見出し画像

【印象派と分離派】

日本人に良く知られているのは、フランスで起こった印象派の画家たちとその作品です。印象派の画家として有名な人物を何人か紹介します。
①モネ   (1840〜1926)
②ルノワール(1841〜1919)
③シスレー (1839〜1899)
④マネ   (1832〜1883)
⑤セザンヌ (1839〜1906)
⑥ドガ   (1834〜1917)

印象派の名称は、1874年4月に開催された第一回印象派展に出展されたモネの絵『印象・日の出』によるとされます。

日本人はフランスの印象派の画家の絵が好きですね。僕も絵が好きで良く美術館に行くのですが、印象派の画家の作品を所蔵している美術館は多いですね。印象派画家の作品を多数所蔵していることで有名な美術館は下記の通りです。
①国立西洋美術館(東京都)
②ポーラ美術館(神奈川県)
③大原美術館(岡山県)

自分は印象派の画家が好きです。けれど、紹介したいと考えているのは同時代にドイツ語圏で起こった別の絵画の潮流についてです。

ウィーン分離派(セセッション)について説明します。

ウィーン分離派は、1897年にウィーンで画家グスタフ・クリムトを中心に結成された新進芸術家のグループです。
19世紀の歴史絵画や伝統芸術からの「分離」を目指した文化活動です。

今でこそドイツと言えばベルリンが都と考えられていますが、本来の中心はウィーンでした。
ウィーンは神聖ローマ帝国の都として約700年あまりに渡り、ドイツ語圏の文化の中心だったのです。ハプスブルク家が永く統治していました。作曲家のモーツァルトやベートーベンが活躍した舞台もウィーンだったのです。

19世紀末頃のウィーンでは大規模な都市改造が行われていました。古い城壁を取り壊し、道路を拡張し、さまざまな近代的な建物が建てられました。ウィーン万国博覧会(1873年5〜10月)に向け、国家の威信をかけて都市改造が進められたのです。都市改造に伴って、新しい芸術志向の建築物が建てられ、同時に新しい絵画も多く描かれました。そうした時代背景の中でグスタフ・クリムトは多くの作品を描きました。

ウィーン万国博覧会(1873)に先立って、1867年4〜10月にかけてフランスでパリ万博博覧会が開催されています。日本も派遣団を送って参加しました。江戸幕府、薩摩藩、佐賀藩がそれぞれ出展しました。
ちょうど江戸幕府が瓦解した年ですね。最後の将軍徳川慶喜が明治天皇に大政奉還を奏上して勅許を得たのが1867年の11月15日ですから、まさに幕府崩壊の直前のことです。

「ジャポニズム」をご存知でしょうか?19世紀後半にヨーロッパで流行した日本趣味のことを言います。そもそもの始まりは、このパリ万博博覧会(1867)に出品された日本の美術品を見てヨーロッパの人たちが日本文化に関心を持ったことがきっかけとなっています。

ドイツ語圏は、産業革命にいち早く成功したイギリスやフランスと比較して近代化が遅れていました。ウィーン万国博覧会は後進のドイツ語圏が威信をかけて臨んだ博覧会だったのです。

ウィーン分離派の画家を紹介します。
①グスタフ・クリムト(1862〜1918)
②エゴン・シーレ(1890〜1918)
僕が特に紹介したいのが、②のエゴン・シーレです。クリムトらの分離派の影響を受けて、のちに「表現主義」の影響による個性的な絵画を描きました。

「表現主義」について説明します。
「表現主義」とは、様々な芸術分野において感情を作品中に反映させて表現する傾向のことを指します。20世紀初頭にドイツで生まれた芸術活動である「ドイツ表現主義」が特に有名です。

「感情を作品中に反映させる」のが表現主義の特徴です。感情の中でも特に「不安」を作品に投影したものが多いです。「不安」とはつまりネガティブな感情のことです。言葉で説明してもなかなか分かりにくいですね。作品を紹介します。

有名なエドヴァルド・ムンク(1863〜1944)も表現主義に属する画家です。ムンクの作品である「叫び」は有名ですね。

「不安」を作品に投影したものを表現主義と呼ぶとすれば、小説家カフカの「変身」も広い意味で「表現主義」に属する作品と呼べるかもしれません。

ドイツ表現主義は、パントマイムやチャップリンのサイレント映画にその影響を見ることが出来ます。しかし、ドイツ表現主義は消えてしまったのです。最盛期は20世紀の初頭でした。その後、ドイツはヒトラーによる軍事独裁政権の下で他国を侵略し、多くのユダヤ人を殺しました。第二次世界大戦後、敗戦国のドイツでは文化的な活動が衰退しました。アメリカとソヴィエトが対立する冷戦も長く続きましたから、ドイツが健全な文化活動ができるようになったのは「ベルリンの壁崩壊」以降のことです。その間に「ドイツ表現主義」は遠い昔の記憶として埋もれでしまったのです。

「平和」や「愛」というポジティブなメッセージの表現は素晴らしいと思います。けれど、僕は「不安」や「悲しみ」、「挫折感」などのネガティブな感情を表現することも大切なことだと考えています。ネガティブな感情を表現することは、「哲学的」であり、「リアリズム」があり、現在のコロナ禍のように社会が不安を抱える時代には必要だと考えてます。

ネガティブな感情を持つことは決して不健全なことではありません。逆に「不安」や「悲しみ」を他の人に見せないように背伸びをしたり、痩せ我慢をすることは強さではなく美徳でもありません。ネガティブな感情を隠さず表現することは、本当の意味での「強さ」がなければできません。ネガティブな感情を受け入れた本当の意味での「強さ」を僕らは身につけていかなければなりません。「表現主義」を学ぶことは「人間の強さ」とは何かということを考えさせられます。

よろしければサポートをお願いします。🐥より良い作品作りのための励みにさせていただきます❗️