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『ビール王国』に学ぶ、文章の「つかみ」の書き方
「こんな暑いなか、原稿書きなんてもういいでしょ。
キンキンに冷えたビールをグイッと飲みたいわ~」
とビールの雑誌を見ていたら、マネしたくなる「つかみ」の宝庫で、
最後まで読み込んでしまいました。
まずはこちら。
飲む者を一瞬で魅了する、グラスから溢れるようなホップの香りと強烈な苦味が魅力のウェストコーストIPA「スターウォッチャー」をはじめ、インパクトと味わい深さを見事にバランスさせるクリエイティブなビール造りが、多くのビアファンを虜にしているWCB。
く~っ、今すぐにそのビールを飲みたい。
短い文章で、IPAの味わいとブルワリーの特徴が一発で伝わってくるつかみですね。
続いて、こちら。
えっ、香りは? 苦味は?
「プランク・ヘレス」をひと口飲んで、しばしフリーズしてしまったと笑う吉田さん。
「これまでにご用意いただいたビールはいずれも、モルトやホップ由来の風味以外に、花やフルーツ、焼き菓子といった様々なニュアンスを感じとることができたものですから、今回もそのつもりでテイスティングに臨んだのです。ドルチェづくりの発想につながるヒントを得ようと―――。それがいつもと勝手が異なり、『あれ? 探し物がないぞ』と固まってしまいました(笑)。それにしても、このよ うな『繊細な麦の風味』を存分に楽しむことができるビールもとても魅力的ですね」
吉田さんのメモには、こう書かれてあった。
「優しいパンの香りがし、口に含むととても泡が細やかでスムース。苦味は驚くほど少なく、甘い余韻でフィニッシュする。今までに飲んだ経験のないビール」
「えっ、香りは? 苦味は?」という1行目だけで、一体どんなビールなのか、と引き込まれてしまいますね。吉田さんの驚きを短文で切り取ることで、読み手をひきつけるつかみになっています。
こちらは別のブルワリーを紹介した記事。
ぎゅっ。頭に手拭いを巻くと、表情に気合が入った。慣れた身のこなしで仕込みタンクの中に体を滑り込ませる。
CIP(設備内部を洗浄剤などで自動的に洗浄するシステム)も活用するが、「それだけでは不十分な可能性がある」との前提に立つ。
目視し、指先で触れ、一切の汚れを見落とさず、内部をとことん磨き抜く。
こちらはブルワーの方にスポットを当てているつかみ。「ぎゅっ」というオノマトペが効果的で、仕事人の表情に変わるブルワーさんが目に浮かびます。そこから実直な醸造家であることが伝わってきて、どんなビールを作っているのか興味をひかれますね。
以下のパブの紹介記事もご覧ください。
「日本をめぐる 旅するビアバル」
なんて素敵なコンセプトを考え付いたのだろう。「ヨルの部」は、日本全国のクラフトビール (常時7タップ)とご当地グルメ(月に1県ずつを特集)を堪能させてくれる魅力店。つまり、3年と11カ月、毎月通い続けると47都道府県全てを回れることになる(ちなみに沖縄・北海道・京都・青森・埼玉・高知・岐阜・和歌山は特集済、 7月は宮崎、8月は愛知の予定)。
「日本をめぐる 旅するビアバル」というコンセプトを、冒頭にストレートに持ってくるだけでもキャッチーですが、ポイントは続きの文章。「なんて素敵なコンセプトを考え付いたのだろう。」の一文で、さらにつかみのインパクトが増しています。
もうひとつ、別のブルワリーを紹介した記事。
「醸造所の煙突の影が落ちる範囲で飲め」
ビールの本場ドイツに伝わる格言だ。
これは、「フレッシュなビールを最高のコンディションで楽しみたいなら、醸造所の近場が理想」という意味。
だから、出来たてを堪能できる 「御殿場高原ビール」を目指す道すがら、わくわくが止まらなかった。
到着してまず感じたこと。
醸造所で飲むフレッシュなビールの魅力を伝えるために、格言を効果的に使っていますね。
ちなみに、以上の5つの記事はすべて同じ書き手(並河真吾さん)によるものです。同じビールの記事でもこれぐらい書き分けられるというわけですが、実に見事ですね。
読みながら、僕も良いつかみを書くぞ、と執筆意欲が湧いてきました、
…と言いたいところですが、やっぱりビールの誘惑に抗えなさそうです。
グビッと飲んで、明日からバリバリ書くぞ~!
※ビールのアテに、私が書いた「文章のつかみ」に関する本もどうぞ!
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