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ルールが組織を衰退させていくとき、経営者はどう動くべきか

ビジネスの現場で、しばしばこういうやり取りがある。

コンサル「ここはこうした方が成果でますよ。」

社員「ですよねー。それは私達もわかっているんですが、やっちゃいけないことになってまして、できないんです。」

コンサル「それはなぜですか?」

社員「なぜかはわからないんですが、ルールなんです。」

コンサル「それは非合理的ですよね?」

社員「非合理的ですよね。でもルールなので。」

コンサルという仕事は、クライアント企業の持つアセットや市場環境といった、変えられない所与の条件の下で最大限の成果を出すことを求められるので「できないことがあること」自体は慣れっこではある。

だれの得にもならないルール

だけど、できないことを自ら増やしている組織を見ると「もったいないな」と思う。

このような状況に陥る原因は "ルーティンの硬直性 とか、"現状維持バイアス"、"規範の内面化" などといわれ、統制や規制が行き過ぎることのリスクとして認識されている。

とはいえクライアント企業のルールであるから、外部の人間であるコンサルが、それをどうこうするのは簡単ではない。特に難しいのは、ルールを作った世代がすでに引退しており、どのような経緯で、何のためにそのルールができあがったのかだれも知らないケースだ。このような出どころのわからない暗黙知は、経営トップですら変えるのが難しいだろう。

教科書的には、企業が認知を広げることでルール自体を客観視し、漸進的に変え続けていくことが求められるが、制度を短期間で大きく変えなければならないようなタイミングでは現状維持バイアスも相まって命取りになりかねない。

わかった上でルールをスルーする

そんな時、「わかった上でルールをスルーする」という方法がある。これは万人におすすめできる方法ではないが有効である。

ルールというのは、あとからできる。最初に何か新しいことをやった奴がいて、それが「いいじゃんこれ」となって制度化されていくものだ。いきなり湧いてくるようなものではない。

なのでそれが非合理だとなった場合、既存のルールを変更するよりも、逸脱して新しいやり方を試してしまった方が早いことがある。それが本当に結果が出て再現性があるのならば、あとからそれが新しいルールになるのだ。

"万人におすすめできることではない" と書いたが、その理由は "言うほど簡単ではない" からだ。まず、ちゃんと結果を出さないといけない。先人の知恵よりも、自分たちのイノベーションが最適解であることを結果で示さないと成立しない。結果が出せる実力が求められる。

そしてふたつめに、これは結果が出るまでは (場合によっては結果が出たとしても) 、逸脱行為であるからだ。逸脱行為には、合理性だけでなく高いモラルと摘発されないための立ち回り、そして運が必要だ。

実力があり、かつこんなリスクを負ってまでルールを変えようと思うのは、長期的な会社の発展を願う愛社精神に富んだ一握りの人材だけだろう。

ルールが会社を衰退させていくとき、経営者はどう動くべきか

リスクを負って、現状のルールを逸脱してでも、10年後、100年後の会社のことを考えて新しいルールを生み出そうとする、実力と愛社精神に富んだ、常識に囚われないリーダーを育てるしかない。

ルールは好ましい結果から作られる。既存のルールを現状に合わせて無理に曲げても、それでできたものはルールではなく "ただの曲がったもの" だ。


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