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いじめ防止週間(9/25-9/29)が始まります

こんにちは!先日、勤務先から9/25から始まるいじめ防止週間のマテリアルが共有されました。いじめは最悪の場合、児童生徒の不登校へとつながります。そして、いじめなどによって負った心の傷は生涯を通してその人の人生に影響を及ぼし、その傷を癒すにはとても長い時間がかかる。と言われることもあります。オランダにおけるいじめの実態はどのようなものなのか、まとめてみました。

初等教育におけるいじめの実態

"Nederlands Jeugdinstituut"が発表した2020-2021年の調査結果によると、特別支援教育を含めた小4〜小6の児童生徒の11%が、時々または頻繁にいじめに遭っていると報告しています。この11%の児童生徒のうち、3%は非常に頻繁にいじめられていると回答し、8%は時々いじめられていると回答しています。初等教育における2014年〜2016年のいじめの被害件数は14%から11%に減少し、2018年からその数値は増減することなく安定しています。

被害者のうちの57%は個人的にいじめを受けており、その内容としては、叱怒鳴られたり、笑われたり、押されたり、殴られたりすることなどが挙げられています。また、被害者のうちの10%は、インターネットやスマホを通して、メッセージや写真などによるオンラインいじめに関係したものだと報告しています。

中等教育(中高)におけるいじめの実態

中等教育においても、いじめを経験したことのある生徒の割合は、2018年から変化していません。2018年と2021年の両方では、生徒の5%が頻繁に、またはかなり頻繁にいじめられていると報告しています。この頻度は、少なくとも月に1回、毎週、または毎日いじめを受けていることを指し、そのうち7% は月に1回未満だと報告しています。 2018年と比較すると、2021年のいじめの被害件数は増減することなく安定しています。

どのようないじめの種類があるのか

どちらの教育においても、(非常に)頻繁にいじめられる生徒の中で、"言葉によるいじめ"が37%と、最も頻繁に発生しており、いじめを経験している生徒は、他人から怒鳴られたり、笑われたり、侮辱されたり、噂話をされています。また、いじめられている生徒のうち5 人に1 人が仲間外れにされたり、無視されたり、アクティビティなどに参加することを拒否されたりしています。 "デジタルいじめ"と呼ばれるタイプのいじめ(WhatsApp、Instagram、Snapchat などを介した写真、テキスト、ビデオなどによるいじめ)は、2018年に20%だったのが、2021年の22%へと2%増加しています。

"いじめ"は生徒自身の経験判断によるものであるため、定義は難しい

この報告では、"いじめ"の定義は"いじめられたと感じる人"による判断によるため、研究で結果を比較することは難しいと書かれています。例えば、友達から怒鳴られることを「いじめだ!」と感じる児童生徒もいれば、意に介さず「遊びの延長」だと捉える生徒もいるということです。

また、ここで最も重要になってくるのは、起きた事象に対して「それをいじめだと感じるかそうでないかはあなたが判断して良い」と、当該児童生徒が理解していることです。「怒鳴ることはいじめですが、あなたはいじめを経験したことがありますか?」と尋ねるのではないということです。

「明らかないじめ」を「いじめ」と判断できるために

では極端な話、友達から髪を引っ張られることを「私は大丈夫」と判断してしまう児童生徒がいて、それは本当にいじめではないのでしょうか?本人が「これはいじめではない」と判断してしまうことを社会が、学校が、教室が、友人たちが「あなたが判断して良いんだよ」と放置して良いのかということです。

(客観的に見て)明らかに当該生徒が被害を受けているように見えるにも関わらず、本人がその事象に対して誤った認識(と取れるような)判断をしてしまうためを回避するために、日々の教育はあります。

そして、その回避を促すための教育が性教育だったり、市民教育だったり、日々行われる教育活動の根本に何があるかだとオランダの先生たちは考えています。つまり、いじめ防止週間や性教育週間などは、"あえて"その話題を取り上げて開眼するための機会にとどまるのであって、本質は日常的な日々の教育活動にあるという考え方です。

いじめ週間のマテリアル

では、ここでいじめ週間で活用されるマテリアルを少し紹介します!

▶️小4〜小6までの教材「"冗談(ジョーク)"を言うことも時にはオッケー!」
ジョークはグループの雰囲気をするのに時に役立ちます。一緒に笑って楽しむことで、繋がりやそのグループへの所属意識も生まれます。でも、ジョークは必ずしも面白いものとは限らず、誰かを傷つけることもあります。ジョークカードを使用することで、"ジョーク"について生徒と話し合うことができます。これらは2022年に開発されたものですが、1年中使うことができます。

ジョークはとても楽しいものですが、クラスでは1人以上の生徒にとって全く面白くないことが笑いになることがあります。そのジョークは時に彼らを傷つけるのです。ジョークを言った本人が誰かを傷つけるために言われたものなのかどうか…言った本人や周囲の人たちもそれに気づかないこともあります。

だって、クラス全員が大笑いをしている時に、どうやってそれが誰かにとって面白くないということを明らかにできるのでしょう?このカードを使うことによって、ジョークとはどんなものなのか、ジョークを言うことについてどう思うか、お互いに意見を言い合ってみることができます。

このアクティビティを楽しく続けるためには、クラスがどのように取り組むかを話し合いましょう。このカードアクティビティは児童生徒が感情やニーズを言葉で表現することを勧めています。彼らの望んでいることや、境界線はどこにあるのかを言葉で表現していくのです。誰もが安心して楽しめる雰囲気で意見を言い合えることが重要です。

質問に答える中で、子どもたちは自分の内側にあること、個人的なことについて話をします。よって、子どもたちにとってその場が安心できる場所であり、発言ができる安全な場所であることがとても重要です。

アクティビティカードの質問に答える時、児童生徒にそのような環境を与えた上で、生徒は選んだカードに回答したくない時にはパスしても良いし、そのカードを他の生徒に渡しても良いでしょう。クラスの現状に応じて、教師はカードのトピックを厳選したり、その数を減らしたりすることも可能です。

カードは切り取って、瓶などに入れ、生徒がランダムに取り出せるようにします。お互いにリスペクトをもってアクティビティが行えるにはどうしたら良いか、アクティビティを行う前にクラスのルールを確認したり、新しく合意形成をしてください。最後にもう一度、このカードアクティビティには「答えない」という選択肢が児童生徒にあることを忘れないようにしてください。

<カードの内容>
「冗談を言うことが意地悪になり得る?なるとしたら何故?ならないとしたら何故?」
「冗談やジョークはオンラインでよく使われてると感じる?それらはいつも面白い?」
「実際には冗談じゃないことをジョークのように言ったことがある?何故そんなことをしてしまうのだろう?」
「あなたの言う冗談に対して、誰かが面白くないと思ったとして、それはどうやってわかる?それがわかった時、あたなはどうする?」
「最後にクラス全体で爆笑したのはいつだった?」
「誰かがあなたが嫌がるようなからかい方をしてきたことはある?その時、あなたはどうしたの?」
「みんなが笑っているとしたらその冗談は面白い?それってどんな時?」
「バカみたいなジョークを1つ言ってみて」
「ジョークはいつだって飛ばしていい?それってどういうこと?」
「ジョークを飛ばすこと自体が面白いことではない時ってどんな時?」
「どんな時だったら冗談は面白いの?」
「テーマ: もし誰かが自分自身のことについて冗談めかして話していたら、あなたもそれに乗っかって良い」
「みんな同じものが好きだって思う?それとも違うと思う?」
「あなたが笑えないようなことに関して先生が冗談を言ったことがある?そういう時、あなたは何をどう伝えたら良いんだろう?」
「自分自身に罪悪感を感じながら言う時の冗談ってあなたを幸せにするのかな?あなたはどう思う?」

▶️小4〜小6までの教材「いじめについて」
クラスの子どもたちとみんなが安心安全だと感じることができるようなポジティブなクラスの雰囲気作りについて話し合ってみましょう!

いじめに関するアクティビティカードを使って、1年間を通して児童生徒たちといじめについて話し合いができます。例えば、年度初めの数週間は「ゴールデンウィーク」と呼ばれ、クラスの雰囲気づくりをするのにとても大切な時期だと認識されていますが、この時期に多くの学校やクラスでは自分たちにとって大切なクラスのルールや合意を作り出します。冬休み休暇の後は「シルバーウィーク」と呼ばれ、自分たちが合意したルールなどを再度振り返る時期として認識されています。

どの生徒もクラスでの居心地の良さを求めています。しかし、いじめやからかいは多くの教室で起きている問題です。いじめというのはその被害を受ける当事者に直接的な影響があるだけではなく、クラス全体にも影響を及ぼします。だからこそ、クラス全体が一緒に安心安全なクラスの雰囲気を作り出せるよう努めることが重要なのです。お互いがクラスの中でどのように扱われたいか、どのように接して欲しいかというクラスのアグリーメント(合意)を共に作ることは安心安全なクラス環境を作り出すのに役立ちます。そのようにして、自分たちのクラスの価値観を形成し、ポジティブな関わりの溢れるクラスをつくっていくことができます。

アクティビティカードを通して、児童生徒は「安心安全な教室とは」ということについて話し合うことができます。そのような機会は、児童生徒がお互いにどのように接したら良いのかということを考えるチャンスを与えると同時に、自分たちがそういったクラスを作るためにどのような行動を取れば良いのかということを具体的に考える機会も与えます。カードは児童生徒の頭の中にある考えや感情、一人ひとりが求めていることを表現するのに役立ち、オープンな雰囲気を作る手助けにもなります。このカードのアクティビティでは、答えたくない質問を手にした場合、別のカードを選んだり、「パス」することもできます。教師はクラスの雰囲気や年齢、その時々に費やせる時間などに応じて、予めカードを厳選したりすることもできます。

アクティビティをする際は、カードを切って、瓶などに入れ、児童生徒がランダムにそこからカードを選べるようにすると良いでしょう。アクティビティを始める前には、前もってどのような話し方や接し方が良いかなどを話し合ったり、クラスで予め決めたルールなどを再確認すると良いかもしれません。

このアクティビティでは、答えたくない質問に対して「パス」が選択できるということを忘れないでください。他にも、生徒が選んだカードの質問に対して答えたい児童生徒を募るのも良いかもしれません。

<カードの内容>
「教室での心地よさを感じるためには、あなたは何が必要だと思う?」
「見知らぬ人が教室に入ってきました。その人が受け取るクラスの印象はどんなものだと思う?」
「教室で楽しい時間を過ごすために、あなたが大切にしておきたいことは?」
「何故いじめっ子はいじめてしまうのだろう?」
「もし願いが1つ叶うとしたら、教室の雰囲気をよりより良くするためにあなたは何を願う?」
「クラスのアグリーメントで忘れ去られやすいものは何?そのアグリーメントをみんなが忘れないためにするには何をしたら良いと思う?」
「誰かに優しくしたいと思った時、あなたはどんな行動を取る?」
「(スマホ)にクラスのグループはある?そのグループは楽しい?もっと良くできるとしたら?」
「お互いに優しくすることにいつも賛成しないといけないと思う?」
「もし誰かがいじめられているのを見かけたら、助けるために何ができる?」
「教室の全員が自分らしくいられるために、全員で一緒にどんなことをすれば良いと思う?」
「2人のクラスメイトにこのクラスで経験した最高の瞬間を聞いてみて」
「あなたの右側にいる人に、その人の素敵なところを伝えてあげて」
「もしあなたがいじめと対峙しているとしたら、学校でどんなことをする?」
「もし自分がこのクラスの担任だったら、どんな風にしていじめを止める?」
「クラスのアグリーメントであなたが最も重要だと思うものは何?そしてそう思うのは何故?」
「どんな時に誰かのことを好きだなって思う?」
「このクラスの1番好きな部分を教えて。1番可笑しいところも教えて?」
「いじめが起きた時に、あなた自身とクラスがその事実を表現する方法を2つ教えて?」
「いじめのないクラスを作るとなったとき、誰がそれを作るの?」
「誰かの行為や行いが嫌だなと思った時、どんな風にそれを伝える?」
「クラスで人と違ったことを行ったり、したりして、"違い"を表現することをしてる?」
「クラスで3人、ペットを飼っている人を言ってみて」
「お題: 冗談を受け入れられるかどうかは、あなた自身が決めて良い」

職場や家族で試してみても面白いかも?

色々突っ込んだ質問がありますが、学校に限らず、職場や家族でやってみても面白いトピックも多いなと感じました。興味がある方は、いじめ防止週間のサイトも訪れてみてください!次回は、性的な質問についても紹介したいと思います!









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