退去通知からのウルトラC
ノルウェーは家主が強い。
日本の賃貸は借主優位ですが、ノルウェーの賃貸事情はずいぶん違います。
今回は私たち借主の弱さを実体験したお話と、意外な結末についてのお話です。
契約半ばで退去通知
私たちが賃貸で住み始めたお家の話を以前note しましたが、住んでいるうちに愛着がわき、少なくとも契約の2年間は住み続ける予定でした。
ですが、5月ごろから不穏な話が出始めたのです。
どうやら大家が家を売ろうとしている、と。
契約中は売る予定なしと言ってたはずが、自営業のオーナーがビジネスの為に売却せざるを得なくなった様子。利上げが続くマーケットの中、やむなく売却先を見つけて売り抜きたい事情だったようです。
ノルウェーのスタンダードでは、契約中途であっても数ヶ月前に通知を出せば大家都合で契約解除ができてしまいます。
7月末に正式に通知が来てしまい、そうなるともう従うしかありません。
実際、私の周りでも同じような状況になった知人が後を断ちません。家が売却されたとか、大家さん家族の気が変わって本人達が住むことになったとか、理由は様々ですが契約途中で追い出されることは本当によくあるようです。
素敵物件を見つけたけれども
通知の3ヶ月後に退去せざるを得なくなった私たち。
賃貸案件が数多く出るのは春から夏なので、かなり悪いタイミング。
ノルウェーの不動産マーケットは国民的売買プラットホームアプリFinn.no にほぼ全て出てきます。毎日のようにチェックしても、出てくる物件は少しだけ。動かしようのない期日があるので、焦りが募ります。
私たちの優先事項は、学校から近いことと、息子達のサッカークラブ圏内であること。絞った条件の中で内覧を重ねるなか、ある日出てきたのが想定以上に素敵な北欧的センス溢れる新築物件。
嫌だった引っ越しも、この家ならポジティブ気分に変われそう。
大家さんは当初、売却・賃貸の両方で募集をかけていたので「私たちが賃貸してる間は売却しないでほしい」と念の為に口約束を。
本契約に進み始めたのは、引っ越し期限が2週間後に迫った頃でした。
サインした書類を夫が届けようとしたところ、大家さんから「折り入って話がある」との連絡。
嫌な予感がするなか、大家さんがやって来ました。
「新築物件を買いたいという申し出が突然来てしまった。実際のところ賃貸にすると赤字になるし、今のタイミングをできれば逃したくない。賃貸の話はなかったことにできないだろうか」と申し訳なさそうに伝えるのでした。
予感的中。またしても、契約キャンセル案件です。今回はギリギリ契約成立前でしたが。
大家さんによるウルトラC
退去期限まであと2週間。どうする私たち？
私たちの事情を知っている新築物件の大家さん。不動産関連の事業をしている彼なりに対策を練ってくれていました。
話し合いの中、大家さんからひとつの提案が出てきました。
「学校近隣の不動産事情を自分はよく知っているし、現在売り出し物件でひとつ目ぼしいものがある。それであれば自分が購入してあなた達に賃貸することができる。」と。
さらに、「物件の購入希望提出が今日の深夜までなので、本日中に決めてほしい」と。
本日中とはいえ、実際は数時間。そんな重要な決定を急がせるなんて新手の詐欺なのでは、なんてことまで頭をよぎります。すでに暗くなり始めた時間でしたが、そのまま急いで物件の内見に行きました。
古い物件で、住めないことはなさそうだけど、、という第一印象。
古くて修理が必要な箇所は大家さんがリノベーションを約束してくれます。彼が持ってるデザイナー家具を貸してくれるというし、家賃はエリアの割に低めにしてくれる、と。
さあ、どうする、私たち？
逡巡の結果、大家さんの提案を呑むことにしました。何しろ期限まで日がないので、大家さんの誠意を信じることに。新築物件で問い合わせた際の態度や、代替案を持ってた時の様子から、大家さんがいい人であることはわかったし、物件が私たちの優先順位を満たしていたから。
引っ越し日は、以前の家に引っ越した日からちょうどぴったり1年後の日付でした。
移動距離1キロ以内のご近所引っ越しでしたが、心身かなりのエネルギーを消耗しました。あれから約1ヶ月がたち、前の家がよかったところ、今の家のよいところ、不満なところ、いろいろな思いを今も感じているところですが、ひとつだけ言えること。
「しばらく引っ越しは懲り懲り」
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