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自由。

深夜、業務で問題が発生するたびに僕の携帯が鳴った。毎夜交代で責任者が配置されていたが、現状を報告するためにいちいち僕の携帯に電話をかけてきた。上司からの「連絡が来る以上は夜間でも顔を出すのが幹部だ」という言葉に不信を覚えながら、電話がかかるたびに服を着替えて現場に向かった。そのうちに、どうでもいい些細なことでも判断を仰いできたり、自宅の電話が鳴り響いて家族が目を覚ましてしまうことが続き、睡眠不足で少しずつ消耗していった僕は、寝る時間になると電話が鳴る恐怖と疑心で頭の中がいっぱいになった。そのうちに自分には雨でぬかるんだ泥ほどの価値もないと思うようになり、やがて「消えてしまいたい」と自分の存在そのものを否定するようになってしまった。

結局、僕は長く仕事を休職することになった。組織から離れている間、自分は強い人間ではないことと、組織のために生きる必要はないことを知り、とても自由な気持ちになれた。

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