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自転車の国で

ここベルギーにも新型コロナの第二波が押し寄せている。

10月に入ってから新規感染者数が急増し始め、直近7日間の一日あたりの平均は1万5千人超という日がしばらく続いた。入院者数も急増していて、一日の死者数は100人を超え始めた。深刻な状況です。

レストランやバーが閉じ、文化施設やスポーツ施設も閉鎖され、行動規制の範囲も徐々に拡大した。2日からはとうとう全土で、スーパーや薬局などを除く多くの店が閉じることになった。とはいえ、日中の外出は禁止されず、幼稚園と小学校も続くので少しほっとしている。

ただ、今週だけのはずだった秋休みは来週まで1週間延びた。息子は、夏に泣きながら通った地元のスポーツクラブのスタージュにまた参加する予定だ。

幼稚園が始まってからも週1回、クラブに通い続けてきた。そしていつからか、すっかり大好きな場所になった。今ではクラブに着くと、「じゃあね!」と言って自分から体育館に駆け込んでいく。その後ろ姿を、いつも感心しながら見送っている。

ちなみに政府が2日からの措置を発表したのは30日。そのまえの28日には、幼稚園のママたちがさらなる規制をほぼ確信していた。なぜならその日、お隣フランスが全土に外出禁止令を出すロックダウンを決めたから。

「大事なことはだいたいフランスの後を追うから、フランスがロックダウンしたらベルギーもそうなるよね」「うんうん」。ママたちは当然のようにそう話していた。夫の知人も同じことを言っていたという。結果的にはフランスほど厳しくはならなかったけど、ベルギーの人たちの政府へのまなざしや、近隣国との関係性が垣間見れて面白かった。

ここからが本題

そんななかでも季節はめぐり、街の木々はすっかり紅葉した。今いちばん気持ちが晴れるのは、赤や黄色の木の下を愛用の自転車で駆け抜けるときだ。

自転車を買ったのは9月。幼稚園まで徒歩20分弱の道のりを、チャリなら5分で行ける。日本食材店や肉屋さんや公園など、近所だけど歩くと20~30分かかる場所も多く、自転車があれば楽だなぁと思っていた。何より、道を歩いていると横をさっそうと追い越していく自転車乗りたちの姿が、あ~私も乗りたい!と思わせた。

そう、ベルギーの人は自転車が大好きなのだ。街を歩くとそれがよくわかる。大通りには自転車道がきれいに整備され、そこを走る自転車の多いこと。日本でよく見る安価なママチャリのような自転車はほぼなく、クロスバイクなどの頑丈そうな自転車に乗り、後輪の横にバッグをつけて、大人もヘルメットをしている人がほとんど。老若男女、本気である。

自転車屋は街のあちこちにあり、修理のために自転車を持ち込む人が次々とやってくる。近所の店で出会った日本語が少し話せるおじさんは、家に6台あると言って、ブランドごとの特徴も教えてくれた(おじさんの一押しは台湾ブランドのGIANTだった)。2日からのコロナによる店舗閉鎖でも自転車屋は対象外で(修理のみ)、人々に欠かせない存在であることがうかがえる。

目を引くのは、前や後ろに子供を乗せるカーゴバイクの多様さだ。ハンドルと前輪の間に大きな箱を挟み、そこに子供が入る自転車があったり、日本の電動アシスト付き自転車に似たものもある。

バイクトレーラーと呼ばれるカプセル型の荷台を自転車の後ろにつないで走っている人もよく見かける。各メーカーのウェブサイトを見ていると、乗せるのは必ずしも子供に限らず、犬や植物など用途も多様に想定されている。

オレンジ色の私の愛車はOXFORDというベルギーのブランドのもので、日本の子供乗せ自転車に似た電動アシスト付きのタイプ。後ろの荷台の耐荷重量は100キロなので、すでに20キロ近くある息子がどんなに成長しても安心して一緒に乗れるのがいい。

後ろには椅子をもう一つ付けて、子供2人のせることもできる。

カーゴバイクの品ぞろえが豊富な店まで電車で買いに行ったのだが、どれも品切れで、種類も色も一択の最後の1台だった。店には子連れ客が次々と見に来る。需要の高さを感じ、値段は日本の2倍くらいしたけど即決で買った。

そういえば店員のお兄さんが日本のサブカルファンで、この夏、初めて日本に行く予定だったのにコロナで行けなくなり、とても残念がっていた。息子が着ていたユニクロのウルトラマンTシャツを見て、ぱっと目を輝かせていた。いつか日本に行けますように。

そんなわけで、愛車は安定感抜群、坂道もスイスイですこぶる快適。幼稚園に行く途中にある木々が茂る公園を抜け、トラムの線路と道路の間に続く自転車道をいく。夏の青空の下を、秋の紅葉の中も。あ~気持ちいい~~と言いながら、今日も私は自転車をこいでいる。(雨の日も多いけど)

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