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【すいとる…】@2歳児のことば

ある日の夕方の保育中。4歳の子が2人、ちょっと高い台(軽くて動かせるもの)に乗ってはしゃいでいた。廊下の大体まんなかくらいで。

これを目にして、2歳の子が何か言いながら2人に近づいていった。
怒っている感じがする。

こういうケースだと、2歳くらいの子が台に乗ってる2人の足を思いっきり押して、台から落ちるということがしばしば起こる。なので大人としては、一瞬で場を見極める必要が出てくるという結構シビアな場面だ。

さて、どうするか。僕は現場から10メートルくらいの距離にいた。現場の傍につくか。それとも動かず見ているか。傍にいくと、この場に僕の存在が認知され、場が崩れることがある。これだと、2歳の子を信じていないということにもなりかねない。

2歳の子は、怒っている感じはするが走って近づいていくわけではない。ゆっくりと近づいている。台に乗っている2人も、2歳の子を認知しているようだ。

腹を括った。これで2人が台から落ちて怪我をしたら、見ていた自分の責任。手当てをして病院へ…。最悪のイメージも一瞬頭をよぎった。
同時にこの子達に対して信じる方にかけてみた。この状況なら大丈夫なはず。保育において試される瞬間は、こんな風にいっぱいある。

そして。

2歳の子は、4歳の2人の足をかるーーーく押した。。。
4歳の子も、身構えていたので楽々耐えた。ひと安心…

すぐさま次の展開に入る。

4歳の子の言葉が聞こえてくる。
「押しちゃだめだよ?」
「落ちたら、頭打って怪我しちゃう」
言い方はソフトな感じ。
言葉で攻めてる、という雰囲気は薄いように感じた。

2人は台から一旦降りた。
2歳の子の言葉は聞こえてこない。

ここでもまた迷う。入るか、入らぬか。
このままでは、一方的に2歳の子だけが「よくないことをした」ということにもなり兼ねない。押すのはよくはないが、あの押し方は、それを理解しての「軽く」だった、のではないだろうか。

入ってみることにした。
さ「そうだね、押したら落ちちゃうね」
言いながら、自分の心が「押すのは良くないよね」に偏っており、2歳の子を少し責める方に傾いているのを感じた。

まずい。こういうときはよく失敗する。
だいたいは、2歳の子に話しかけたら去っていってしまうやつだ。
なんとか心を戻そうとしつつ、で2歳の子に訪ねてみた。

さ「どうして押したんだっけ?」
返事は返ってくるだろうか。
ちなみにこの子は、入園してまだ数ヶ月。

子「・・・おりてほしかった・・・」

返ってきた!
そうだよね。おりてほしかった。でもどうしてだろう?
2歳の子は、この台から3メートルくらい離れたところで一人であそんでいた。もしかしてこの台を「使ってた」のかも?この「使ってた」は、2歳くらいの子にはよくあること。

まっすぐに聞いてみた。
さ「おりてほしかったんだね。どうして降りて欲しかったんだっけ?」

2歳の子は少し黙ってから、答えてくれた。
子「・・・すいとる・・・」

ん??すいとる?吸いとる?聞き間違いかな?
この子の目線は天井の方を向いている。そこには、2歳の子が制作でつくった「スイカ」が吊り下げてあった。ちょっと考えて、九州の言葉だということに気がついた。

そうだ、「すいとる」は「好いとる」だ!
この子の内側にある大事な気持ちだ。
熊本で1年過ごした経験が思わぬところで役に立ってくれた。

さ「好いとる!そっか、スイカ、みんなでつくったんだもんね!」
子「たたいてほしくなかった…」

そういえば4歳の子は2人で台に乗り、紙の棒を持ちながらこの「スイカ」を叩いていた。または、届くかなと試していた!僕は遠くからなんとなくその場を見ていたので、こごまで認識するのに時間がかかった。

さ「そっかー、このスイカ大事やから、叩いて欲しくなかったんだ!」
4歳の子に聞こえるように広げると、聞いていた4歳の子はキョトンとしていた。

なんとなく、この場が終わった感じがした。2歳の子の気持ちが変わった気がした。この理解であっているかは分からないが。


__


僕は、4歳の子の気持ちに寄った状態でこの場に入ってしまった。

あぶなかった。

もうちょっと偏っていたら、この子は「好いとる」という本当の気持ちを言ってはくれなかった。4歳の子も、この子がなぜ怒っていたか分からないまま、「この子は押した子」になるところだった…

こうやって僕はよく、簡単に子どもを潰してしまう。
子どもを悪者にしたてあげ、「大事なものを大事にする」ということを諦めるような子にしてしまうのだ。大袈裟に聞こえるかもしれないが、子どもはこんなことひとつでポキッと折れる。

この場の介入と終わり方、子ども理解についてあっているとは思わない。思えない。果たしてあの時、どうすればよかったのか。こうしていつも、モヤモヤとした気持ちが少し残りつつ、次の保育の場面に出会っていく。


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