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ふたりして雛にかしづく… - 好きな俳句

大高翔『漱石さんの俳句 私の好きな五十選』より引用します。
きのうに続き、漱石の雛人形の句で、1908(明治41)年の作です。

ふたりして雛にかしづく楽しさよ
             漱石

引用元によれば、”この句、漱石の門下生、野村伝四の新婚のお祝いとして、袱紗に染めて与えたといわれている”のだそうです。

恋するふたりが、年に一度の、雛の飾りつけをしている様子を描いているんでしょうかね。

これまた、なんともかわいらしい句ではないですか。
若い恋人同士が、雛人形を飾って、それに”かしずいている”なんて。

ここまでが、大高翔さんの読み方なんですが…

私は、こうも思ったんです。
この句、案外おじいさんとおばあさんがふたり、”雛にかしづく楽しさよ”でも、いいんじゃないでしょうか。
それはそれで味がある。

新婚の”蜜月(ハニームーン)”は短い、むしろ二人で過ごす”夫婦になってからの暮らし”が長いんです。
でもそれがまた、妙味でもあるかもしれないわけで。

いろいろあった老夫婦が、ふたり仲よく雛を飾って楽しいんだ、渋いねえ。
こんな読み方も楽しいと思いました。

漱石晩年の、”則天去私”などと言われる境地もいいですが、こういうかわいらしい句も好きです。

今こういう句を見つけ、ひとり楽しんでいます。
今朝は電車の車窓から、きれいな虹を見られました。
ちょっと感動しましたよ。

”一日”には、金稼ぎに伴う徒労感、疲労感だけがあるんじゃないんです。
こういう小さな喜びもまた、あるんです。
また明日、何とかやっていこう、そしてまた晩に自室で酒を飲み、好きな俳句でも探そう。
そのうち”風向き”の変わる日もあるさ。
などと思いながら、もう寝る時間です…


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