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資本主義と人類の宇宙進出のジレンマ

いまを生きる僕たちの思想・価値観をベースに「なぜ人類は宇宙を目指すのか」という観念をアップデートしようということで,この記事を書いています.第三回目は「資本主義と人類の宇宙進出はどうあるべきか?」について考えたいと思います.初回にも書きましたが・・・私自身は宇宙工学の専門家ですが,「なぜ人類は宇宙を目指すのか」という哲学に関しては素人です.ですので,あくまで一個人の考えとして,この場であえて考えを深めてみたいと思います.

資本主義と宇宙進出のジレンマ

資本主義は「今日より明日が,明日より明後日が,人類はより成長しているだろう」という信念の元に成り立っています.資本主義は人類の成長に支えられており,人類の宇宙への進出は,その人類の成長の象徴だと思います.そのように考えると資本主義と宇宙進出は相性が良いように思われます.一方で,現状の宇宙開発は,資本主義の柱である自由市場だけでは回っておらず,国家予算を投じない限りは回らない状況になっています.すなわち,人類の成長に期待されている資本主義だからこそ,宇宙開発が進む一方で,利益追求が過ぎると,(利益創出が難しい)宇宙開発が進まないというジレンマがあります.

未知の価値

宇宙開発黎明期は,宇宙について知らないことだらけでした.地球外にオアシスはあるのか?火星人はいるのか?そういった未知への期待から,国家レベルでの大きな投資が集まりました.宇宙探査を通じて,宇宙について詳しく知るにつれて,太陽系内では地球は(人類にとっての)唯一のオアシスであり,火星にはただただ荒野が広がっていることがわかりました.

現在でも尚,太陽系の先には人類が未だ知らない無数の星があり,また,そこには生きた生命体(いわゆる”宇宙人”)がいる可能性があると考えられています.仮に人類が地球という閉じたシステムに止まり続けると,地球上の資源・エネルギーを使い果たし(エントロピーが最大になり),新たな科学的発見もなく,新たな技術も生まれず,経済成長のペースは衰えていくでしょう.すなわち,人類が成長を望む限り,宇宙という開いたシステムへ進出していくことは不可欠だと考えられます.

個体が重視される自由市場経済と宇宙開発

いまの資本主義の柱は自由市場経済であり,「消費者こそが正しい」世界になっています.消費者はあくまで”個人”の得を考えて動いているので,人類という”集団”としての価値が高い宇宙開発と自由市場経済の相性が非常に悪いように思います.実際に,これまでの宇宙開発は自由市場経済的というよりは,計画経済的に側面によって進んでいるように思います.それを計画しているのが,国家なのか?(アメリカ・ソ連・中国・日本等)それともビリオネア(Elon Musk・Jeff Bezos等)なのか?という違いがあるだけで.自由市場経済的に宇宙開発を進めていくためには,今以上に,消費者が個人の得を考えて,宇宙にお金を掛ける世界が必要となるでしょう.

現在,低価格な宇宙旅行(Virgin Galacticの宇宙旅行:https://techable.jp/archives/141449),アバター,ボディシェアリング,エンタメ(ソニーの宇宙感動体験事業:https://www.sony.co.jp/SonyInfo/space-entertainment/)等の開発が進んでいます.こうした技術・ビジネス(いわゆるB2C)が展開していくことで,個人消費による宇宙開発が進み,宇宙開発の自由市場化が加速していくことでしょう.

宇宙経済シンギュラリティ

冒頭で「現状の宇宙開発は,資本主義の柱である自由市場だけでは回っておらず,国家予算を投じない限りは回らない状況になっています」と書きました.現状は,この通りですが,この先もずっと利益創出ができないわけでは決してありません.大手投資銀行による予測では,2016年に339億ドルだった宇宙ビジネスのグローバル市場が,2040年代には1.1兆ドルに到達する試算を出しています(https://www.soumu.go.jp/main_content/000603731.pdf).市場の拡大に伴い,宇宙利用による利益創出が加速されていくはずです.この宇宙利用による利益創出が一定の割合に達して,「宇宙に投資することでお金が儲かる」という世界に到達すると,資本主義と宇宙開発の歯車がガッチリと噛み合い,人類の宇宙進出は急速に加速するでしょう.そのタイミングこそ,宇宙の経済活動シンギュラリティであり,そういう世界が,これから30年以内には訪れるのではないかと,私は感じています.

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