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絵教材の種類・使い方

検索すれば、様々な文型のイラストが並ぶ時代。
でも、こんなにあるのになんだかいまいち使えない・・・
今回は日本語を教えるときに使うイラストについて考えてみたいと思います。

1.物のイラスト

この手の絵は日本語教育じゃないところでも使われるのでたくさんあります。語彙の意味を確認したり、覚えたり。レアリアの代わりにカードにしてやりとりで使ったりします。言葉では説明しにくいけど、見ればわかるものなどには便利ですが、文字や翻訳でも事足りるので、絵がなくてもいい場合もあります。

2.描写のイラスト

「子どもはお父さんに花をあげます」というようなイラスト。日本語を教えるといえば、この手のイラストが多いです。例文を作るとき、イメージを喚起するために必要です。正しい文は作れるようになりますが、
「だから、何?!」
この文を発するシチュエーションは各自おまかせになりがちで、こういう絵で単文作りばかりをして学習を進めた人は「習った文型をいつ使うかわからない」ということになりがちです。

3.使用場面のイラスト

これだとどうでしょう。子どもが父の日のプレゼントについて話しています。教室内で去年は何をあげたか、今年は何を上げるか、話し合っている場面のイメージの共有ができます。

これをイラストがない場合、「〇月〇日は何の日ですか。父の日ですね。皆さんの国に父の日はありますか。父の日に何をあげますか・・・」とイメージを膨らませる時間が必要になります。それはそれで必要ですが、毎日だと大変ですし、まどろっこしい思いをしなければなりません。だから、まわりくどい場面設定の説明をせずにすむイラストが欲しい!

イラストが描ける方は、1や2の絵ではなく、3の絵を描いてほしいなぁと思います。

また、これは場面の切り取りですが、この場面のことじゃなければ話せないかというとそうではありません。自分が実際に話している場面をイメージしながら話すという経験で、まったく違う場面でもその文型を使って話すことができるようになります。その場面で話したくなるだろうことを予想してそこで必要な表現を用意された中で話すのではなく、今日習得する表現以外は今まで積み上げてきたものを総動員して話す、という訓練も兼ねるからです。ですから、きっかけは「父の日」かもしれませんが、白い花を渡す習慣があるのか、何月に何の日があるのかなど、話が広がるしかけがイラスト中にあるといいなと思います。

練習するときは、3と1の絵を組み合わせて、「〇〇をあげます」の文づくりをしたりしますが、あえて学生が思いつきそうな絵は出さないでおく、というのもコツの一つです。学生は教師に掲示されたものよりオリジナルのものを言えたほうが嬉しいものです。ですから、「タバコをあげます」とか「ビールをあげます」とか言えそうなクラスだったら、その絵は掲示しないとか、「家をあげます」というような冗談がでそうだったら、教師側から言わないほうが楽しくなります。反対に、既習の単語で忘れていそうなものを出しておけば自然と復習になります。

その他、1・2・3を組み合わせるなら、2の絵をカーネーションをあげている絵にしたり、チョコレートの絵なども用意しておけば、学生が「もうすぐバレンタインですね~」というふうに自主的にアレンジしてくれます。話が広がっていきますから、詳しい教案も必要なくなります。

最後に、これらの絵はスライドで準備される方が多いのでしょうが、私は準備した絵をiPhoneで写真に撮って、教室のテレビにそのまま映します。パソコンの操作に気を取られなくていいし、アダプタがあれば設備がテレビしかないところでも使えます。

また、1のような絵はカードにして、実際に渡しあえるようにするとか、2の絵は紙にしてホワイトボードに全部いっぺんにはって、それぞれの文をノートに書かせるとか媒体を何にするかはその時々によって変えます。ディスプレイにしたり紙にしたりと、物が変われば90分の活動の中に変化を出すための手段にもなるので、アナログ・デジタルにこだわらずいろんなものを活用すればいいと思っています。

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