教」であるということを教える書物だということ。
でも「そんな風に生きた人々」を俯瞰して眺めることで、私達はまた「今の時代に沿った生き方」を見つけられるんじゃないかということ。

そういったことを教えてくれるのではないかと思います。


イベントは2024年11月30日(土)
大阪・歴史博物館で開催します。
ぜひいらしてください!



奈良でガイドをしています。これからもっとあちこち回っておもしろいガイドを提供します。ご支援どうぞお願いいたします。