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オランダの学校教育の特徴(13) <オランダの学制>

2007年と2013年の2回、ユニセフの調査で「世界一子どもが幸せな国」とされたオランダ。

移住のことを考え始めた当初、私は大阪府立の高等学校で英語の教諭として働いていました。教員生活を通して、3年生の授業を受け持つことが圧倒的に多かった私ですが、いつも授業の中で、
「他人のためではなく、自分のために生きなさい」
と言い続けてきました。

それは「自己中心的に生きろ」という意味ではなく、
「世間体のためではなく、自分の興味関心に応じた人生を生きなさい」
という意味です。

しかし多くの場合、高校生は、
「自分の興味関心がわかりません」と答えます。

時に彼らは、ダンスが好き、読書が好き、水泳が好き、テニスが好き...など、彼らは目を輝かせて好きなことを教えてくれます。しかし、
「でも、そんなんじゃ将来食べていけないでしょう?」
と、周囲の大人たちに言われ、選択肢を失い続けるのです。

私は、彼らと話をする中で、
「自分の興味関心がわからない」に対しても、
「好きなものはあるけれど、そんなもので将来食べていけるかわからない」に対しても、
社会がもっと寛容であって欲しい。と思ってきました。

自分の好きなことを見つけ、生き生きと生きていくために「時間をかけることを良しとしてあげる世の中」であって欲しいと思っていました。

つまり、「ゆっくり選ぶこと」も「やり直しがきく」ということも認められるような、安心のある教育構造であって欲しい。
そんな風に思ってきたのです。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、オランダの学制は一言で言うと、「とても複雑」です。

その複雑さは、これまでの記事でも説明してきた通り、教育の自由に発端があると言えます。自立した人間になるために用意された道が何通りもあるのです。

オランダの学校教育の特徴①<学校設立の背景>
https://note.com/naom_27/n/nf6f8badafb4c
オランダの学校教育の特徴⑤<転校が認められる>
https://note.com/naom_27/n/nb85fb6c492ad
オランダの学校教育の特徴⑦<飛び級や留年は自然なこと>
https://note.com/naom_27/n/naad6251d4e74

自由である。ということは柔軟性がある。ということです。
また、教育の柔軟性を担保するためには制度にも柔軟性が必要です。

私自身、オランダは「教育が自由であること」を譲らない国だと思います。
そして、その自由のために柔軟性のある教育制度を維持しようとしています。

"オランダ 学制"
と調べると、様々なチャートが出てきます。

私の中で、最もわかりやすく説明をされていると感じたチャートがこれです。

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引用元:https://chari-kamo.com/education/dutch-edu-flowchart/

矢印の数をご覧ください...
複雑過ぎて、何が何だかわかりません。←

要約すれば、「何にでもなれる!」です。笑

日本でも、努力さえすれば何にでもなれます。やり直しはききます。
しかし「いつだってやり直しがきく」という言葉を、どれほどの人が信じているでしょうか。
それは本人の覚悟の問題?いや、制度的な問題も大きいのではないでしょうか?

オランダの子どもたちは、12歳(小学6年生)で、CITOテストという全国統一模試を受験します。これはほぼ例外なく、受けなければいけないテストです。

つまり、オランダの子どもたちは12歳でいわゆる「受験」を迎えます。
そして、基本的にはその結果に基づいて、

・VWO
・HAVO
・VMBO

の3種類から進学先を選ぶことになります。

これら3種類の進学先を「レベル別」と呼ぶのは少し違うかもしれません。
あえて言うならば「自分の適性に合った進学先」です。

子どもたちはCITOテストの結果に合わせ、進学先を学校や保護者と相談して決めますが、彼ら自身が選ぶ進学先に対して、
「あなたは努力が及ばなかったから、ここに行くのね」
というような言い方をする教師はほとんどいない。と聞いています。

仮に、教師側がそのようなことを言うのであれば、子どもたちはその言葉から、
「私は劣っているから、この学校に行くのだ」
と認識するようになってしまうのではないでしょうか。

大学へ進学し、研究者になることも、
職業訓練校へ進学し、工場で働く作業員になることも、
あなたの適性に合っているならそれで良い。
社会には様々な職業が必要で、それぞれが大切な役割を担っている。
だから、あなたはあなたが輝ける場所で輝くのだ。

オランダの学制は私にはそんな風に見えます。

しかしながら、オランダにも格差はあります。
実際には理想ばかりではうまくいかないことも事実でしょう。

しかし、制度に理想がなければ、その理想にさえ届かない。
私はそんな風に感じています。
少なくとも、教育制度が子どもたち一人ひとりの生き方にカスタマイズしようとしなくては、子どもたちにとって本当の意味での「良い教育」は生まれないと思うのです。

オランダの学制には柔軟性がありすぎるため、まだまだ謎がたくさんあります。今度、実際にVWOで教師として働く方にお話を聞く機会があるので、その時にオランダの教育について聞いてみたいと思います。








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