【2016松本山雅】4月の振り返り+第12節 vsヴェルディ
ご覧頂きましてありがとうございます。12節東京ヴェルディ戦、そして4月(3月末の山口戦)〜前節セレッソ戦までの山雅の戦いぶりを振り返ってみましょう。
まず最初に3月終わりの山口戦から、GWセレッソ戦に至るまでの山雅。
●FW総崩れの5節山口戦
山口戦はFW陣がケガだらけで総崩れ。脚に問題を抱える山本と、高卒新人の前田、大卒新人の志知しか残っていない状態。
結局 「アタッカー(石原)不在をボランチ(宮阪)で補う」等、「本来の役割としては違う選手がポジションに入る」。
*宮阪のアタッカー/本来はセグンド(攻撃的)ボランチ
*武井のセグンドボランチ/本来はプリメイロ(守備的)ボランチ
ただでさえ「選手の技量の拙さを細かな約束事でカバーする」山雅である。
やっと4節まで実戦を積んで、各ポジションの役割分担を、失敗しながらも明確にしつつあったはずなのに。これでは苦しい。
試合は3-3のドロー。
後に山口がジェフをコテンパンにやっつけたことを考えたら、よく引き分けたとさえ思う。
●高崎補強直後で多くは望めなかった6節長崎戦
このFW総崩れを受けて、フロントは高崎寛之を期限付きで獲得。
まさに冬の移籍ウィンドウが閉まる直前であった。開いてて良かった移籍ウィンドウ。
とはいっても、まだ高崎が山雅を知るにも時間がなさすぎるし、山雅の選手たちが高崎を知るにも時間がなさすぎる。
この試合からDMFを宮阪岩間コンビに変更。武井がスタメン落ち。また左ワイドに那須川を起用。但しこの変更が有効になるにはもう何試合か時間を要することになる。
工藤のゴールはあったものの1失点で1-1ドロー。長崎のセットプレー守備の良さもあってモノにはできず。
●正直相手に助けられた7節徳島戦
徳島がもう少し攻守に鋭さがあったら負けていたであろう試合。
この1ヶ月山雅の攻撃をひとり支えてきた山本が明らかに不調。但し高崎の順応性が速く、更には高崎をよく知る那須川(奇しくもふたりにとって今節は古巣対決となった)のいいクロス供給もあって攻撃になった。
那須川が4月に入り左ワイドに定着。良質のクロスと突破、爆発力のあるキックやシュートは開幕前のJ-STEPキャンプでも素晴らしく、ようやく日の目を見た印象。
ゴールはその高崎の落としを那須川ダイレクトクロス。隼磨ヘッドはポストだったが、工藤が落ち着いてゲット。4月に入って「姉崎のマラドーナ」の調子が上がってきた。
●前半は秀逸だった8節岐阜戦
前半早々にオウンゴールとレッドカードで岐阜が自滅。
但し後半は、昨季からの悪癖である「リードするとギアダウンして追加点が奪えない」姿が見えて、ちょっと頂けなかったが。
那須川ゴールは、デザインされたスローインからの當間の突破、飯田のニアスルーで相手守備を釣って、中央に詰めた那須川をフリーにしたという意図的なプレイ。
この頃から、3月はおっかなびっくりプレイしていた當間に自信が生まれ、那須川が気の利いたパスやクロスを供給、工藤の飛び出しやボールキープも活き、高崎もゴールはないものの献身的なオフザボールの動きで相手守備を釣り始めた。
3月は苦労したが、今季の方向性が「45分のみとはいえ、確実に成果として出た」のがこの試合。
●しぶとく勝った9節ザスパ戦
ありとあらゆるJクラブがある中で、唯一と言っていいぐらい、アルウィンの試合で自分たちのサッカーが表現できるのがザスパではないだろうか。
慣れないクラブなら浮足立つ場面があるのだが、ザスパ戦は毎回そんな場面が皆無である。
しかしこの試合の前半の山雅は「今季やろうとしていた崩し」を何回も見せた。
秀逸は、ゴールにはならなかったが、27分の高崎フリックからの山本突破。
まさに今季の狙いが凝縮されたプレイ。
いいときの山本なら強気でPA外からシュートも打てたはずだが…。
得点は那須川の絶品のクロスから工藤独特の持ち直しからシュート。そしてやっと強気になれた山本の左突破(1枚抜いたあたりは本当に素晴らしい)がPKを呼ぶ。
但し山本はこの後1対1を外しもう1本あったPKも外す。安定はしていない。メンタルだろうか。
守備で気になったのは、サイドからの大きいクロスの対応。3月もジェフ戦等こういう失点があったが、この試合の失点もそういうケース。
昨季から目立つ、大きいクロスがファーに上がった時の、ファーサイドのCBとワイドの対応の不味さ。
特にラスト15分は注意力も散漫になるので、何とか改善したいところ。
●コンサバティブに引き分けを拾った10節愛媛戦
愛媛は強いという率直な印象。攻守ともにバランスが良く、GK児玉の好セーブもあってなかなかゴールには至らない。
でも山雅も随所にいい崩しは見せており、この後のセレッソ戦も含めて攻撃面は結構整備されてきた印象。
途中交代の石原も、81分の高崎フリックからの突破(相手DFの「ほぼレッド相当」のファウルで止まったが…しかも玉林睦実だ)等良さは見せている。セレッソ戦への期待は高まった。
●「第1回中間試験」として見た11節セレッソ戦
今季のシーズン日程が出て、山雅の攻守(特に攻撃面)がリニューアルすると明らかになった段階で、この11節ホームセレッソ戦はいわば「今季の攻守の習熟度に対する第1回中間試験」として期待していた。
セレッソの選手の個の力量はJ2随一。このタレント集団相手に、今季の攻撃はどれだけやれるのか。GWでもあり、アルウィン満員必至の好カード。
結論から言えば追試である。ジーニアスこと柿谷曜一朗のナイスボレーシュートで負け。但し内容はといえば、攻撃面の熟成は進み、守備面もその失点シーン以外は踏ん張りきれた。4月に定着した那須川をケガ(という話だが真相は不明)で失った面は正直影響したと思うが、現状やれることはやれたのでは。
失点シーンは、またファーへの大きいクロスだ。
*どこのクラブでも狙う隼磨の裏の縦突破をあっさり許し、
*カバーに行った工藤があっさりスライディングして交わされてしまい、
*リカルドのファーに逃げるプルアウェイを喜山があっさり許す
…という3点が重なった。
昨季J1でもそうだったが、弱点を攻められるのは仕方ないとして、守備があっさりしてて粘れないとこうなってしまう。粘りたい。粘れるはず。
*****
●そして味スタ。12節ヴェルディ戦。
今日の本題はこの試合である。前段が長くなって申し訳ない。
GW終盤、農繁期ということもあり、味スタに詰めかけた山雅サポは例年より少なめ。2階席は開かず。伝え聞く山雅側動員は約4400人。
●素晴らしき先取点
試合は冒頭から高崎にいい縦パスが入る展開。解説のケツさんこと川勝さんも褒めていた喜山の縦パスやサイドチェンジの長いパスもいい。
先取点はお待たせしましたの宮阪FK。J-STEPキャンプでも見たが、やはり右寄りが得意なようだ。巻いて落とすあたりは流石。
ほぼ真裏から撮影された動画をどうぞ。
●いいプレスからのいいショートカウンター
この後もいいプレス、速い守備から縦にパス入れるショートカウンターを見せる。高崎、山本は勿論工藤の裏取りも随所に見せる。
高さ勝負ではヴェルディのDF井林との勝負を回避。他のDFとの競り合いを選ぶことで主導権を握る。
高崎については愛媛戦セレッソ戦含めてほぼ問題なく、むしろケガが治ってもオビナが先発に戻れないという副産物も。
2点目に繋がるPK。相手DFの雑な処理。工藤浩平がスティールして結局倒される。井林さえ回避できればチャンスがあるという分析なのだろう。高崎はこれが移籍後初ゴール。
●飯田を積極的に上げる4バック(2バック)テイストなシフト
セットプレイで飯田真輝を上げるのは山雅では定石だが、ビルドアップ時でも、飯田を敢えて前に残すやり方を頻繁に始めている。
*當間と喜山が「4バックのCB」よろしく振る舞い、
*「4バックで言うSB役」の隼磨と石原は高く位置を取り、
*DMFの宮阪か岩間が最終ラインに降りてきて「後ろ3枚(というかCB2枚+アンカー)」としてビルドアップに関与する。
(ザッケローニの代表の長谷部の最終ライン関与のような、4231等々でよくある「SBを上げてDMFを下げる変形」)
結果、4バックテイストだが言語化もナンバリングもなかなか難しい、こんなビルドアップシフトが誕生する。
「飯田高崎のツートップ」
「DMFの片方・山本・工藤のうち2人がインサイドハーフ的」
「残るひとりがボールサイドでアタッカー」
インサイドハーフがワイドの前に飛び出したり、トップ下的な仕事をするという433定番の攻めもある。
サンフレみたいなワイドのえぐりもできる。
そしてこの日はサンフレや浦和が見せる中央の崩しも披露(3点目)。
この辺は433を試みていたソリさんのエッセンスが活きている感じがする。
●新・戦術飯田真輝2016??
従来だと飯田はセットプレイ以外はもっぱら「守備専」で、縦パスも喜山頼りという部分は否めなかったのだが。喜山と當間が安定したと見るや、従前の3バックや、山雅が参考にしたと言われるユヴェントスとも違うやり方を見せ始めた。
解説の川勝さんも「ダビドルイス(PSG/ブラジル代表DF)よろしく上がる飯田はフィニッシャーとしても振る舞える。捕まえづらい。」という解説。
「戦術飯田真輝」とでも言えばいいのだろうか。
いや、従来の「終盤の戦術飯田真輝」的な人海戦術的パワープレイとは区別すべきだ。
ならば「新・戦術飯田真輝」か。
但し、常に飯田を上げるわけではない。飯田が普通に最終ラインで守備もしている場面も多い。
また浦和における槙野、サンフレにおける塩谷、かつての名古屋時代の闘莉王のような「個人の技量を信頼した」上げ方でもない。
結構システマチックな飯田の動き。今後も興味深く見守っていきたい。
●工藤と高崎。実力者が見せる崩し。
後半早々の3点目。正直、山雅で中央の崩しが見れるとは思わなかった。
というかこの崩しのスタートは、高崎のプレスバック守備で岩間にボールを戻した場面から。
*岩間が工藤に預けて鋭くスプリント(パス&ゴー)する
*パスゴーでフリーになった岩間に戻して、工藤も緩めだがパスゴーする
*その工藤にパス。工藤が溜める
*溜めた間にプレスバック守備からゆるゆると上がる高崎の足元にラストパス
*高崎落ち着いてゲット
オフサイドラインを考慮した、工藤と高崎の「ぬるっとした」上がり方がもう秀逸。
相手DFからすれば、フルスプリントには条件反射のごとく食いつくが、こういう「ぬるっとした上がり」はついつい見逃す。
「気がつけば工藤」「忘れていた頃に高崎」である。まさにベテランの味。
従来の山雅なら単調にスプリントして、パスを要求して、パスとタイミングがずれてオフサイドだったはず(かつての船山とか)。
工藤に対する相手守備の緩慢さもあるとは思うが、それにしてもベテランのインプロビゼーション(即興)は凄いし、そのインプロビゼーションを引き出すべく「ファイナルサードでアイデアを出せ」と今季たくさんトレーニングさせたソリさんの意図が出たシーンでは。
●良い振る舞いを見せる「ベンチの白井裕人」
工藤の抜け出しからのループ等惜しいシーンを見せた後の4点目。
宮阪の大きいサイドチェンジパス、隼磨の早めのクロスから、飛び込んできた高崎の高さのあるヘッド。高崎は自信を掴むには十分過ぎるハットトリック達成。
サポーターも湧く。ベンチメンバーも湧く。
そんな時。
チームの雰囲気の良さが出たシーン。
高崎にハイタッチしに行った、控えビブスのよく見た顔に気づく。
そう、白井裕人。
選手会長としての自覚が産んだのか、今季ベンチや練習で盛り上げ役としてしっかり振る舞う白井の姿がある。
アルウィンでの試合前練習の最後。お気づきだろうか。
最近いつも最後は「白井対中川コーチの対決」が始まる。
白井がセーブすればサポ拍手。白井もサポを盛り上げてのせるという場面。
かつての野澤洋輔がそうだったが、控えGKという「アクシデントがない限り通常出番はない立場」選手が下支えしているチームは間違いなく雰囲気が良い。
●遂に終盤まで緩むことがなかった
4-0になってラスト30分の緩みを心配したが、少し押された場面でも、451もしくは541で積極的に守り、時折カウンターを狙う姿勢を見せた。
80分を過ぎるあたりまで緩むシーンはなかった。中3日の3連戦と考えたら上出来だろう。但し、最後の10分で交代出場した選手たちはちょっと物足らなかった。
●飯尾竜太朗が先発できない理由を見た気がする
交代選手の動きを気にしながら見ていた終盤。まずは飯尾竜太朗が左ワイドで起用され、惜しいシュートも放ってはいた。
しかし、その惜しいシーンで、彼は頭を抱えて数秒惜しんでいた。
気持ちはわかるが、すぐにプレイオン状態になる場合もある。
このシーンではたまたま選手交代になったが、それを見てゆっくりした訳じゃないのが中継で映しだされた顔からも見て取れる。自分のことで精一杯。
早く切り替えないと。早く切り替えて次はもっといいプレイを求めていかないと。
才能がある選手だけに、こういうところが惜しい。どの競技でも、メンタルの切り替えが遅い選手はコーチの信頼を得られない。
サッカーは特に「失敗前提」のスポーツ。失敗してもすぐ切り替えて欲しい。
●オビナとウィリアンスの居場所は…
続いてオビナ。彼はパワーと、その巨体にしては柔らかいシュートやパスを持っていることはご存知の通り。但し鋭さは高崎の方がある。
彼の良さを見たかったのだが、厳しいか。たまに柔らかいパスは見せてはいたが、このままでは高崎を越えられない。
そしてウィリアンスもまたなかなかアピールできない。彼には若さも鋭さも速さもある。プレスバック守備はいい。だから、山本が不調、石原がワイド起用となるとチャンスはある筈。
オビナとウィリアンス。アメリカミネイロのコンビ。このままで終わってほしくない。
ということで、試合のハイライトをどうぞ。
●最後に岩間雄大と前田大然について
まず岩間雄大について整理しておく。同じ守備的な仕事でも、2014年の岩間に求められたのは「危険察知」による対人守備や、バイタルエリア等のリスク管理等の「守備」だった。
岩間の危機察知能力は本当に素晴らしいものがある。
但し、他のJ1J2のDMFとの比較で落ちる攻撃面は、2014年当時の相方だった喜山や、リベロの多々良や大久保(共に現ジェフ)が担当することで、岩間の守備の長所が活きたと考えていた。
しかし、2015年(特に春の埼スタ以降)に相手の速い守備に直面すると攻撃面が殆ど出せなくなった。
このため、夏移籍で安藤と工藤(京都時代後期はDMF)、今季は宮阪に武井と、このポジションの補強を重点的に行なったという認識でいる。
今季、開幕当初武井がこなしてきたような「危険察知もしつつ、前線とのつなぎ役としてCBとセグンドボランチの間に入り、相手の早い守備をかい潜りつつ、縦パスを供給し攻撃的な役割も果たす」という、多様な役割については、岩間に求めるのは厳しいかな、という目で見ていた。山口戦も守備では光っていたが、攻撃面ではいまひとつ。
ところが、岐阜戦辺りから、背負ってビルドアップに参加するより、積極的に前に飛び出して前線のサポートに精を出すスタイルが出始めた。この動きはパスさばきにぎこちなさはあるものの、相手守備を混乱させる効果はあるし、実際ヴェルディ戦の3点目も彼のいいパス&ゴーが起点になっている。
勿論、守備への戻りも良く、まさに「BOX to BOXタイプのボランチ」として(=「プリメイロ」「セグンド」と役割分担をしない)一段大きな階段を上がった印象。
競争の中でワンレベル上がったというか、こういうプレイなら山雅で生き残っていけるという答えを見つけたというか…とにかく今の岩間雄大はいい。
勿論、この岩間の姿を見た武井もまた伸びると思っている。もともと背負う受け方やパス回しは武井が優れているだけに、いい競争をして欲しい。
そして、前田大然について。
山口戦のとき「宮阪にアタッカーをやらせるくらいなら、前田大然がいるではないか」という声もあったとは思う。確かにメンバー発表前はもしやと期待はした。
しかし山口戦、交代出場で迎えた「3-2で1点リードのAT」。
「絶対にサイドでボールを受けて時間を使う運び方をしなくてはいけない」場面で、大然は「猛然と『点を取りに中央に走って』縦パスを受けようとする」大ポカをやってしまう。
サイドで貰ってコーナーフラッグに向かって運べたら最低数十秒は時間をすすめることが出来、相手の攻撃時間は勿論、自軍守備の精神的な負担も軽減できたはず。
ただ、こういう「若い選手にありがちな至らなさ」はよくある話。嘆きたくもなるが、この年代の成長の速さを楽しみにしたい。大然は身体能力やシュートは素晴らしい物がある。チャンスはあるとは思うので、積極的に行って欲しい。
日付的には今日となったが讃岐戦。木島兄弟揃い踏みなのだろうか。
讃岐、町田、金沢と、JFL時代のライバルたちとの再会。J1を経験した山雅ではあるが、謙虚に、そして力強く戦って欲しい。
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