誰もが十月十日愛されて、生まれてくる
──妊娠がうれしい……!
妊娠期間が折り返しを過ぎた頃から、妊娠している事実を前向きに捉えられるようになってきた。
思えば、妊娠前も妊娠後も安定期に入るまではどこか疑心暗鬼というか、心にもやがかかっているというか。子を授かる=喜ばしいということを理解はしているけれど、腹落ちしてない感がずーっとあった。夫や親戚が喜んでいるのを見ても他人事だった。自分のおなかの中にいるのにね。
でも最近、妊娠ってうれしいことかもしれないと思いはじめている。
一番の理由は胎動。
1ヶ月前からおなかの中がかすかに動く感覚があって「これなのか?」「これかもしれない」とふわふわした気持ちで眺めていたけれど、2週間前からは「明らかに胎動である」という確信に変わってきている。
最初は寝転んでいる時だけ。最近は歩いていても原稿を書いていても。今日は検診の待合室で。こちらの意図しないタイミングで皮膚一枚隔てた場所から子の意志が伝わってくる。
何これ!かわいすぎる………!しかも妊娠中しか味わえないんだよね、え、最高。かわいい。えええええ。
夫に「今動いてるよー!」と話すとすすすっと寄ってきて、あったかくてふっくらした手のひらをおなかにあてる。すると子がぽーんとジャストな場所を蹴りあげる。「いるねえ」ってふたりでうれしくなる。
胎動を感じると「ああ、一緒にいるんだ」ってすごく安心する。緊張する仕事に向かう時も、夜眠れるか不安な時も、ぽーんぽーんという合図にふっと心が和らぐ。
私は一人だけど、ひとりじゃない。
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検査薬が陽性になった時。
胎嚢という赤ちゃんを包む袋が見えた時。
心臓の音が聞こえた時。
母子手帳をもらった時。
流産リスクの高い週数を越えた時。
手をふりふりしているのが見えた時。
「今日も元気ですよ」って先生に言われた時。
性別がわかった時。
胎動を感じた時。
妊娠にはいくつもの段階があって、どの瞬間にもみずみずしい感動があって、私もそうやって生まれてきたんだ。どんな人であっても、この世界にいる人はみな、十月十日望まれて、愛されて生まれてきたんだ。
妊娠が、うれしい。これからまたどんな気持ちになるかわからないけれど、今日そう思えていることがシンプルにうれしい。
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