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『みんなの日本語』で教えるなら(4)

(4)では、インタビューシートを使って行う応用練習について書きます。下のようなインタビューシートに聞いた内容を書きこみながら、学生同士で質問しあう活動です。

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『みんなの日本語』で教えるなら(2)で、19課の「~たことがあります」を使ったので、その流れで説明してみます。インタビューシートは上記の表のようなものですが、私は学生のレベルや状況によって、何を書き込んでおくかを変えます。例えば、一番左の質問しあう内容については

1.空欄にしておいて、各自自分が聞きたいことのキーワードを書きこみ、質問しあう。

2.教科書では練習しなかった「さくら」などのキーワードだけを書きこんでおき、「桜を見たことがありますか」などと質問しあう。

3.教科書で練習した「ふじさん」などのキーワードだけを書きこんでおき、「富士山に登ったことがありますか」などと質問し合う。

4.「フォーを食べたことがありますか」と全文書いておき、その通り質問し合う。

などのパターンがあります。文字に頼らずに会話をしてほしいので、質問文を全文書くのは、よくないのですが、クラス内にレベル差があった場合、スムーズに活動が進むように、苦肉の策でまだあまり話せない学生のインタビューシートにだけ全文書きこんでおいたりします。また、キーワードだけにしておくことで、「海へ行ったことがありますか」「海で泳いだことがありますか」「〇〇の海を見たことがありますか」など、幅を広げられるようにもしています。

一番上の名前の欄も、クラス全員、もしくは時間が許すかぎりの活動であれば空欄にして、自分で名前を書き込ませるようにしますが、全員は聞けないぐらいの時間だと同じ国の友達ばかりに質問して母語でインタビューするという無意味なことになってしまいそうな時は、あらかじめ名前を書きこんでおき、誰にインタビューするか指定することもあります。わざと、あまり話しているのを見かけたことがない人同士が必ず話すように仕組んで、友達になるきっかけづくりのようなことに使うときもあります。

注意点としては、インタビューシートを相手に見せて、〇か×かの結果だけ書こうとする人がいたり、相手が言うのを聞くのがまどろっこしくて、取り上げて書き込んだりする人がいたりするので、よく見ておいたほうがいいです。それから、みんな同じ質問だと何を聞かれるかがわかっていることになるので、3パターンぐらいインタビューシートを作っておく時もあります。

最後に、ここがコツなのですが、インタビューしっぱなしではなく、インタビューをもとに、レポートを提出させるようにします。例えば、このぐらいのレベルなら「〇〇さんと△△さんは、海で泳いだことがあります。・・さんと++さんは海で泳いだことがありません。私も海で泳いだことがありません。泳ぎたいです」など。時間との調整で長さや難易度を指定して書かせます。何度もやって、課がすすんでいくと、学生自身がおもしろいレポートを書きたくて質問を工夫したり、詳しく聞くようになったりします。(海で泳いだことはないけど、船に乗ったとか、海でおぼれたことがあるとかを聞き出す学生がいて、インタビュー上手な学生に感心することもあります。そこで出てくる未習語は隠さず教えます)

初級の初めから、話したいことを話す雰囲気を作っておくと、話させようとしむけなくてよくなり、教える側がだんだん楽になります。また、提出されたレポートで得た情報を、他の文法を教えるときの例文に使ったりして、「え?先生それ、なんで知ってるの?」となりますが、基本的に自分から話したことなので、プライバシーの心配をしすぎずにすみます。

教室活動に使うプリントは、学校から用意がある場合もありますが、目の前の学生にあわせられるので、私は自分で作るほうが好きです。同じ文を10回唱えるのと、同じ質問を10人にするのは口に出して言うという動作としては実は同じです。でもそこから広がるコミュニケーションの輪は全然違います。せっかく、同じ教室で勉強しているのですから、一人で唱えているのとは違う効果を生み出したいと思っています。

まとめ 

・他の教科書の活動などにも登場するインタビューシート。学生に合わせて工夫を。

・レポート提出や友達作りなどにも結びつけられる。

*このnote内リンク*

『みんなの日本語』で教えるなら(1)言いたい気持ちでいう

『みんなの日本語』で教えるなら(2)授業の流れ

『みんなの日本語』で教えるなら(3)ドリル

『みんなの日本語』で教えるなら(4)インタビューシート

『みんなの日本語』で教えるなら(5)絵の描き方