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触れられない時代に、触れたい肌 ばったん個展「Munich」

6/5 原宿
ここ数年で出会った推しマンガ家である、ばったんさんの個展に足を運びました。
もう最高すぎて、思い出すと未だにこころがふわふわするので文字に残しておきたいと思います。

表参道なんていつぶりだろう。少なくとも昨年からのアレで少なくとも2年近く来ていなかった。それでなくても年々この街での用事が減っていたことを思うと、自分がそれなりに年を取ったんだなと感じてしまう。
梅雨空の厚い雲にじっとりとした湿度。原宿に降り立つ前にもこもこと質量を増やしていた髪を切り、いつものように両サイドと襟足を刈り上げてもらったのは、万が一にでもご本人が在廊していた時に、恥ずかしくないようにという理由もなくはなかった。

そういえば原宿駅の新しい駅舎に降りるのは初めてだった。来るたびに様変わりする街並みを通り抜け、ラフォーレのある交差点にほど近い路地にある個展の会場、ギャラリールモンドへ到着した。


路地から階段を上がるとマンションの一室のような、小さなギャラリーが現れた。

 

ばったん個展「Munich」

今回の展示は作者であるばったんさんが以前暮らしていたドイツのミュンヘンを舞台にした作品を集めたものです。

ご本人が在廊されていたので一気に緊張が走る。差し入れの手土産を持ってきてよかった。差し入れを準備しがちなタイプのオタクなのでいらっしゃらないとしても買ってしまうのだけど。
緊張するので、いらっしゃることを極力脳内の奥に一旦置き、会場に飾られた作品一枚一枚をじっくり拝見。

溜息がでる。

原画展の何が良いかって、作者のペンや筆の動きが色濃く感じられるところなんですよね。

描いている対象毎に主線の色が違うとか、直線があえてフリーハンドで引かれているところに感じる素朴な温かさとか。

女の子の肌の柔らかさとか、零れる髪の一本一本の愛おしさとか。
髪が房になっているところと、ほろりと解けて1本の線になるところがくすぐられる。かわいい。

ばったんさんが描がく女の子はみんな柔らかそうで、いい香りがしそうで好きです。

いつも繊細な描き方でそこが愛らしくて、まるでそこにいるような温度感があって。いきいきしている。

この作品なんて、チラッとする黒子がもーーーーーーー!!!!!
このキャラクターである、その人であるってことをたった2つの点を並べるだけで表現されてて堪らなくなった。黒子って最小単位の、個人情報なんだって思ったよ。

掲載されている図録をこれから通販される方もいるので、写真はこれくらいにします。
ですが、ですが!!!感想はもう少し書かせてください!!!
全編通して描かれる彼女の眼差しに潜む、澄んだ憂いのようなものがなんとも美しいんです。
ミュンヘンに僕は住んだことも無ければ実際に見た事もないけれど、その街並みには確かにそこに暮らす人を感じるというか。
だから、街と彼女がちゃんと息をしているように感じるんです。まるでショートフィルムを見ているような、実在のものとして。
素敵だった。素敵でしかなかった!

これはマンガの時もそうなんです。キャラクターが感じている「普通」がそのまま生きているように描かれていて。
特に僕がそれを感じるのは、ばったん作品に登場する恋愛は、どの性愛も年齢や立場問わず「普通」に描かれているところ。
男女の恋愛だけが「普通」ではなくて、かと言って他の性愛の方が美しいわけではなくて。
どの性愛も、恋も友愛も等しく尊くて「普通」なんだと読んでいて感じるところが、ファンになっていった理由のひとつかもしれない。
そういえば会場にいた方が、ある作品に登場する小さな女の子の将来について質問していて、男女の恋愛を「普通」と言っていたので、「違うよー!男女以外も普通なんだよー!」と思うなどした(僕って面倒くさい人ね)
作品の受け取り方は人の数だけあります。

展示は一周では足りなくて2周した。もっと見ていたい気さえしていた。

 

図録と一緒に、「かけおちガール」のチラシが無配されていたので貰ってきました。飾る用と、保管用で2枚。あとでフレーム買いに行こう。

僕はかけおちガールでばったんさんの作品に出会った。
学生時代に付き合っていたのに、卒業と共に別れてしまった女性ふたりが再会して思いを寄せるお話で。僕と彼女も学生時代付き合って別れてを繰り返して今に至るので、めちゃくちゃ感情移入してしまいまして……。ジャンルは百合マンガなんですが、百合ではすまない。これはそれだけではすまない(急な激情)

そんなWebで連載されていた作品が、待望の単行本になります。とても楽しみ。

 

もしもご本人が在廊されていたら……と思って、思い切ってサインを貰う用に以前購入した同人誌を持っていった。

こちらは既に単行本化されている「姉の友人」の冒頭に収録されているおはなしの同人誌版。

サインをもらえることになって、こちらを手渡したら「また古い同人誌を!」なんて驚かれてた笑
すいません、お気に入りなんです!

表紙にも登場する今日子さんを描いてくださった……美しいなぁ……
宝物が増えました。

  

ばったんさん、今月はもう一つ展示会が行われるそうです。こちらは合同展。

2年前に開催されたmoinmoin展の第二弾です。
第一弾も素晴らしかったので、きっと今回も素敵な展示会になると思います。
第一弾の感想はこちらから。

僕もまた見に行こうと思います!
お時間ある方はぜひぜひ。

 

 


※「姉の友人」「かけおちガール」の感想も貼っておきます。気になってる方よかったら。


 

 

 

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