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【読書】戦争の話だけど、愛でつながった命のお話 2冊

 こんにちは、ナカちゃんです。

 今日は、一つのお話をもとに描かれた2冊の本のお話です。


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『エリカ 奇跡のいのち』

 講談社 ルース・バンダー・ジー作 柳田国男訳

 中学3年生の道徳の教科書に載っている作品ですが、本のジャンルは絵本です。

 ナチスドイツの迫害にあったユダヤ人を乗せた貨物列車から、一人の女の赤ん坊が外に放り投げられました。列車がある村を通る前に、彼女の両親は、彼女が「生きられるために」列車の外に放り投げる選択をしたのです。彼女の母は、ただただエリカが「生きられること」を願い、「死」へ向かう列車から、見えない外の世界へエリカを託したのです。

 彼女は、近くにいた人に拾われて、ある女性の家で育てられることになりました。当時、ユダヤ人の子どもを育てる事はとても危険なことでした。でも、その女性は危険を顧みず、彼女を育て上げたのです。エリカが21才になり、結婚をし、家庭を持ち、今ではたくさんの子ども達に囲まれて生きている。その命は、戦時中にもかかわらず、小さな命を守るために必死になって戦ったたくさんの人がつなげてくれたものなのです。


さて、ここからは、私が最近読んだ本のお話。

『神さまの貨物』

 ポプラ社 ジャン=クロード・グランベール作 河野万里子訳

読み始めたときには、『エリカ』と同じ話ということに気づかず読んでいました。気づいた時はびっくり!

この物語は、視点が時と共に変化します。

 最初は、森の中に住む夫婦の視点です。願っても子どもを授かることが出来なかった女性。森を貫く列車に向かって、「子どもが欲しい」と祈り続けます。ある日、貨物列車が彼女の前を通った時に、美しいスカーフにくるまれた赤ん坊が、列車から飛んできました。その赤ん坊を拾い上げた彼女は、「母親になったのだ」と、無条件の喜びのうちに、赤ん坊を家に連れて帰ります。夫は、「きっと、ユダヤ人の子どもだろう。そんな子どもは、捨ててしまえ」と冷たくあたります。母親は、森の奥に住む男の元へ、赤ん坊を連れていきます。男の飼っている山羊の乳をわけてもらうように頼みに行くのです。

 列車の中では、女の子と一緒に生まれた双子の男の子、その母親と父親が「もうすぐ自分たちが殺される」ことを悟ります。美しいショールにくるまれた女の子だけを生かすために、母親は列車から放りなげるのです。母親と男の子はガス室に送られ命を落とします。しかし、父親は「ユダヤ人の髪を刈る仕事」を命じられ、戦争の終わりまで命を繋ぐのです。

 子どもの存在を認めようとしなかった父親ですが、子どもの温かさにより心が癒やされ、家族として過ごすようになります。戦争が、森の奥まで影響を及ぼしてきたとき、女の子がユダヤ人だということがばれてしまい、軍隊によって殺されそうになります。

 命をかけて、母親と女の子を守ったのは、父親でした。銃で撃たれ血だらけになりながらも、「走れ、走れ!逃げろ、逃げるんだ!神よ、魂も信仰もない悪魔どもを 滅ぼしたまえ。おれたちの・・・」「・・・小さな贈り物を、生かしたまえ!」という言葉が、父の最後の言葉でした。

 走って、走って、森の奥に住む男のところへたどり着いた母親と娘。彼らを匿い、食事と寝床を提供した男は、同じように、民兵によって殺されてしまいます。

 戦争が終わり、娘の本当の父親が、ふらりふらりと彼女たちの村へやってきます。チーズを売り、生計を立てていた2人を見かけ、「自分の娘が、生きていて、目の前にいる」ことに気づきます。

 その後、一緒に暮らすこともなく、彼らのそれぞれの人生は続いていきます。家族として一緒にいるわけではありませんが、それぞれの場所で、それぞれの命を全うしていくのです。

 残酷で、辛いことばかりの戦争の最中、一つの命を繋いだのは、「愛」でした。小さな「命」は、種となり、大きな生命の樹として家族の命を繋いでいったのです。

 余韻を感じつつ、最後に、「本当の歴史」が語られます。


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《まとめ》

 ユダヤ人虐殺(ホロコースト)の歴史は、いろいろな本で学ぶことが出来ます。

 難しい歴史書から学ぶこともたくさんあるでしょう。

 しかし、「子どもの心に訴える」本は、誰の心にも「訴える力」があります。

 どちらの本も、きっと同じ実在の人物をモデルに書かれた物語なのだと思います。

 でも、書き手と翻訳、装丁など、一つ一つ「個性を持った」物語になっているのです。

 読み比べてもいい。どちらかを読んでみても良い。

 様々なことを考えるきっかけになってくれる

 そんな一冊だと思います。ぜひ、読んでみて下さい

 


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