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映画『TAR/ター』と音楽療法

映画『TAR/ター』について書くのは2回目ですが、改めて感じたことがありました。

昨年から、色んな整理のために実家に何度も行ってました。その時感じたことと、映画『TAR/ター』の一場面が重なったのです。

この映画は何度もアマプラで見返してますが、最初に見た時から「主人公のターは音楽、特に指揮への情熱はずっと持ち続けてた」という感想は変わってません。

その努力と才能から、リディア・ターはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団における女性初の首席指揮者になるのですが、色々ありまして、その座を失ってしまいます。

失意の中、子供の頃自分が住んでいた家に帰ります。棚にはたくさんのVHSテープ。それを手に取り、当時見ていたテレビ番組の録画ビデオを再生します。かつて憧れ師事していたバーンスタインの映像を見返し、過去を振り返ることで、純粋さを少しづつ取り戻していきます。自らの音楽の原点を見つめ直すのです。

このシーンに特に感動したのです。ここで原点回帰することで、後のアジアの地での仕事の復帰(ゲーム音楽の指揮)に集中出来たのではないかと。

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実家の僕の部屋は今でも住んでいたままの状態になってます。そこには、ターと同じようにVHSやカセットテープが山積みになってます。イメージとしてはこんな感じ。

(ほんの一部です)

遠い過去への郷愁を感じたくて、カセットテープを久し振りに再生してみました。

こちらもほんの一部

戻りたいとかやり直したいとか思わないけど、確実に自分の基礎を築いた世界がありました。音楽そのものや、それを聴いてた時の空気、感情が蘇って来ました。

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まさか、ターと自分を同列にはしないけど、ターが過去を見つめ直し未来へ向かう中で、バーンスタインのテレビ番組を見たのは重要なプロセス、区切りだったような気がします。

また、バーンスタインはその番組の中で「音楽は、人々に喜びを与えるために存在する」
「大事なのは音楽が語りかけてくれること、音楽が抱かせてくれる感情である。その感情には言葉にはできないものもある」
と語っています。涙を流しながら見つめるター。凄く印象的なシーンであり、比較的分かりにくいこの映画の中で、ストレートにターの感情の動きを説明しています。音楽の道を目指すために何が重要なのか。音楽がもたらす感動とは何なのか。ビデオを見ながら、バーンスタインに影響を受けて指揮者を目指そうとした初心を思い出したのかもしれません。

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僕は2月に60歳となり、50代最後の一年は大きな変化が幾つもありました。また、その多くは深い喪失感を伴うものでした。過去へのタイムトリップに使ったカセットテープの音は、原点を思い出すと同時に大きな癒しの効果がありました。音楽のヒーリング効果、『音楽療法』という視点から映画『ター』に新たな共感を得ることが出来ました。

この記事も同じような思いで書いたものです。

映画『TAR/ター』についての最初の投稿はこちら。

my note #66

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