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ホラーが好き

私は、ものすごく怖がりで、ちょっと自分でも引くくらい、妄想癖が強い。

昨夜も寝ている部屋のすぐ下で物音がしたのでびびって起きてしまい、これはきっと我が家に賊が侵入したに違いないと半分寝ぼけて掃除用のモップ片手に家を巡回したところ、寝る間にまわした食洗機が最後の仕上げ(乾燥)に入ったブーーンという機械音だったという。

ほんのちょっとした物音に怯え、即、ジェイソン的ななにか、を妄想のなかで生み出してしまうビビりなので、当然、ホラーは苦手と思われがちなのだが、実は、怖い話は大好きなのだ。

もっと言うと、ホラー色の強いミステリ、それも閉ざされた学園とか、古い風習の残る村、なんかが舞台だと最高だ。
スプラッタホラーは少し苦手だけど、お話が面白ければもちろん読む。

ホラーというカテゴリに勝手に入れてしまうけれど、恩田陸の理瀬シリーズ、とりわけ「麦の海に沈む果実」や、綾辻行人「緋色の囁き」っぽいものが一番ささる。
美少女、謎めいていて閉ざされた学園、連続殺人・・・。
こういうモチーフにとにかく弱い。
アニメの「ひぐらしのなく頃に」も大好きだ。

角川ホラー文庫の、つやつやした黒い背表紙を見ながら、次はどれを買おうか思案している時間は至福。

小林泰三「玩具修理者」、貴志祐介「クリムゾンの迷宮」といった名作も、もちろん大好きなのだけど、ホラー小説の面白さに引き入れてくれたのはなんと言っても恒川光太郎の作品だ。
「夜市」を読んで驚愕し、「秋の牢獄」で泣き、「無貌の神」に震えた。
分かりやすい怖さではなくて、幻想的で、ゆったりしていて、一見、おとぎ話のようにすーっと世界観に入ってゆけるのに、いったん、入ってしまったら出られなくなるような怖さがあって、とても好き。
私は幼いとき、「となりのトトロ」がけっこう怖かったのだが(サツキが異世界にお嫁入りしてしまうんじゃないかと思ったのだ)そういう類いの、ファンタジーの恐ろしい面を、ものすごいテクニックで読ませてくれる作家だなあ、といつも拝むような気持ちで新作を待っている。

恒川作品には、どこかに「閉じ込められた」人がよく登場する。
家だったり、夜市だったり、あやしげな宗教団体、ある特定の一日。

自らすすんで閉じこもっているようにも見える彼らの様子を読者は外から面白半分にこわごわ見ていただけの筈が、気がつけば、自分と入れ違いにまんまと登場人物は外に出て行ってしまって、読者だけがその場にとりのこされている・・・そんな感じののほほんとした不思議な恐怖感、木漏れ日のような恐怖感を感じるのだ。

そう、恒川作品はじめ、お気に入りのホラー小説を読んでいると、なぜだか心が不思議なほど落ち着く。

ホラーの世界は、純粋を極め尽くした世界だとおもう。
現実の世界は、混沌とし過ぎていて、価値観もばらばら過ぎて、私には少し生きにくい。
ホラーの世界の住民は、皆、自分の確固たる信念でその生を或いは死を全うしようとする。
映画「キャリー」のキャリー・ホワイト。「ミザリー」のアニー・ウィルクス。
もちろん恒川作品の登場人物たちも。

みんな、自分の中にある信念を曲げない。
あり得ない場所から急に出てきて獲物を狙ったり、許せない人間を閉じ込めて殺し尽くすほど超能力を目覚めさせたり。
それは、美しい在り方だなって思う。
「みんな」のなかで何となくうまくやって、生きていって、じわじわ自分でも気付かないまま悪気もなく誰かを、何となく傷つける。
そんな在り方よりはずっと。

多分、暴力や狂気は信念をもってふるわれるべきなのだ。
それもきわめて個人的な、美しい理由で。
誰も、自分を守ってなどくれないのだから、自分自身が化け物になってでも大事なものを守らないといけない。

純粋に、純粋に、純粋に。

私も、しっかりと地に足をつけないで、純粋に大好きなものを守っていく。
狂ったように。

人に後ろ指を指されようが、ずっと自分だけのお城で暮らすことができなければ、結局のところ何も守れないんじゃないか、と最近、よく思っている。

•ө•)♡ありがとうございます٩(♡ε♡ )۶