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上野のミイラでチュイチュイ事件

ミイラ展の暗がりに金髪夫婦

最近、日本の美術館でミイラ展ばかりやっているのはなぜだろう。これはコロナが発生する、はるか10年以上も昔の話。

N氏が「大英博物館 ミイラと古代エジプト展」を観賞するために東京・上野の国立科学博物館へ出かけたときのことである。

実はこれを一回見てから、いろんな意味でもうミイラはいいかと思って、ミイラ展は行っていないのだ。

この日の見どころは3D映像。映像を観る前に美術展フロアーにある別室で待たされるというディズニーランドのようなシステムだった。

ほかの客30人ほどといっしょに暗がりに通されたN氏。前には小学校低学年くらいの2人の子どもを連れた、30代半ばの金髪の夫婦が立っていた。

電気が消されて、解説のアナウンスが始まる。

ミイラを冒涜するタコ吸い男

すると、まもなく旦那が奥さんをへんな目で見たかと思うと、ピンク色の雰囲気を醸し出しながら唇を近づけていく。

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後ろから見ていると、彼女の左頬のあたりに唇をピタッ。それからが、さすが本場。こっちが恥ずかしくなるくらい濃厚だ。ブチュー……チュイチュイ……チュイチュイ。

奥さんは嫌がりもせず、かといって応じてベタベタするわけでもなく、自然体で身を任せている。

しかも、キスは1回で済まず、いつまでも続く。ブチュー……チュイチュイ……チュイチュイ。

うしろにいるN氏にとっては、その音がアナウンスよりもうるさい。

子どもたちはそんな光景に慣れているのだろう。「パパ、こんなところでキモイよ」などとは言わない。見慣れた光景なのか、なんの関心もないのだ。

しばらくして、ようやく一度おさまった。ところが、この旦那はまた暗がりでもよおした。数分後、奥さんをまたへんな目で見るとブチュー……チュイチュイ……チュイチュイ。

お前はタコ?吸血鬼?なにをそんなに吸いたいんだ?なんだか、奥さんのエネルギーそのものを頭部から吸い出したがっているようにも見える。

エビやカニの味噌をすする音

そもそも奥さん、左頬からこめかみにかけて旦那の唾でベトベトだよ。いいの、いいかげん臭いでしょ?あんたら、結婚前からずっとこんななの?

想いを満たした男は一度動作を止めた。ところが、また数分後、エビやカニの頭の味噌を強くすするような音が聞こえてきた。

ブチュー……チュイチュイ……ブチュー……チュイチュイ……。粘着質の男。別れたらしんどそう。

暗がりとはいえ、同じフロアーにはミイラがいるんだぞ。そうだ、ツタンカーメン王だっていらっしゃるじゃないか。

そういうの、死者を冒涜するっていうんじゃないの?まあ、展覧会とか来ちゃってるオレたち客も、冒涜してる感はあるけどさ。いい加減にしないと、ミイラが怒って目をむいて起き上がってくるぞ。

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いや、待てよ、ミイラは死者じゃない。いや、死んでからもどって魂が宿るためのものなら、ほんとに魂が宿ってしまった人もいるかも。

となると、魂が閉じ込められてる状態?でも、布であんなぐるぐる恵方巻きみたいにされたら、せっかく生まれ変わったって動けないんじゃないのかな。

あ、そういう悪ふざけみたいな言い方、今の時代はいろいろ言われるぞ。ごめんなさい、ミイラの皆様。

どうでもいいが、奥さんがチュイチュイをやり返さなかったのには唯一の救いだった。しかし、N氏はすっかり胸焼けを起こしてしまった。

それから3D映像を観たのだが、そのあと、別の意味でため息が出る家族にふたたび遭遇してしまうのだ。

次回をお楽しみに!

後編はこちらです。


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