『土下座して謝った？渡辺さんに何が？』

『渡辺さん、泣きながら辞めるって言ってます。
　だって、土下座させられたんですよ。
　大山さんはフォローしてくれる人には
　優しいけれど、
　他の人にはキツイんです。
　私だってイジメられましたから。』

大阪なんばの駅の中、
絵に描いたような、いわゆる“純喫茶”。

え？
渡辺さんに何があったの？

隣の席で話しているのは…
察するに、
某大手有名デパートに入っているカフェの
マネージャーのような女性と、
カフェを経営している会社の部長のような男性。

えんえんと、
マネージャーさんらしき人からの訴えを
部長さんらしき人が聞いている。

なんと、なんと。
驚くのは…

デパートの名前から人の名前から
全部、実名報道…(^◇^;)
大丈夫かな？

それだけ差し迫っているのだろうか。

沢山の人が働いていると
人間関係は本当に大変だ。

サラリーマン時代を思い出す。
アナウンス部、番組のスタッフ…

私も
マネージャーさんの立場にも、
部長さんの立場にもなったことがある。

沢山の人に相談して
最善を尽くした。

見につまされるが、
フリーになった今は、
なんとなく懐かしい。

部長さんになだめすかされて
マネージャーさんが少し落ち着いて
純喫茶を出て行った。

すれ違うようにして次の人が来る。
「大変だねぇ、お母さん亡くなったんだって。」
『そうなんです。
　前の日まで元気だったんで
　予想だにしていなかったんですけど。』

なんと！
オープンな場所で
従業員の面接をしているようだ。

皆さん、人生色々。
まるでオムニバスの映画を観ているよう。

ぴぴぴ…ぴぴぴ…

まだまだ
皆さんの人生を垣間見ていたかったけれど
私の携帯のアラームが鳴った。

司会の仕事の打合せ時間が来たのだ。

『誰が聞いているか分からないから、
　デパートの名前とカフェの名前は
　言わない方が良いですよ。』
と、教えてあげようかと思ったが、
またまた
渡辺さんが泣きながら辞める話になっている。

込み入った話をしているので、
私が声をかけるのは遠慮して…
静かに“純喫茶”をあとにした。