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香取神宮の年末詣の出会いには何か意味があると思うのだが、それが何なのかわからない

2023年12月31日、香取神宮へ年末詣をした。

参拝が終わって香取駅に向かおうとしたときだった。てくてくと歩き始めたら、60代くらいの女性に声をかけられた。

女性「あのーこちらの土地の方ですか?」
私 「いいえ」
女性「…あのー、もしご存知でしたら…(前方を指さしながら)香取駅はこちらの方向であっていますか?」
私 「そうですね、あっていますよ。私、ここに来る時に香取駅から歩いてきたので(わかりますよ)」
女性「よかった(ホッと一息)私、道が分からなくて」
私 「歩いて行かれますか?」
女性「はい」
私 「歩くと30分くらいかかりますよ。大丈夫ですか?」
女性「(私を両手で指しながら)行かれるんですよね?」
私 「はい、じゃあご一緒しましょうか、駅まで私も行きますから。でも香取神宮のところにタクシーもありますよ。本当に大丈夫ですか?」
女性「私も歩きます」

たぶんこういう会話だったと思う。

道案内をかって出たものの、GoogleMAPのナビゲーターを立ち上げて、それを見ながら女性と一緒に駅へ向かうことにした。このとき、この女性が本当に30分歩けるのかとても心配だった。そして、この人はどうやって香取神宮にたどり着いたのか不思議だった。来ることができたのに、帰り方が分からないってどういうこと?その気持ちを読み取ったのか、

女性「東京駅から高速バスでここに来たんですけど、帰る方法まで調べていなかったんです。さっき帰りの時刻表をみたら2時間後だったから、帰りは電車で帰ろうと思って」

私は、そうなんですねーと答えた後、暫く沈黙してしまった。これから30分間どうしよう。こういうシチュエーションは苦手だ。何か話さないといけないと思いつつも、何を話したらいいか思いつかない。その女性も同じことを思ったらしく、私に、

女性「私、いつもこうなんです。行きは調べるんですけど、帰りの事まで考えていなくて。それで、人に頼っちゃうんです。私、人に頼ってばかりの人生なんです。」

私は、またもやそうなんですねーと、にこやかに返事をした。その女性は顔つきはかわいい系で、若いころモテたのだろうと思わせる人だった。困ったことがあったら男性がすぐに手を差し伸べて助けてくれるような感じがした。
そうですか、そうですか。どうせ私はブサイクですよ、自分でなんでもしないといけない人生でしたよ、と心の中で毒づいた。すると今度は、

女性「香取神宮は、よくお参りされるんですか」

とたずねてきた。私は、はじめてですと言った。これをきっかけに毒づくのをやめ、足りない脳みそをフル回転させて、次に続く言葉をひねり出した。

私「実は、家の近くに小さな香取神宮があって、そこにはよくお参りをしているんです。いつか総本社にもお参りをしたいなと思って今日来ました」

すると女性も香取神宮へは初めてだと話した。

女性「いつもは、大宮の氷川神社へお参りしているんですが、知り合いからそこはダメだと言われたんです。氷川神社にお参りしているから、悪いことばかりが起こるのよって。それで、お参りするには香取神社がいいって言われてきたんです」

オイオイ、悪いことばかり起こったって...まさかその悪いことをここで話し始めないでおくれヨ。初対面でいきなり身の上相談されてもどんな反応したらいいかわからないじゃないか!

女性「それに香取神宮って日本三大神社の一つと言われていますよね」

ホッ、よかった。人生相談はマヂで無理と思っていたので助かった。日本三大神社の話題なら少し話ができると思って、私は鹿島神宮へ行った時の話をしてみた。あそこも雰囲気がよくて気持ちがいい神社ですよ、行かれたことはありますか?と聞くと

女性「あそこはダメなんです」

へっ?!なんでダメナンデスカー!

女性「香取神宮を進めてくれた知り合いが、鹿島は今ダメっていうんですよ。神様が、上にあがっていらっしゃるから。今は鹿島神宮にいないらしいです」

お~、まさかのスピリチュアル系の話?!
そういう話は嫌いじゃないと思って身を乗り出して、そうなんですか?と相槌をうったけれども、話はそこでぷっつりと途切れてしまった。ザンネン。それ以上のネタがなかったようだ。

私「いやー、いいお話が聞けました。今鹿島の神様は上にいらっしゃるのだなんて...」

と、わけの分からない返しをしてしまった。
そこからは、本当にお互いに話すことがなくなってしまい、私はGoogleMAPをみながらあと何分でつきますよ、とカウントダウンしていった。
駅が目の前にみえたとき、あれが駅です、と見ればわかる当たり前のことを言ってしまった。それくらい、何を話したらいいかわからなかったのだ。

駅に着いてからは、スマホで帰りの電車の時間を検索した。私の電車はおよそ50分後だった。私は、マジかと心の声が漏れてしまった。すると、その女性も私と同じ状況だったようで、どうしようかしらとつぶやいていた。私は、早々にあきらめて改札前のベンチに座って、持ってきたiPadで読書することにした。その女性はだいぶ長い間スマホと時刻表を見ながら、ブツブツひとりごとを言って悩んでいる様子だった。助け舟を出そうかと思ったが、自分で経路を調べている雰囲気だったし、本当に困っていたら話しかけてくるだろうと思って、読書に集中した。読書をしていたらあっという間に時間が過ぎ、電車の到着時間の10分前になっていた。私は、改札を抜けてホームに立った。その女性も私と同じように改札を抜け、ホームに立った。私は、ずっと座っていて凝り固まった体をんーっと両手を伸ばしてほぐしていた。このとき、その女性が誰かに似ていると思った。えーっと、誰だっけ?????

そうだ!日活ロマンポルノ出身の白川和子だ!

え?!まさか、本人じゃないよね?とドキドキしていたら、その女性が私に近づいてきた。

女性「あのーご親切にありがとうございました。助かりました」

私は両手をブンブンふって、いえいえそんな、これも何かのご縁です、と言いながら、その顔をじっと見てしまった。そして、女性が私から離れた瞬間スマホで「白川和子」を検索してみた。似ているけど違う。その女性は、白川和子より若かったし、柔らかい雰囲気だった。

帰りの電車は、車窓から流れるのどかな田舎の風景をボケーっと眺めながら、この出会いはいったい何だったのだろうと考えてみた。香取の経津主の神様が、困った人を助けてあげなさいというメッセージだったのだろうか。それとも、神様にたくさんの出会いがありますようにとお祈りしたことが、早速叶ったのだろうか。それとも、白川和子がキーワードなって、これから何か起こるのだろうか。きっとこの出会いには何か意味があるに違いないと思うのだが、今は閃かない。しばらく時間が経って、あのときのあれはこういうことだったと気づくのかもしれない。

とりあえず、2024年はその女性にとっていい年になるとよいナ。



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