いい時間とお酒と田中(ショートショート)
会社員、田中は、仕事終わりにいつものように一人で居酒屋に向かった。
仕事は忙しかったが、なんとか納期を守ることができた。今日は、その疲れを癒しに、美味しいお酒を飲んでゆっくり過ごそうと思っていた。
居酒屋に着くと、いつもの席に座り、メニューを眺めた。今日の気分は、日本酒かな。
店員に「日本酒をください」と注文すると、店員は「どんなお酒がよろしいですか?」と尋ねてきた。
「今日は、飲み慣れたものじゃなくて、何か新しいものを試してみたいです」
店員はしばらく考え、小さな瓶に入った日本酒を持ってきてくれた。
「これは、地元の蔵元さんのお酒です。フルーティーな香りと、すっきりとした味わいが特徴です」
店員のおすすめの言葉に、田中は思わず笑みがこぼれた。
「ありがとうございます。それでお願いします」
日本酒が運ばれてくると、田中は早速グラスに注いだ。
グラスの中で、琥珀色の液体がゆらゆらと揺れる。
グラスを口に運び、一口飲むと、ふわりと鼻から広がるフルーティーな香りに、田中は目を閉じた。
そして、口の中に広がるすっきりとした味わいに、思わず「うまい」と声が出た。
「これは、本当に美味しいですね」
店員は、田中の表情を見て、笑みを浮かべた。
「気に入っていただけて、光栄です。ぜひ、ゆっくりとお楽しみください」
田中は、日本酒を片手に、ゆっくりと料理を味わった。
仕事の疲れが、少しずつ癒されていくような気がした。
食事が終わり、日本酒も半分ほど残った。
田中は、グラスを手に、店の外に出た。
店の前に広がる空は、澄み渡っていた。
星空も綺麗に見える。
田中は、日本酒を飲みながら、夜空を眺めた。
「いい時間だなぁ」
田中は、心の中でつぶやいた。
仕事の疲れや、日々の悩みごとは、少しだけ忘れることができた。
田中は、日本酒を空け、店を後にした。
家路を急ぐ人々が、田中とすれ違っていく。
田中は、彼らを見つめながら、ふと思った。
「みんな、きっと、自分なりに、いい時間を過ごしているんだろうな」
田中は、そんな気持ちで、家路についた。
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