見出し画像

「いっしょにあそびたかったんだもん!」@3歳児のケンカ

《登場人物》
Aくん…3歳児男児
Wちゃん…3歳児女児
__

ある日の夕方頃のこと。

保育室を歩いていると、ふと目の前でバタン!と音がした。

わーーーーんと泣き出したのはWちゃん。
むむ、これは入った方がいい感覚。

ひ「どうしたの?」
W「Aくんがおしたのー!」

ここで直接Aくんに振ると、
うまくいかないことが多いので、
周りにいた子に聞いてみることにした。

ひ「〇〇ちゃん、みてた?」
「みてない」
ひ「〇〇ちゃんは?」
「みてたよ。Aくんが、Wくんをおしたの」

こうして巻き込んでいくと
(これがいいかは分からないが)
周りの子も二人の気持ちに入っていく、
そんな感じになる。
自分ごとになる?ような感じ。

ひ「Aくん、おしたの?なんかあったの?」
M「だってね、Wちゃんがね、押したらダメって言ってなかったから、分からなくて押したの…」

なんだか意味がわからなかったが、
押しても大丈夫かなと思った、みたいな感じだろうか。でも聞き返しても、いまいちな感じだった。Aくんが少し戸惑っている感じもした。

ひ「Aくん、分からなかったって。どうしよう」
W「Wは、Aくんと一緒に、ダンボールにはいりたかったの!でもAくんが押したから!」
ひ「あー!Aくんと一緒に、こうやってダンボール被りたかったんだ!だって!」

A「だってさ、そのダンボール小さいからさ。あっちの大きいのじゃないと被れないよ」
ひ「あーー、たしかに小さいのだと被れないね。大きいのあるかな」
W「あれしかない(他の子が使ってる)」
A「じゃあさ、今度野菜が届いたら、そのとき使えばいいんじゃない?」
ひ「あ、そうだね!今度野菜来たら、大きいダンボールつかえるね」

少し泣きは弱まったが、まだ泣いているWちゃん。解決したいわけではないが、心がモヤモヤしているときはもう少し話を聞きたい。

ふと質問してみた。

ひ「Wちゃん、どうしてAくんと遊びたかったの?」

なんて不躾な質問だろうか。
そんなの、理由があるんだろうか。
しかもぼそっと聞いたのだ。
返ってこないだろうなぁ…

と、思っていたら
とんでもない答えが返ってきた。

W「だって、Aくんとはまだ遊んだことなかったから、だから一緒に遊びたかったの


ひぇーーーー!?!?
たまげた、まさかそこだったとは!!


これに対しAくんもびっくりな答え。


A「え?前に3歳のとき、一回遊んだことあるじゃん」

ひえーーー覚えてるんかい!
ひ「一回遊んだことあるの??」
W「うん。でも、一回しかないから、もう一回遊びたかったの!」

と、このへんでなんと。
Wちゃんが前に倒れた。

なぜいま!?(笑)泣くかなぁ。
しかし泣かない。


なんだかWちゃんのピュアさに
僕の方が泣けてきた。
そうか…遊びたかったんだ…

なんというか、子どもたちってすごい。
想いが純粋すぎて、心をうたれた。
だから、保育という仕事はやめられない。

さて、
Wちゃんの想いに対して、
Aくんは冷静に答える。


A「でも、一回遊んだから、Aはもういいかなと思う」

う、そうなんだ。
そりゃないっしょとも思うけど、
でもたしかにそんなとき、あるかも。
わかる気もする。うんうん。

ひ「あー、一回遊んだらいいかなと思ったんだね。うん、あるあるそういうとき」


で、
次の瞬間。

ダンボールに足を入れ、前に倒れて顔は前。
Aくんを見ながら
なぜかWちゃんは両手を使って
後ろに下がっていった。


プププ。
あははは〜


と、
Aくんが笑う。
するとWちゃんも笑い出す。


なんと不思議な空気感。
僕も笑えてきた。

二人の気持ちが通った気がした。
分からないが、もう大丈夫だと感じた。
いい顔をしていたからだ。


お互いの気持ちを知ること。
まさか、そんな理由で泣いていたとは。
そんな想いがあったとは。
そしてその答えがくるとは。

それでも子どもたちは
気持ちがわかるとすーっとしていく。
これがいいかは分からないが、
このときの二人の感じはいい感じに見えた。


この一連、
近くにいた子も結構真剣に見て聞いていた。
年下の子も、だ。

こういう時、
話しかけているのは二人にだが、
みんなで場を共有している感覚になる。
二人だけの場にはなぜかならない。

みんなが、
二人の気持ちに心を寄せる。
寄せているかは分からないが、
それもあって、
二人の気持ちが溶けたのかもしれない。

この記事が参加している募集

子どもに教えられたこと

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?