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『アメリカン・ビューティー』の危険

『アメリカン・ビューティー』の危険と銘打った今回は、映画『アメリカン・ビューティー』に紐付けしながらアメリカ型資本主義の限界と、アメリカ的幸福の危険について書こうと思います。

まず映画『アメリカン・ビューティー』の基本情報について。平凡な核家族が、それぞれの役割バランスを失うことで、崩壊していく物語であり、現代的な「普通」が内包する危険について描いている作品です。

「アメリカの美」と銘打たれたこの作品について、今まで、映画的観点から様々な批評がなされてきましたが、今回は少し違う観点から紐解いていきたいと思います。

意外にも、私が注目したのは個人住宅とサラリーマン社会についての描写が散りばめられていた点に注目しました。

何故個人住宅を否定する必要があるのか?そう疑問に思う人もいるかもしれません。

何故なら、あまり知られていないことかもしれませんが、20世紀のアメリカの経済成長を支えたのは間違いなく住宅ローン制度であるからです。かのリーマンショックも実は住宅ローン制度の崩壊が発端であり、日本が急速な経済発展を遂げたのも、そのアメリカの制度を丸パクリし、推進したからなのです。元来個人に住宅建造の権利を与えるというのは、国が本当に行き詰まった際に行う政策であり、言わば最後のカードなのです。

そして日本が戦後、好きなように家を建てまくった結果が、今の空き家問題です。なんと2030年には3軒に1軒が空き家になるという試算も出ています。またもうひとつ。過度な経済活動のために、元来家を建てるべきではない場所にも、家を建てた結果、自然災害で多くの被害を被っています。全ての原因ではないにしろ、有り得ないような場所に建っている家は多々存在します。

映画『アメリカン・ビューティー』の中でも実にシニカルにアメリカ的住宅観が描かれている。

そして映画の話に戻ります。この映画の主人公である夫は、住宅ローンを支払うためにストレスフルな業務をこなしているのですが、なんと妻は不動産販売を生業としているのです。そして同時に妻もその仕事にストレスを感じている。なんとシニカルな構図でしょうか。

不動産販売をしている妻が家に帰ると、夫に「家のローンはどうなるの?しっかり働きなさい」と文句をぶつけているのです。これは笑うしかない。ですが現実の世の中と、殆ど差がないから怖くなってしまう。

この映画のメインテーマではないにしろ、このように『アメリカン・ビューティー』は実に上手く、アメリカ的資本主義の闇を住宅目線で批判しています。

今多くの日本人が抱いている、「サラリーマンとして働き、ローンで一軒家を持つ」というアメリカ資本主義的発想は、どういう結末をもたらすのか再考する必要があります。

そして『アメリカン・ビューティー』はそんなことを考えさせてくれる映画でした。

ではでは

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