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東京大学でオンライン授業を3週間受講して <課題・対策・リクエスト>

 東京大学大学院 学際情報学府 修士課程の岩澤直美と申します。所属の山内研究室では学習環境デザイン・学習科学の分野を勉強中です。専門は児童の異文化間教育で、差別や偏見を逓減するためのプログラム開発を目指しています。

 コロナ禍の影響で、多くの大学は入学式や対面での授業の実施を中止し、授業開始時期を数週間遅らせ、オンラインでの授業を実施することとなりました。そんな中、東京大学は一足早く、4月1週目(学部・授業によっては2週目)に授業を開始しました。結論から言えば、非常にうまくいっている授業が多く、準備をしてくださっている講師の皆様には深く感謝しております。

 実際に受講してみて、どんな課題やトラブルがあったのか、どのようにすればうまくいったのかなどの情報を共有したいと思います。以前、感想を簡単に発信させていただきました(連ツイなので、続きはリンク先からご覧ください)。今回は、もう少し詳細に、整理しながら共有できればと思います。あくまで個人的な感想としてご理解いただき、一例として参考にしていただけますと幸いです。

 多くの方に届くよう願っておりますので、全て無料公開です。シェアをしていただけければ幸いです。応援していただける方は、記事の最後の<サポートする>からご支援いただけると嬉しいです。学費及び図書代として使わせていただきます。

1. 前提情報

・1コマ105分授業

・授業開始から2週間は、オンライン授業に慣れるための期間が設けられた。したがって、1-2週目の授業は、出席できなかった受講者にとって支障のないよう、ガイダンスや1コマで完結する授業であった。

・1週目、または2週目までを休講とした授業もある。

・筆者が受講しているのは基本的に研究科(文系)の授業だが、学部生も共に受講する授業、及び学部の授業も受講/聴講している。

2. Zoom授業の共通課題と解決策&リクエスト

 2.1. 授業開始時刻に全員が揃わない。各自の通信状況は仕方ないですが、①Zoomのリンクが毎回変わると混乱する。 ②オンラインシステム(ITC-LMS)にしかZoomリンクが載っていない場合、アクセスが集中する授業開始時刻にシステムがフリーズし、リンクまでたどり着けない。

 ★セキュリティ上やむを得ない場合(毎回受講者やゲストが入れ替わる、など)を除いて、できるだけリンクは学期を通して同じものにしていただけると助かります。また、そのリンクはオンラインシステム(ITC-LMS)だけでなく、メールなどでの共有をお願いします。

  2.2 初期の頃は、接続トラブルで出席できない人が必ずいる。筆者も経験しましたが、自分だけが繋がっていないのか、全員が繋がれていないのか、どこに連絡をしたらいいのか、などがわからず混乱する。受講者としては途中からでも問題を解決して参加したいと願うが、講師やTAメールで連絡しても、講義開始後にチェックしてくれるかどうかわからない。

 ★事前にシラバスやメールでその場合にどうたらいいのかの指示があれば助かります。講義中でも講師やTAがメールチェックできる場合は、トラブルの際すぐに連絡できる連絡先を共有していただければ心強いです。また、授業によっては受講者の許可を得た上で、Zoomを録画している場合もあります。これは、何らかの理由で出席が叶わなかった受講者が、後から視聴できるようにするためです。

 2.3. 通常の教室の授業よりも疲れやすい。同じ内容でも、画面の限られた情報量から学ぼうとすると、より多くの集中力を要する。通常の教室では講師との距離があるが、オンラインでは雑音がない中で講師の表情やスライドを近くから見ることが可能であり、集中力が高まった。その分、疲れやすいと感じる。2コマ連続で授業を履修する時は、後半戦がかなり大変。

 ★可能なら2コマ連続で授業を履修することは避けた方が無難です。筆者は2コマ連続の授業を2つ履修していますが(どちらも20人前後、対話多め)、1つでは完全に休憩なし、もう1つでは10分×2回ほど休憩があります。前者では後半でかなり疲れ、後半の集中力が切れやすいです。後者の方では最後まで集中力が維持され、よく考えて議論に参加できているように感じます。1コマの場合でも、特に講義型の場合は集中力が切れやすくなると思うので、休憩の導入や授業に変化をもたせていただければ嬉しいです。

 2.4. 資料共有が大変。通常の授業であれば印刷したものを配布するような資料ですが、オンラインの場合これをスムーズに行うのが大変。講師が配布するだけならシステム上(ITC-LMS)で十分だが、毎回異なる発表者が資料配布を行う必要がある場合は複雑になる。

 ★筆者が受講する授業では①ZOOMのチャットで送信(PDFしか送れない?受け取れない人か毎回一定数いる) ②前日までに講師に提出、その後講師から全員にメールで共有 ③メールアドレスをお互い公開し、資料をメーリングリストに送信 ④Google Driveにその授業のフォルダを作成し、受講者で共有、などを行なってます。筆者が受講者として便利だと感じる順は④→③→②→①。各自、自分のGoogle Driveにアップし、共有リンクをチャットで送るのでもいいと思います。

3. 授業形態ごとの課題と解決策&リクエスト

 3.1. 完全オンデマンド型授業(講義)

 必修など受講者が多い講義は、Zoomを用いたライブ授業ではなく、システム(ITC-LMS)にアップされた動画を視聴する形式になっている。毎週予定された時刻に動画(または音声+スライド)がアップされ、受講者は各自好きなタイミングで学習ができる。A4で1枚程度などのコメントシートを提出し、これを元に視聴確認及び評価が行われる。

 3.1.1. わからない点があっても、講師や受講者に質問がしにくい。オンラインシステムで質問ができる場合はそれを活用するが、回答を得られるまで時間がかかる。受講者同士がもともと繋がっている場合はLINEなどで連絡ができるが、特に新入生の場合はそのような繋がりがない場合が多い。

 ★筆者の場合、必修授業に関しては研究室の同期に相談ができる関係性にあります。また、研究科のSlackが活発に動いているので、受講方法や内容についても質問がしやすい環境があります。Slackがない場合は、学校のシステム内の掲示板や、Facebookグループで受講者のグループで受講者同士が遠慮せずやり取りができる仕組みがあれば便利です。

 3.1.2. 音声+スライドの場合、どのタイミングでスライドを進めるべきなのかわからない。特にスライド枚数が多いと迷子になってしまう

 ★毎回「次のスライドです」との指示か、「ピー」などの音でスライドをめくるサインを出していただいても助かります。

 3.1.3. 動画でスライドを操作している場合、スライドを戻して確認することが困難。復習の際やコメントシートは内容を思い出しながら記入したいが、動画だけだと特定の箇所を再度見つけるのに時間がかかる。

 ★動画と同じスライドをPDFでアップしていただけると、とてもありがたいです。

 3.1.4. スライドや板書のない動画、音声だと、かなりユニークなものでないと、飽きる。視覚的変化がないと教室で受講するとき以上に、集中力がきれやすく、内容が抜けてしまう。

 ★スライドの中にムービーが入っていたり、アニメーションがあるものは惹きつけられました。スライドのご準備が難しい場合でも画面上で本や資料を見せたり、ボードに書いたりしていただけると嬉しいです。

 3.1.5. 受講するのを忘れる(!?)これは受講者がしっかり確認して受講+コメント提出するべきなのですが、「いつ受講してもいいから」と後回しにしがちです(特に筆者の場合は)。受講者の皆さん、忘れないように受講する曜日や時間を決めてしまいましょう。(私は決めましたが、守れていません…。)

 3.2. 大人数Zoom授業(講義)

 50人以上の大人数で、主に講師のみが発現する講義型の授業。50人以下でも講義中心の授業はここに当てはまる。基本的には講師はビデオオン、受講者はビデオオフ。画面共有を行い、表示されるスライドに沿って講義が行われる。途中で、アンケート機能を使ったり、チャット欄で質問を受け付けたりしながら、多少コミュニケーションが行われることもある。

 3.2.1. 自分がクラスの一員であると感じにくく、学習意欲が停滞しやすい。これは非常に重要な点で、もともと積極的な受講者を除いては、オンデマンドと変わらない授業となってしまう。さらに、ビデオオフだと「講師に見られていない」との意識から、気を抜いてしまいやすい。

 ★アンケート機能活用、ブレイクルームで発言できる環境を作る、リアクションやチャット機能をできるだけ活用してもらう(これらを受講者が活用するには、そのような文化づくりが必要です。初回授業で使うタイミングやルールの共有、講師もこれらを活用、など)、受講者からのコメントシートを授業内で引用、などが実際に有効だと感じました。

 さらに具体的な対策方法の提案は以前Twitterでつぶやきました。(連ツイなので、続きはリンク先からご覧ください)

 3.2.2. 質問をしてもいいタイミングがわからない。ライブで行う大きなメリットの1つは、講義を聞きながらでた質問を、そのタイミングで発信できること。しかし、質問する際のルール設定をしていない授業においては、自発的にチャットに質問を入力することはとても勇気が必要となる。(講師がチャットを見ておらず、スルーされると悲しい。)

 ★質問のルールを講師が決めて、授業初めに共有してもらえると助かります。気づいたことがあればいつでもチャットに入力していいのか、質問タイムに入力するべきなのか、手を挙げるべきなのか、それらの質問はどのタイミングで回答してもらえるのか、など。さらに、受講者同士のやりとりをチャット上で行うことを推進する場合は、それも一言伝えていただけると、活用しやすくなります。受講者同士で回答できるものがあれば、講師が回答する時間が削減できます。

 *以下はオンデマンド授業の課題とも重なる点もあります。

 3.2.3. 講師が画面共有でスライドを見せる場合、受講者は見逃したところや確認し直したいスライドに戻れない。筆者のように、普段パソコンの画面でメモを取る受講者もいる。その際、画面共有のスライドと、メモを取るようのファイルの切り替えが必要で、一部見逃してしまう場合がある。また、途中から参加する受講者もいる。

 ★PDF化して資料を受講者に(可能なら前日までに)共有していただければ助かります。

 3.2.4. スライドを活用しない講義は集中力がきれやすい。教室で講義を行う場合は、講師のジェスチャーや表情、目線の移動などで受講者の意識を惹きつけやすい。教室内を歩き回って、必要に応じて指名して意見を聞くことも安易。しかし、Zoomでは単調に話すだけになりやすく、受講者の集中力も低減しやすくなってしまう。

 ★画面共有で<ホワイトボード機能で板書、パワーポイントのスライドを共有、ワードの資料を共有>などは視覚情報として非常に効果的でした。ホワイトボート機能はその場で内容が決まっていく場合は有効ですが、事前に講義の内容が決まっている場合はスライドの共有の方が時間の効率化に繋がります。ワード資料の共有の場合は、画面上に出てくる文字量が多くなりがちなので、「今どこを追えばいいのか」が明確になるような工夫があれば助かります。

 3.3. 少人数Zoom授業(対話・議論)

 議論の多い授業で、基本的には受講者は30人以下のことが多いです。講師と受講者共に、全員ビデオオン。ブレイクアウトルームや、全体での対話や議論が頻繁にあり、講師がファシリテーターとしての役割を担っている。各自が担当日に研究計画を発表するゼミや、指定の図書の輪読を行う授業など、全員に発表の機会がある授業が多いです。

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 3.3.1. 全体でのディスカッションでは、発話タイミングが難しい。感覚としては、4人以上いる空間では発話のタイミングを強く意識するようになる、8人以上で発話してもいいのか不安を感じることがある。講師から「ではみなさん、これについてどう思いますか」などと投げられても、なかなか発言者がいない場面もあった。その理由として、発話のタイミングが他の人とかぶる心配、発話をしてもいいと感じるための情報(アイコンタクト、挙手)が少ない、などが挙げられる。

 ★うまくいっている授業では15-20名程度でも、ほぼ全員が積極的に議論に参加しています。この授業では、「手を挙げる」機能を使って講師が指名、関連することや質問に対する反応は手を挙げずに回答してもいい、1-3文程度ですむコメントはチャット機能で共有、話題に関連するリンクなどもチャット機能で共有、などが行われています。これが実現しているのは、授業の初めに講師からルール説明があったおかげです。

 3.3.2 慣れるまでは、教室での発話よりも緊張する。教室では聞いている側も無意識に相槌を打ったり、目線を向けたりするため、発表者は雰囲気を見ながら話を深めたり、話し方に工夫をしたりすることが可能である。オンラインでは目があうこともなく、他の人が画面上で何を見ているのかわからないため、通常よりも緊張する。

 ★リアクション機能やチャットの活用や、画面上でも相槌を打つなど「聞いてるサイン」を出すことを促していただけると、安心して発表できると思います。また、慣れるために、発表よりも前の段階で、自己紹介など少しでも全員の前で発話する機会が設けられるとベストだと思います。

 3.3.3. ブレイクアウトルームで議論するだけでは不十分。全員に考えさせ、発話させるには最大4-5人のブレイクアウトルームに分けることが効果的だった。講師はブレイクアウトルームを行き来し、議論の内容を聞いたり、質問に答えたりすることが可能。しかし、教室と違い、一度に1つのグループの雰囲気や内容しか把握できないため、議論にズレが生じている場合でも軌道修正しにくい。受講者も、その議論であっているのかどうかわからないことがある。なお、ブレイクアウトルーム中は講師がいないことが多く、質問ができない。

 ★ブレイクアウトルームで議論を行う際、それぞれホワイトボード機能や別ファイルに議事録を取り、全員の授業に戻った際に各グループの代表者が内容を発表しています。不明点、質問がある場合もその時点で共有できるので、ズレが生じていた場合はわからないことがあった場合でも、このタイミングで解決しています。

 なお、ホワイトボードはブレイクアウトルームから退出するタイミングで消えてしまいます。全体に後から共有する場合も、議事録をメモとして参照しながら口頭のみで発表する場合も、スクリーンショットを撮っておくことが必須です。ワードなどにメモした方が、消えるリスクを避けられます。

 3.3.4. ミュートのオンオフの切り替えを忘れやすい。講師が、受講者全員を強制ミュートにすることは設定で可能です。しかし、発話者が頻繁に入れ替わる場合や、出席を口頭でとる場合などは、各自ミュートの切り替えを行う必要がある。発話者以外がミュートにするのを忘れていると、数秒でも授業の妨げとなる。

 ★設定でスペースキーを長押ししている間だけミュート解除することが可能です。筆者はこの機能を発見してから、ミュート解除を忘れることがなくなりました。発話者がなんども入れ替わる授業においては、冒頭にこの設定を受講者に知らせるだけでも、状況は改善すると思います。

4. その他

 4.1 図書館が閉まっており、アクセスできる資料が限られている。発表やレポート提出をするためにはリサーチが必要だが、多くの図書館は利用ができない。また、アルバイトが継続できている学生も少なく、オンライン授業を受けるための機材に加えて、さらに図書を購入することが負担になる可能性も高い。

 ★著作権の侵害にならない範囲/手段で参考図書を共有、オンラインでの検索方法の紹介(中高や学部生の場合は特に)、ネットリテラシーの教育、などはこれまで以上に大事になってくると思います。

 4.2 目が疲れやすい、肩こりになりやすい。

 ★ブルーライトカットのメガネで、目の疲れはだいぶ改善します。私も使うようになりました。ノートパソコンで授業を受ける場合は特に肩こりになりやすいので、本の山の上にパソコンを乗せて受講しています(できるだけ下を向かず、まっすぐ良い姿勢で受けられるように)。


 最後まで読んでくださり、ありがとうございます。まだこれから気づく点などあると思いますが、何かあればこの記事の最後に追記していきたいと思います。

 多くの方に届くよう願っておりますので、全て無料公開とさせていただきました。参考になった点、修正すべき点、その他ご指摘などあれば、ぜひシェアやコメントをいただけければ幸いです。

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株式会社Culmony 代表取締役。東京大学大学院 学際情報学府 山内祐平研究室 修士課程。 専門は児童の異文化間教育です。 チェコ生まれ、日本(大阪)・ハンガリー・ドイツ育ち。 2014年関西学院千里国際高等部 卒業。2020年早稲田大学国際教養学部 卒業。