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サービス 5 周年と今の小売/商業不動産マーケット解剖

COUNTERWORKS の三瓶です。

先週こんなプレスリリースを出しました。


一緒に働いてくれている(いた)メンバー、お客様、株主の方々、立場に関わらず応援して頂いている様々な方々のおかげでなんとかチャレンジを続けられている毎日です。本当にありがとうございます。

せっかくなのでサービス開始から 5 年経ち、自分たちがどのような世界を目指して歩んでいるのか。また、大きく前提が変化した今の小売/商業不動産市場で何が変わり、何が変わらないのか等、我々がどのように小売や商業不動産領域を見ているのかを書き記しておこうと思う。

5 年前から目指している世界は変わらない

と、書くと本当?この規模のパンデミックとか想定できてた?結構シナリオ変わったんじゃない?と思われる皆様も多いかも知れませんが、変わっていません。(変わってないというのは大局的なビューの話で、こういった規模のパンデミックは想定できていなかった..改めて大小関係なく法人を預かるものとしてあらゆるパターンでオプションを用意すべきなんだと認識した)

創業当初こそワーディングは存在しなかったのですが、会社のミッションにも掲げている " 最適な「場」を提供し、誰もが価値を届けられる世界に "を目指し続けていますし、ミッションをブレークダウンした現在提供している「SHOPCOUNTER」についても、2015 年のサービス開始当初から 5-10 年後は "商業用不動産の中で少なくない割合がフレキシブルに取引され流動性が上がり、テナント、スペース(不動産オーナーや小売店等)オーナー、消費者の皆さんにとっても経済性を伴った形で新しいエコシステムが構築されていく" という仮説の上でスタートした経緯があります。

大前提としてスマートフォンの普及や回線速度などのインフラが整い EC プラットフォームが成長、ビジネスをスタートするハードルが下がりオンライン上でのコミュニティ作り/維持/拡大に活躍する SNS や決済インフラをはじめとした様々なツールの普及によって小売市場における EC 化率は毎年 7-9 %前後上昇していたし、これからも当面拡大していくことは目に見えていました。

一方で国内小売市場については成熟市場で、市場全体は 140 兆円を超えるサイズ感はあるものの、今回のような天災に近いアクシデントを除けば大きく縮小したり逆に伸長したり、マーケットの総和にそういった大きな変化が起きにくい構造となっています。

そのような中、上記の通り速いペースで EC の割合が増加するとなると当然マクロ的には店頭での売上が下がり、店舗主体の小売事業者の店頭売上に対して固定費(家賃)の割合が上昇してしまう、とすると新規出店はもちろん減少、既存店についても閉店、撤退が増えるであろうと。

一方で商業不動産オーナーも、これまでは 5 年や 7 年、10 年という単位(もっと長期の契約もザラ)で比較的長期間のコミットメントを求めて不動産を貸し出すケースが主流だったが、上記の通り、借り手の常設店需要の減退を背景にフレキシブルに提供されるケースが増加される(せざる終えない/した方が収益性が高まる)と見込んでいたのです。

この仮説については当初の目論見通り、年々 EC 化率は増加し 2018 年時点で約 6.2 %、サービスを開始した 2015 年で 4.75% なので順調に成長していました。一方不動産オーナーからもフレキシブルに活用したいというニーズは徐々に高まっているのを事業を通して感じ取っていましたが、劇的な認識の変化はなく、そういった長期的な課題感は感じつつも組織やビジネスモデルを大きく変えてまですぐに対処する必要性は高くない、という考え方が大半という状況だったと認識しています。

パンデミックと急速な変化

そんな最中、新型コロナウィルスによってビジネスに影響を受けた方もそうでない方も様々な立場の方がいらっしゃるかと思いますが、ことオフラインの世界に関連性が高い事業をされている方は一時的にでもマイナスを被っている(被った)かと思います。

2019 年末頃に中国を発端としてじわじわと拡大していた新型コロナウィルスですが、当時はそこまでの影響が出る事を想定できずにどこか遠くの国でおきている出来事として特に対処もできずに過ごしていました。

が、年明けから 2-3 ヶ月を経て、これまでの前提が覆るほどの出来事かもしれないという状況に変化し、弊社でも急ぎ足で働き方や働く場所の変化、事業推進上ですでに大きな影響を受け始めていた環境下で、どのような形で社会に貢献できるか、もう少し生っぽく言うと、どのようにして食い扶持を担保していくのかを模索しながら自分たちにできる事として現場のメンバーを中心にお客様の支援をどのようにすれば必死で模索する日々でした。

いついつのタイミングまで今の状況が続くとした場合、xxxxxの方向にピボットしようというオプションすらあったし、とにかく新型コロナウィルスについてはもちろん、情報を集めまくっていました。
(ちなみに以下の記事のような展開は社内の若手メンバーのアイディアから始まった取り組みで、事業ドメイン的にどう考えても危機的な状況の中でこのようにお客様にも消費者の方にも、そして自社にも価値を出せる形にできたのは非常にうれしかったし、実現までつなげ、現場を動かしてくれているメンバーにも感謝してもしきれない。更にこの取り組みが新たな展開の礎となっていく事に。)

変わる事、変わらない事

そういった日々を過ごし、世の中でも緊急事態宣言が解除され、安心はできない状況ではあるものの少しづつ街に人が戻ってきている状況です。

<参考>

そして人の流れの戻りと同じくして我々のサービスのご利用者様も戻り基調となり、また多くの感染報告など出始めている東京都心部など特に予断は許されませんが、全国的に見ると少しずつ我々の事業も歩みを進めつつあります。

しかし、人々の意識には新しい前提が刻まれているのだと思います。

店頭での業務に従事されている方をリスクから守るにはどのようにすれば良いのか、消費者の皆様にはどのような配慮や対策をすれば少しでも安心して店舗をご利用頂けるのか。

飲食店等においては座席間隔を広げるなど、席数x回転率のビジネスからすると非常に難しい問題に直面しています。

一方でこういった状況を打破するために、EC の強化デリバリー/テイクアウトへの参入/強化、オンラインビデオを使ったコミュニケーション、等々様々な形でデジタルを中心として感染リスクを極力排除したビジネス展開が急激に浸透し始めています。

しかしこれはこのウィルスによってもたらされた未来でしょうか?
今回の件をきっかけに別な世界線へ移動した結果でしょうか?

答えは No ではないかと考えています。
こういったツールや習慣はすでに一部の顧客にとっては日々なくてはならないものになりつつあったのではないでしょうか?

この変化について 5-10 年で当たり前のものになっていたはずの未来が、予期せぬ出来事によって 2-3 年という時間軸へ変化が早まっていると捉えています。

また、日本企業はこれまで先人達が築いてきたアセット(国力、消費規模、資産等)があるがゆえ、(もちろんそれもこれまでの合理の積み重ねではあるが)現代においては非合理化してしまっている仕組みとして根強く残っています。
例えばクラウド導入においても他国比で経済規模の割に遅れを取っており、クラウドかオンプレかの議論はすでに多くの先進企業が証明しているはずなので、ありきでビジネス設計を考えるべき段階にきているし、これもウィルスに関係なく確定した未来だと言えると考えています。

今の小売/商業不動産とこれから

ここまで書いた通り、すでに確定している未来、その未来への時間軸が近づき、小売/商業不動産領域についても大きな過渡期に差し掛かっています。

その場での価値提供(その場でお買い上げいただく、その場で飲む食べる)のみを前提とした商業不動産の運用/プライシング、その前提を踏襲するテナント候補。(もちろんそうしたい、というお客様/お客様のシーンにはそのように価値を提供すべき)
これらは現代の消費者の消費スタイルから少しづつ乖離を始め、消費者側はすでにデジタルありきの消費行動を取っているし、デジタルを通じて瞬時に移動する性質である情報は提供者との非対称性の溝をすぐさま埋め、情報やモノが溢れて急速に消費傾向が変化するにも関わらず、商品やサービスを提供する側、それらを支援する側が消費者に合わせられていないケースの方が多い現状。

こういった状況に対しての我々なりのアプローチが、実世界(実店舗)をインターネット的、ソフトウェア的に扱える環境の構築とその世界のガイドです。

もう少し踏み込んで書くと、その特性とは agile(機敏な) x data driven(データ駆動) に他ならないと考えています。

これまでの店舗出店があらかじめ機能設計/計画をし、これに沿って実行を行なっていくウォーターフォール型(従来の機械製造、造船やソフトウェア開発などで主流だった)の開発スタイルのように、5 年 10 年の契約、または大きな金額の設備投資/人材採用を前提にすると、事前の準備段階で限りなく成功確度をあげておかなければリスクが高く、おいそれと出店をすることは難しい状況でした。
もちろん事前の準備段階でどれだけ成功確度をあげられるかはどのようなシーンにおいても非常に重要です。しかし計画に時間を費やせば費やすほど期待する成果があげやすいかというと現在においてはイコールに結びつける事の難易度が上がっているのも事実で、それは消費行動の変化の速さに起因します。

ソフトウェア開発的に言えば開発の途中で仕様の変更や追加、つまりお客様のニーズの変化は綿密な計画を練り上げている間に刻々と変化していく事となります。

またこのアジャイルなスタイルを成立させる要件として、データ駆動である事は必須です。
要件を小さく切り分け、素早く実装し、実際のデータから次の方針を策定して再度検証していく実験プロセスこそが変化に適応しながらお客様のニーズを掴み、ビジネス成果へと転換していく有効な手段なのです。

そのためにも我々は SHOPCOUNTER を通じて店舗出店自体をフレキシブルにし、お客様の動きや流れを可視化する adptOS を提供しています。

A エリアはxxxなファミリー層が多く、車がメインの移動手段。B エリアはyyyyなファミリー層が主体で交通手段は電車がメイン。同じファミリーでもメインの交通手段によって購入傾向(例えば車で来ていればまとめ買いをして頂ける可能性が高いのではないか?その為の併売策は?等)が違ったり、店頭の品揃えも AB テストライクに出し分けて検証する事も店頭のお客様の動きが定量化されていれば可能となるのです。

また商業施設の運用自体もこのような概念を持って消費者の皆様と施設内のテナントおよびテナントの商品といかにマッチング効率を高めていくかは、ソーシャルディスタンスが求められる現在において、より課題感が増して来ています。そしてフレキシブルな賃貸が有効なソリューションだと仮定した上で、それに耐えうるオペレーションの構築も急務になりつつあります。

これまでは 5-7-10 年に一度、新たな借り手を見つけていた活動が 1 週間、1ヶ月と短い期間の借り手と効率よく商談し、ステータスを管理し、収益を最大化しなければならないので新たな管理手法やシステムの確立が求められ始めていて、そういった角度でのご支援もすでに議論を始めています。

これまで SHOPCOUNTER はテナントの皆様のスペースブッキングにおける面倒を解決する手段とスペースオーナーの皆様のスペースをプロモーションする役割として拡大を続けて来ました。
しかし上記の通り、スペース確保の観点のみでは我々のミッションへの到達もといお客様の課題解決としては片手落ちです。

テナントの皆様向けにどんなご支援が出来るか?
スペースオーナーの皆様にどんなご支援が出来るか?

ここからの 5 年はそういった観点でも我々自身が大きく変化していきたいし、それがミッションへの近道だと考えています。

まとめ

長くなって来たので、ここらで簡単にまとめていきたいと思います。

創業〜サービス開始から 5 年間、本当に皆様ありがとうございます!

この 5 年は信じている仮説を頼りに少しづつではありますが、仲間が増え、お客様が増え、一歩づつ出したい価値に近づく事ができたのではないかと思います。もちろんもっと上手くやれた事を上げればキリがないのですが、そういった反省も踏まえつつ、冒頭にも書いた通りチャレンジを続けさせてもらっている事に感謝しながら、これからの 5 年で課題が深刻になり社会への影響も大きくなる分に合わせて、大きく社会に貢献できる会社に事業にしていくべく邁進していく所存です。

またこの瞬間からも粛々とお客様に向き合い、自らも含めた消費者が先行しているデジタル前提世界への adaption を伴走しながらお手伝いしていきたいと思います。

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