イスの取り合い@2歳児と3歳児のいざこざ
《登場人物》
Aくん…2歳児男児
Dちゃん…3歳児女児
Eちゃん…1歳児女児(Dちゃんの妹)
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ある日の夕方保育。
園庭で過ごしていた時のこと。
Aくんが、棚の上からちょうど写真のようなアウトドア用の椅子を下ろし、腰掛けた。
もう一人の2歳の子と一緒に電車ごっこをしていて、この椅子は「(僕の)ロマンスカーの車庫」らしい。
椅子は全部で三脚でていた。
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そこへDちゃんがやってきた。
ちょうどAくんが、
「クレーン車が壊れたので、治しに行ってきます」と出かけた後だったか。
Dちゃんは、
さっきAくんが出した椅子に座った。
Aくんが戻ってきた。
A「そこ、僕がつかってた。かーわって」
D「いやだー、ここはDが座ってたの!」
ひ「あー、Aくんさっき座ってたもんね。変わって欲しいね。Dちゃん、いま座ってるもんね。変わりたくないね。どうしよう?」
2人の気持ちは変わらない。
Aくんは、Dちゃんの座っている椅子をすこーし傾けてみたり、
A「変わってくれないと、たたいちゃうよ?」
と、小さい声でつぶやいてみたり。
ひ「あれ、叩いちゃうの?でも変わって欲しいもんね。叩くのは、どうなのかなぁ」
とかつぶやいてみる。
Dちゃんは、変わりたくない。
これ、どちらも分かる。
自分がこの子なら同じことを言いたいだろう。
もしかしたら昔の自分なら
「でも、先に出したのはAくんだったよね。Dちゃん、お姉ちゃんなんだから、ゆずったげたら?」とか、軽く言っていたかもしれない。
これだとDちゃんの気持ちを分からないことになる。Dちゃんからすれば、Aくんは「いなかった」のだ。だったら、大人でも座る。
周りの子に振ってみた。
ひ「どうしたらいいかなぁ?」
「となりの椅子に動いたら?」
ひ「どう?」
A・D「いやだ、これがいい」
ひ「そつだよね、これがいいもんね!
こういうことに慣れてきたので、
解決しようとかは一切思わない。
必ず何かが起こって丸く収まる。
収まらなくてもいいのだけど、
なぜか収まってしまうのだ。
さぁ、今日はどうなる??
むしろ展開が楽しみになってきた。
A「じゃあ、20まで数えたら変わってね。
いーち、にー、さん…」
D「やめて!数えるのやめて!」
これ、個人的にはすごくDちゃんの気持ちが分かった。なんか嫌な気持ちがしたのだ。でもAくんの気持ちもわかる。彼なりに考えた答えだった。
うーん、どうするか。
あらためて聞いてみることにした。
ひ「Dちゃんは、どうしてこの椅子がいいんだっけ?」
D「だって、この椅子があったかいんだよ」
あとで気が付いたが、この日Dちゃんはジャンパーを家に忘れて来ていたらしい。園のを借りるのもいやだと言っていて、たしかにこの椅子の場所は風が当たりにくく、あたたかく感じた。
ひ「そうなんだ、あたたかいんだね」
D「おうちの椅子も、あったかいんだよ」
ひ「おうちの椅子もあったかいよねー!」
ひ「じゃあ、Aくんはどうしてこの椅子がいいんだっけ?」
A「それはね…ここロマンスカーの車庫だから。ほら、ここに「ロマンスカー」って書いてある」
ひ「あ、ここに書いてあるんだね」
D「書いてないよ!」
ひ「あ、ない。でもAくんは、書いてあるね」
と話していると、
すーーっと寄ってきた人がいた。
何人か来ては離れてを繰り返していたが、
僕の膝まで来たのはEちゃんだけだったか。
この「何人か来ては離れた」のは、
もしかしたらこの場を気にした子達が
あえてここに何かを送りにきていたとかも??
さて。
Eちゃんが僕の膝に座ったころ。
なぜかAくんとDちゃんの表情も軽くなってきた。
そして、
なんやかんやでAくん、
隣の椅子に座ったのだ!!
これ、普通はあんまり聞かないかもしれない。
聞くことで再び「やっぱりこっちがいい!」となるのでは?と思うからだ。
でも、知りたいので聞いてみる。
たとえまた揉めても構わないし、
たぶん揉めないからだ。
ひ「あれ、Aくん。どうしてそっちに座ったの?」
A「それはね、こっちでいいかなと思ったから」
ひ「ほんとは、こっちがよかったの?」
A「うん」
おぉ。
ほんとの気持ちは分かっている。
しかし表情や話す感じは大丈夫そうだ。
ひ「じゃあ、我慢したの?」
A「ちょっと我慢した」
ひ「それでいいの?」
A「うん、いいの」
と、これでこの場が終わった。
まさかの、年下が譲るという結果だった。
なんとなく不思議な流れだったので、
Eちゃんにも聞いてみた。
ひ「もしかして、Eちゃんお姉ちゃんなんかやってるの分かってて来てくれたの?」
E「(こくっ)」
そ、そうなのか!?
でももしかしたら、ほんとにそうかも。
なにか、伝えに?送りに?
来たのかもしれない。
子どもたちはいつもよくみている。
現実も、心の中も。
でで。
なんとこの後Dちゃんは
すぐに席を立ち、僕の膝に来た。
しかしAくんは
そのまま隣の椅子に座って楽しそうに話をしていた!
本当に、これでよかったらしい。
よかった、のか??
答えは子どもたちの中にしかない。
子どもたちの心の中がみたい。
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