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僕と拠り所〜茂庭一葉編⑤可逆転換〜 僕と拠り所〜全適応〜

僕と拠り所〜茂庭一葉編⑤可逆転換〜
僕と拠り所〜全適応〜

鬼神やたくさんの蠢く怪異がミチオに迫る。

ミチオ「あの人は僕の力で…何度もやり直していると言った…確かにスサノオになれば心力付与で時間を戻すことができるだろうが…果たして…出流にその程度の力があるというのか…テンデイズハイの影響?まさか…だって意識を失ってるわけだし…」

そうミチオが考えていると
一匹の怪異が出流の足を掴み闇へと引き摺り込もうとした。


ミチオ「おい。僕の祠に触るな。」

彼の殺気が後方から続く鬼神の足を止めた。

鬼神「まさか…貴様は…」

ミチオ「この人間は其方らが触れていい人ではない…たかが鬼神の分際で…恐れ多い!控えろ!」

ミチオの髪の色が真っ赤に染まり、キリキリと歯軋りをしながら金色の耳と尻尾が生える。

その姿に一斉に怪異たちは腰を抜かしたように闇へと戻りその隙間から無数の目がギロリと目を凝らしている。


茂庭「お前は…」


ミチオ「僕の名前はミチオ…ミチオだよ。そして僕の祠は出流…神力を変えれば未来も変わるかなと思ってさ。ちょっとだけ変わってみた。」

茂庭「僕の友達をこうも簡単に帰らせるとは…君の神力は一体…」

シーっと口元に人差し指を立てて少しだけ微笑んだ。

ミチオ「何度も会っているのなら、力のこと聞けばよかったのに…」

どさりと音を立てて茂庭が座り込んだ。
茂庭「何回も繰り返してるとはいえ、それだけ別の死に方を見てきてるんだよ。2人の…君の力なんて聞く気になんてならないさ…君達は僕にとって所詮、リセットのトリガーとしか考えてなかったからね…」


ミチオ「でも、今日は違った。」

茂庭「あぁ」

ミチオ「君が余計なこと言うから心配しちゃってさ。こっちの姿になった方がいいかと思って。」


茂庭「その力は誰の力なんだい?」

またミチオはシーッと人差し指を口に当てて笑う。

ミチオ「くどいな君は…」

茂庭「正直もう辛かった…こんな過ちを繰り返すたびに自分の居場所がどんどんなくなってきている気がして…だから上と恭子にしがみついていたんだよ…ずっとね…」

ミチオ「その気持ちは少しわかるような気がする。君も辛かっただろう。ほら。こっちにおいで」

その時の言葉はまるで太陽のように温かく安心感がありまるで母親のようだったと茂庭は語っている。

まだ小さな子供を抱き抱えている隣で茂庭はミチオの左腕の中に抱き込まれる。

茂庭「あったかい…」

ミチオ「ハハハ…出流と同じこと言ってる。」

茂庭「うん…」

茂庭はその暖かさに眠気を感じた。

ミチオ「それで、これからはどうするんだい?」



少し沈黙が続く。



茂庭「また、戻るよ…2人を救う方法探さなきゃ…」


ミチオ「本当にそれでいいのかい?」

茂庭「あぁ…2人を助けるまで…ただ…もう少しだけこうしててもいいかな…」


その時グサリと音がして茂庭の頬に温かく伝うものが流れた。


ミチオ「えっ」

茂庭「……これは」


ミチオの右腕に先ほどから抱きしめていた感覚がなくなっていることに気がついた。


歌津「ありゃ?別なやつに当たっちまったか…ゴホ…ゴホ…タハハ…めんどくせぇガキが…」


ミチオ「出流?」

出流の胸に長く梅色の長い刀が刺さっている。まるで2人を護るかのように小さな両腕を大きく開いていた。


茂庭「馬鹿な…神力は消えたはず…」

歌津「間一髪ってところかな?有限な命は正しくつかわねぇとな。」

瀕死の状態で口から血を吐き続けている歌津を見た。
その後に2人は目の前の出流を見て絶望した。


ミチオ「貴様…僕の祠に……出流に……」

歌津「待て待て、お前に手出しはしないさ…落ち着けよ。」


ミチオ「うるさい!黙れーーー!」


ミチオが歌津目掛けて走り出そうとした時、目の前の腕がミチオを静止した。


出流「痛くない!痛くないから!ミチオ!楽しいね!」

出流は瞬時に歌津の目の前へと移動し歌津の首を両腕で握りしめる。

歌津「ガハッ…速い…」

茂庭「これは…一体!」


ミチオ「出流!動いちゃダメだ!」


出流の両腕の中からほつれたたくさんの赤い糸が垂れ流れる。


ミチオ「あれは……」


そう、祠と拠り所にのみ許された力。


出流「頭の中に流れてくるんだ!まるで僕を大きくしたたくさんのお兄ちゃんたちから…ウヒャヒャ…お兄ちゃんたち皆んなミチオといるんだよ!中にはもっと大きなお兄ちゃんたちはみんな泣いてたけどウヒャヒャ!ねぇねぇ!これね。可逆っていうんだって!ミチオのこと操れるらしい!楽しそうでしょ!ねぇ!楽しそうでしょ!」


歌津「くっ、テンデイズハイ…」


出流「ウハハハハハハハハハハハハハハハハ!可逆!心力付与!」

その時、出流の周りに金色のモヤのようなものが現れ、その中からたくさんの出流が出てきた。服装や年齢がバラバラで中には半袖短パンのもの、マフラーをして学生服のもの、さまざまな出流が現れた。

茂庭「僕たちは一体…何を見せられているんだ…」


ミチオ「わからない…可逆からの付与行為なんて…しかも自分に…あくまでも拠り所を操作する力なんだけど…もしかしたらもしかすると…」


出流「そこのお兄ちゃん!早く決めてよ!これからどうするのか!どうしたいのか!」

たくさんの出流が茂庭の方を振り向く。
その中から学生服を着た1人が茂庭の元へ近寄った。


別の出流「茂庭先輩!!戻ろう!」


茂庭はその出流に手を伸ばしまた反対の手でミチオの手のひらを掴んだ。


ミチオ「えっ?僕?」


茂庭「いいんだ…戻ろう!」

茂庭がボロボロと涙を流しながら叫ぶ。

茂庭「次は2人を絶対に死なせない!もう…戻らない!僕は僕のままで!これからを生きたい!甘えかもしれないけど…本当にごめん。次は何があっても…もう君たちは頼らない!戻らないから。ううう…ごめんなさい…ごめんなさい…」


その様子をどの出流が見ていたであろうか…にっこりと笑って彼らは一斉に言葉を唱えた。

出流「さよなら…お兄ちゃん!また会おうね!きっとこれは七夕様の織姫と彦星の願いを叶える力だと思う!この時期にまた会おうね!」





出流「心力付与…青天の霹靂」

歌津「馬鹿な…まさか俺も…やめろおおおおおー」


出流「当たり前だろ?元凶。」

たくさんの出流が歌津を包み当たりが白く何も見えなくなる。


「多分拠り所は神様じゃなんかないんだよ。元々はそうだったかもしれないけどさ。人を媒介して生きるものは………そうそれは」






祟り



その後どれだけの人生をを孤独という時間で過ごしてきただろうか。


幼稚園も小学校も上と恭子がいない…

茂庭はある日2人の少年がそのお父さんと思われる人に手を繋がれそのまま車へ乗り込む姿を見た。
2人の容姿を見てまさかとは思ったが自分が20歳の時に見たような2人だと思いそこでは声をかけられなかった。
その時は僕の闇の中にいる怪異たちが少し震えているような気がした。


この世界線。あの2人のオリジンルートと呼ばれるものは僕が全く持って想像してなかった世界線だった。

八咫「おっ!待たせたなー!おつかれーぃ」

ハンバーガーのファーストフード店で彼を見つけて話しかけようとしたが、彼は僕の顔を見ることはなく僕の後ろの席にいた学生仲間に声をかけていた。

高嶺「ごめん待った?急いだんだけどさ…あっそれでね聞いてよ!今度新作の映画で…ホラーものなんだけどね!」


恭子は僕が知らない2人組の男にどうやら恋をしているようだ。

毎日、2人を見るたびに涙が溢れた。

これで2人は幸せなのだと。


それから程なくして僕にも仲間ができた。

姫花「あ、あの!一葉先輩!」
直人「何だよ!姫花!デレデレしちゃってさ」
周健「バナナ!バナナうめーっす!」
直人「あっ?周健!楽しそーだな!」
姫子「全く落ち着きのない部活動ですこと…」
姫乃「なおたんのバナナくれるの?」
周「イェーイ!筋肉が…筋肉が成長していくぜぃ!」

茂庭「アハハ…君たちはいつも楽しそうだね!護神会で護れてよかった!」


直人「おー一葉!お疲れ〜!」
姫花「ちゃんと先輩を敬いなさい!このクソタレが!」
姫子「姫花様そんなお汚いお言葉はおやめください!」
姫花「一葉先輩!大変申し訳ございません。私どもの不手際で今後気をつけますので…あぎゅ」

周健「なぁーバナナうめーだろ?姫花!」

姫花「あぎゃーーーーーーーーー!」

いつからか、護神会というものに所属し拠り所を保護する名目で皆んなと出会う。

そうまさか時間軸まで入れ替わっているとは…


そんな3人別々の時が流れた今
秒針が重なる時が来た。

新学期の初め、さらさらとした金色の髪を靡かせる者と幸せそうだがどこか薄暗さを持つ2人を見た。

僕はどんな姿にでもなれる怪異のお面を被りあの時の、辛いあの表情を隠すために放課後の彼らの部室へ挨拶がてら顔を出した。


茂庭「モノマネお化けって僕は呼んでるよ!驚かせてごめんね…改めて生徒会長の茂庭だ。宜しくね!」」


そうして僕たちの時間は動き出した。



茂庭「………………」


高嶺恭子「もう…やめようか…………」


八咫「恭子…………恭子…?」


茂庭「………………」

直人「………」

ヒメノ「………」

姫花「………」


姫子「………」

順一「………」

千秋「………」

千鶴「………」

木こり「………………」

ミチオ「………………」


みつき「なんで………………………………」



茂庭「っっっ…アハハハハハ!面白い力だよ!出流!ミチオ!もう怪我は大丈夫かい?」

涙を堪えきれずに2人の方を見る。
すると出流の両手の先に首元を握りしめられた歌津の姿があった。


出流「あっ?誰?えっと…ごめんなさい!」


歌津「ガハッ…何年も俺はずっとこの時を…」


八咫「下(さがら)様!」


茂庭「八咫上…いい加減にしろ…もう…わかってるだろ…」

八咫の腕がブルブルと震え出し無数の刃が地面に落ちる。
八咫「一葉…………」


恭子「やっと気づいたかー2人とも……ん?一葉は別かな…私たちも巻き戻ったんだよ。ねっ…」


出流「えっ?…この人…何?…えっ?俺?殺しちゃうの?」

間一髪のところでみつきの刃物は解離の拠り所が押さえ込んでいた。

解離「何となくそんな気はしてました…これだけのことを短時間に見せられていたのですから…ねぇミチオ君…」

既に治癒が行われた彼の体は金色の髪と尻尾を靡かせ茂庭が出した布のような怪異の上に乗り笑った。
ミチオ「…ハハハハハハハ…全く、僕たちの力は面倒くさいや…ハハハ…まさか…青天の霹靂…その世界の僕は冴えてるよ…全く…」

出流「えっ?ミチオ?この人…どうしたらいいの?手の力が抜けないんだけど…」

歌津「ガハッ…ガキが…離せ…」

出流「だって…すいません…すいません…………んっ?なんか記憶が…………あれ?茂庭先輩?」

ミチオ「説明は後で僕がするから…今はそのままでいい…出流…本当に僕は君を選んで…いや…選ばれたのは僕の方かもしれないけれど…………本当に幸せだよ。」


ミチオは両腕を広げて天高くさまざまな生き物の形に姿を変え登っていく。

ミチオ「怪異、神、怨霊、人間、僕たちの力を教えてあげよう。まぁ知ってるものもいるかとは思うが…この際、確かに狐だけど、もう妖狐とか騙すのは面倒だ。」


出流「ミチオ?」


茂庭「アハハ………またこの世界でも…助けられるなんて…」



ミチオ「僕たちの力は……同じ…全適応。神力、心力共に…スーパーコピーとオールマイティだ!!!」


出流「………」


優しく微笑みながら驚く彼の表情を見つめるミチオの瞳は虹色に輝いていた。

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