日記、感想『娼年』

一昨日、用事のついでに久々に古本屋に行った。あの人気子役がCMに出演している某有名店だ。特に買いたいものがあったわけではないが、本屋に来るとついつい本棚を目で追ってしまう。
この店では一番安くて一冊100円で売っている。これは読者にとっては喜ばしいが、著者とそれに関わる人たちが一冊の本を仕上げるために費やした膨大な時間と労力を思うと、何とも申し訳ない気持ちになってくる。
と言っても無職の自分にはありがたいので、その安さを享受させていただきますが。
それと僕は最近の妙に大きな活字で書かれた文庫本が好みでないので、小さな文字で書かれた本を買おうと思うと古本屋が丁度いいんですよね。

そこで30分ほど吟味して以下の3冊を購入した。

『相対性理論 上』 W.パウリ 内山龍雄 訳 ちくま学芸文庫

『ツァラトゥストラはこう言った 上』 ニーチェ 氷上英廣 訳 岩波文庫

『娼年』 石田衣良 集英社文庫

『相対性理論』は以前から真面目に学んでみたいと思っていたのに加え、帯に書いてあった「ノーベル賞学者パウリ21歳の名論文」の文字に触発されて思わず買った。21歳で書いた論文が翻訳されるってどんな天才だよ...。読むのに必要な知識はおそらくあるので読破できると信じたい。下巻は一般相対論らしいが僕にはまだ早い。

『ツァラトゥストラはこう言った』はネットでよく見かける難解な本の代表格なので、挑戦してみたくなった。100円だったし()。下巻は売ってなかった。

打って変わって『娼年』は去年、松坂桃李さんが主演を務めた映画の原作で気になってたので。100円だったし()。

この中で最も読みやすいと思われる『娼年』を読んだので、感じたことを少しだけ書こうと思う。

 『娼年』の映画が話題になった去年、ネットで(映画の)おおよその内容は読んでいたので、言い方が悪いかもしれないが官能小説に近いのではないかと思っていた。しかし実際に読んでみるとそのような描写はあるけれどもそれほどしつこくなく、行為の描写そのものよりも娼夫の主人公の内面がメインに描かれていて非常に文学的であると感じた。
と思ったら直木賞候補だったんですね。驚きました。

僕は女性とは付き合ったことはおろか、親しくなったこともないので主人公のように女性の内面にある欲望を垣間見る機会はなかったし、愛とか性とか語る資格もない。でも誰だって人には見せ(られ)ない内面を抱えていて、それは他人にとっては異常なことでも当人にとっては普通なことだったりする。そんな様々な、一人ひとり違う内面を持った人たちが関わるから物語が生まれる。これはフィクションだけではなく実際の生活でもそうだ。
僕は今まで他人と関わるのを避けてきた傾向があって、このままではいけないとも思っている。現実には『娼年』に出てくるような優しい人ばかりではないし、合わない人もいるけれども逃げてばかりもいられない。

普段の生活の中で「自分の知らないことを知らないまま判断、批判しない」ように心掛けているつもりだが、無意識のうちにしてしまっていることがよくある。今回読んだ『娼年』もそうだ。よく知りもせずに「こんな作品だろう」と思ってしまっていた。でも読んでみたら全く違っていて本当に素晴らしい作品だった。
今自分は20代半ばだが、これから歳を重ねるにつれてもっと価値観は凝り固まっていくだろう。一度先入観で判断してしまうと、それを覆すのは案外難しい。しかし、物事を正しく判断するにはそれを自分の目で見て考え、理解するほか無いはずだ、と改めて肝に銘じた。

P.S.
Amazonで調べたら『相対性理論 上』が中古で6000円位だった...売ろうかな^^;

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