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企業が悪質なクレームにいかに対応するか

BtoC企業にとって重要な問題

 企業側としては、お客様である限りなるべく穏便にクレームを処理したいと考えるのが通常だが、現場では従業員の負担が極端に重く、穏便にクレーム処理ができない状況になっています。
 従業員がクレーム処理に困っているのを知りながら放置すると事業主が職場における雇用管理上講ずべき措置について何ら講じなかったとして従業員から責任を追及されることにもなりかねません。
 悪質なクレームを放置すると、従業員の業務のパフォーマンスが低下し、健康不良、さらには休職・退職まで従業員へ影響が生じます。
 また、企業への悪影響として、時間の浪費、他の業務ができなくなるなどの業務上の支障、クレーム対策の人員確保、金銭的損失、ブランドイメージの低下などもあります。来店する他の顧客等への影響もあります。
 企業として、悪質なクレーム対策は避けては通れない道だといえるでしょう。ただ、クレーム対策をしなければならないとしても、悪質ではないクレームまでも過度に対策すると逆効果となり顧客を失いかねません。

カスタマーハラスメント該当性

 そこで何が悪質なクレーム、すなわち従業員に対するカスタマーハラスメントに該当するのかを考える必要があります。 
 顧客が店内で怒鳴り散らしたり暴言を吐いたり暴力を振るったりした場合は、悪質なクレームなのでカスタマーハラスメントに該当する可能性が高く、企業としてカスタマーハラスメントと認定して、厳しく対応すれば良いことは言うまでもありません。
 それではどのような基準でカスタマーハラスメントだと認定していいのか。
 顧客からのクレーム等が、カスタマーハラスメントに該当するかどうかは、業種などによって顧客にどのように対応するかが異なるため、一義的にカスタマーハラスメント該当性を論じることはできません。
 ただ、厚生労働省から「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」が公表されており、これがひとつの指針になると考えられます。
 このマニュアルには、「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容に妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により労働者の就業環境が害されもの」がカスタマーハラスメントに該当すると記載されています。
 つまり、判断基準としては、①顧客等の要求内容に妥当性はあるか、②要求を実現するための手段・態様が社会通念に照らして相当な範囲かによって判断することになります。

①について

 ①は、顧客等のクレームの事実関係、因果関係を確認し、自社に過失がないか、または、根拠のある要求がなされているかを確認し、顧客等の主張が妥当であるかどうか判断します。
 企業側としては、従業員に事実関係を要領よく素直に聞き取る訓練や聴取事項マニュアルを配布すべきでしょう。
 実際に顧客等のクレームが商品の瑕疵であって正当なものであるにもかかわらず、顧客等の見た目や口調などで悪質クレームと判断しないように気を付けなければいけません。
 従業員個々の主観的判断に頼るとお客様サービス自体劣悪なサービスに変容してしまう可能性があるからです。
 したがって、上記のようなマニュアル策定や勉強会も行い、企業と従業員との間で、カスタマーハラスメント対策の共通認識を持つようにすべきです。

②について

 ②は、顧客等の要求内容の妥当性の確認と合わせて、その要求を実現するための手段・態様が社会通念に照らして相当な範囲であるかを確認します。 
 例えば、顧客等の要求が商品の瑕疵であり正当なものであったとしても、長時間に及ぶクレームだと業務に支障が生じるので社会通念上相当性を欠くだろうし、言動が暴力的・威圧的・差別的などである場合も社会通念上不相当であると考えられます。
 ②の要件は、対応した従業員の主観が入り込む余地があるので、企業側としては、従業員に対し、顧客のクレームに対応した時間や言動内容をメモさせ、一定時間経過したら上司に報告させるようなマニュアルを策定する必要があると考えます。

まとめ

 いすれにしても、企業側としては、従業員をカスタマーハラスメントから守る義務があります。
 一旦対策を講じたとしても、それをそのまま放置せず、現場の意見を汲み上げて定期的にマニュアルを改定するなどの作業が必要となります。
 このような作業は企業にとって大変労力が必要となるのでできるだけ人員を割きたくないところでしょう。
 それならば客観的立場の外部の弁護士にマニュアル策定等を依頼すれば良いと考えます。

インテンス法律事務所  HP https://intense.law/

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