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【読書】植本一子「ある日突然、目が覚めて」「わたしたちのかたち」

そんなに読書量が多いわけではない私ですが、いつの年代でも追っかけている好きな作家やエッセイストがいます。学生時代は故 中島らもさん(他界された時は泣いた)の熱心なファンでしたし、最近ではブレイディみかこさんのファンと言っていいと思うくらい好きです(エレキングで連載していたアナキズム・イン・ザ・UKを読んでファンになったんですよね)。

傾向的に弱さ、生きづらさ、不満をかかえつつもどこか希望を見据えている感じがある文章が好きみたいです。自分と重ね合わせて勇気を頂いているのだと思います。

また音楽が好きなので自然と音楽とゆかりが強い方の本に触れる機会が多くなっていて、植本一子さんの本に触れたのも音楽絡みからでした。

ヤンキーでもなければ、勉強も運動も出来るタイプではなかった地味な学生であった私は持て余したエネルギーを音楽やら漫画やらサブカル関係にぶつけるオタクでした。音楽とかもヒットチャートを飾るようなのは見向きもせず、ロックやヒップホップばかり聞いていて、ちょうどその頃ECDさんというラッパーに出会いました。

このECDさん、日本語ラップ黎明期にさんぴんキャンプという有名なイベントの主催者だった事が有名な方なのですが、アル中になってしばらく入院、引退(というかもう音楽は出来ない)と考えていらっしゃった時期を乗り越えてインディーで活動を再開し、唯一無二の立ち位置を得ていった、というキャリアの方です。さんぴんキャンプは私より少し前の時代で、私がECDさんと出会ったのは自主製作でリリースされた「失点 イン ザ パーク」からでした。

ECDさんは同タイトルの「失点 イン ザ パーク」という小説も執筆したり、ECDIARYという日記を小西康晴のレディメイドから出版したり、執筆活動にも力を入れられていました(いずれもタイに転勤になった時に手放してしまい後悔)。

そんなECDさんの本の中で徐々に彼女さんの存在が出てくるようになり、その彼女さんが後に奥様になる写真家の植本一子さんでした。ECD/植本一子の共著の「ホームシック」はこれから始まる・はじまったばかりのお二人の生活のほのかな熱量が伝わる幸せなエッセイで、大好きな一品でした。(これは一度手放したけど、文庫で買い直した。今は実家にある)

この後、植本一子さん名義で「働けECD」「かなわない」「家族最後の日」「降伏の記録」「台風一過」などなど日記が出版されてきました。すべて買って読んでいますが、内容は子育ての苦しみや、夫であるECDさんとの関係、恋人との関係、お母さまとの関係、さらにECDさんの癌発症と他界まで日々や内面を赤裸々に描かれた日記でした。

生きているともちろんいい事ばかりではないですし、良い事も、苦しい事もある。私は生きにくさを感じる事が多い人間ですが、植本さんの書く日記を読むと、ああ、自分だけ苦しいんじゃなんだな、いろいろ大変だけど生活してかなきゃな、と思わせて頂いて、そっと背中を押して貰っている感覚を持っていました。

コロナ禍になって、植本一子さんは自費出版でいくつか日記を出版し、直近で出版されたのが、「ある日突然、目が覚めて」とここ3年の写真を集めた写真集「わたしたちのかたち」でした。

植本さんは新しいパートナーの方と出会い、新しい生活をスタートされていて、その最近の生活についての記録です。


ここで書かれている植本さんとご家族の生活をみて、ウチも(いろいろあるけど)やってくか〜、と思わせて頂ける、古い友達の近況を聞いたような気持ちにさせてくれる2冊でした。特に「わたしたちのかたち」が何気ない生活の良い瞬間が切り取られてる感じがして、好きです。ハッピーなバイブスです。

自費出版でamazonには置いてないので、取扱っている本屋さんから御購入下さい。



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