校長からのメールに愛を感じるとき
こんにちは!前回、娘の小学校の体育の先生が辞めてしまうという記事を書きました。そして、教職員が自由に働く場所(学校)を選ぶことができる選択肢があるオランダでは、管理職のマネジメントの中に「教職員のwell-being」を考える要素が抜けている場合、結果的に良いチームを作ることは難しく、教職員が離れていってしまう…という点についても触れました。
私は今のところ、TAとして介入している日は週に1日です。来年度に向けて日数を増やさないかという段階に入っていますが、出来れば今のままを維持したいなと思っています。今回は、週に1日しかTAを務めていない状況でありながら、私がチームの一員だと感じさせてくれるよう、校長が配慮してくれていることについて書きたいと思います。
「今の私」について興味を持って聞いてくれたと感じた面談
それは遡ること、去年の夏。私をTAとして迎え入れるかどうかの面談を校長がしてくれた時のことでした。校長のLianne(仮名)はまず最初に自分がどういった人間かということについてたくさん話をしてくれました。これまでの経歴も含めて、何故今自分がこの学校の校長を務めているのか。バイリンガルの学校としてどんなことを大切にしているのか。家族のことなんかもオープンに話してくれました。その時、たった数十分の時間の中で、彼女が心をオープンにして話してくれることで、「この人と一緒に働きたいな」と思わせてくれたように記憶しています。
そして彼女は私の過去よりも、今の私が教育のどんなことに関心があるのか、そして私が大切にしている子どもへのアプローチにはどんなものがあるのか…などなど、「今の私」がどんな人間なのかについて色んな質問を投げかけてくれました。決して圧迫面談という感じではなく、ごく自然に「あなたという人について教えて」という感じでした。
もちろん私はこの学校に正規教諭として雇われる訳ではありません。よって「本当の面接や面談」とは違ったでしょう。それでも校長という立場として「どうでも良い人」に子どもたちの教育を預けることができないのも事実です。面談は和やかで「私」という人間にフォーカスしてくれるところに居心地の良さを感じました。
メッセージやプレゼントにはいつも名前を
「先生の日」と呼ばれる日にはメッセージ付きのカードや紅茶をもらったり、シンタクラースの時は私の名前のイニシャルである"N"のチョコにメッセージを添えてくれたり。年末年始にはクリスマスに飾るオーナメントをプレゼントとしてくれたり…
学校の予定ボードには、私が来る日のところに「菜央が来てくれる日」と書かれています。出勤簿には私の名前が用意され、至る所で「私はこのチームの一員なんだ」と感じさせてくれるのです。
「私(たち)はあなたをチームの一員として認識している」そんなメッセージが含まれる環境を先に用意されて嫌な気分になる人はいません。まず、両手を広げて「受け入れる」というところから始める。校長であるLianneはその大切さを深いところで理解しているように思います。
そして、これは彼女が校長だからこそできること。管理職という立場だからこそできることで、彼女でなければできないことなのだということがわかってきました。
些細なことでもメッセージを送ることを忘れない
Lianneと同様に別の校長を務めるMarine(仮名)は私が一緒に英語の授業をするSanja(仮名)が担任をする学校の校長です。先日、Sanjaが別の学校で仕事をしなくてはならず、私が単独で英語の授業をする日がありました。その時、Marineはすかさず私にメッセージを送ってくれました。
「Sanjaが休まなくてはいけなくなってごめんね!菜央なら大丈夫とSanjaが言ってくれたけれど、負担だったらいつでも言ってください。本当にありがとう!」
こうやって「ありがとう」というメッセージを忘れない校長たち。そしてその姿勢こそが私を含め、教職員が「私たちは守られている」「私たちのことを考えてくれている」と感じる理由なのだと感じました。彼女たちは「あなたのことを見ているよ!」というメッセージを決して忘れないのです。
毎週金曜日に送られてくるLianneからのメール
毎週金曜日になると、校長であるLianneから今週の感謝と、来週の予定の確認が送られてきます。先週はちょうど通知表の処理に忙しかった先生たち。そこには、
「通常授業に加えてエクストラな仕事…皆さん、いつも本当にありがとう!大変なことがあれば分けあって、支え合って前へ進んでいきましょう!最終確認がきちんとなされるよう、出来るだけ早めに入力を終えてくれていると助かります。これも誰かの仕事を大変にしないために必要なことですね。みんなで乗り切りましょう!本当にいつもありがとう!」
というようなメッセージがありました。
そして「来週の予定の確認です!」と、月曜日から金曜日までの予定が示され、最後に「とても良い週末を過ごしてください!また月曜日にみんなに会えるのを楽しみにしています!」とありました。
彼女からのメッセージは「たくさんの感謝」と「たくさんの愛」に溢れています。「いつもありがとう」「みんなよくやってくれています!」と、先に伝えることは、先に両手を広げて立っていること。そして、何か辛いことがあればそこに飛び込むことができるという風に私は理解しています。
言葉だけではなく、行動も
Lianneを見ていると、こういったメッセージなどはもちろん、校内で通り過ぎる先生一人ひとりに声をかけ、コミュニケーションを大切にしている様子もうかがえます。
「教職員とはたくさん話すんです。コミュニケーションはとっても大切。それが私の仕事だから」
彼女がそう話す通り、彼女はいつも教職員に感謝を忘れず、気を配っているのです。それにはきっと大変なこともあるでしょう。気疲れすることもあるでしょう。それでも彼女は管理職としてできること、すべきこととは何かをちゃんと理解し、実直にそれを繰り返しているように見えます。
「あなたのことを気にかけている」そんなメッセージをくれる校長と一緒に働いていると、まず最初に「安心」を差し出されているような気持ちになります。見守られているから頑張れる。何かあったら相談しようと思える存在がいつもそこにある。
良いリーダーとはどんなリーダーか。Lianneはそれを行動で示してくれているような気がしています。そして、私もそれに応えたい。そんな気持ちが芽生えてくるのかもしれません。
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