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わるぷるぎす外伝アンドー編集者の昼食


俺は神保町にあるB級の出版社の
マンガ部門に配属されて2年半の25歳
アンドーマサハル。

今日は先輩の編集者に
歳上の女性を口説く方法を相談しに
神保町の古書センター内にある
カレー屋ボンデにやってきた。

「えびす堂の仁絵さん?落としたいの?」

「はい!」

「もう生理上がりそうじゃん、子ども作る気ないの?遊び?」
先輩が周りに女性がいないか確認しながら
ひっそり聞いてきた。

「コンプライアンス、オーバーキル」
悪戯っぽい笑いをする。

このカレー屋は周辺に出版社が乱立するので
同業者がいっぱいだ。

大体、この辺の店で
ランチしてる美人なのはSがつく二大出版社の
女性編集者と相場が決まってる。

「別に、、、子どもいらないすよ。
必要なのは毎日好きな人といる日常で、、、
子どもは出来たらそうなりますよ。
でも、、、子どもいなくても
好きな人と毎日いたいんす。」

アンドーは堰を切ったように話した。

「喋る時、唇をずっと見ていたいんです。
たまに見つめてくれる時は見逃したくないんです。
僕の命のある時間の限り。
唇や目、、、仕草を見ていたいんです。」

呆れた様子で聞いている。

「意外とセンチメンタルなんだな」

「センチメンタルてなんすか?
豆腐メンタルとかそう言う意味すか?」


アンドーの先輩ダブチが笑いながら
「センチが分かんねーか。センチメンタル〜ジャアニィー🎵」

「ならだな、、、歳上を落としたいのなら」

そう話しかけた時

6人で来ている男性達の席で
一人の男性が呻き声をあげだした。

「ぅうぼあっ、、も、、もう食べれません、、、」

「なんだよ根性ねーな。お前体力しか取りえない
日本身体大学だろ?頭わりぃんだから
根性みせろよ。」

うめく若者の前には
沢山のジャガイモの皮がある。

ボンデはカレーを頼むと
ジャガイモが2個付いてくる。
6人で来ている男のテーブルには
12個のジャガイモが来たはず。

それを
一番若い男に食べさせているゲームをしていた。

泣きながらジャガイモ食べる若手をよそに
先輩格の男が話す

「先代の愛人、タレントの美菜子だったじゃないすか?
あそこの事務所それがあるんで
偉そうなんだよな。
記事も書きづらいし、
なんか無いすか?
芸能人のスキャンダル
適当にでっちあげるんで訴えられない程度に。」

「あー、、、覚醒剤やってるて言ってたな
うちの雑誌のマンガ家のY達w」

「Y達て複数すか?うちの作家さんじゃ書けないすよ、ははははは」

「首相撃たれてさ、うちの重役の奥さんが
テロリストを様づけにしてただろ?
あれ受けたな。」

アンドー「、、、、」
アンドーの先輩ダブチ
「悪い方のS、、、ここら一帯の地主みたいなもん。ビルの経営だけでやっていけるから
あんな程度の低さなんだよ。」

「本を作る志がない。矜持がない。イキリインテリ共」

「あいつらは不動産屋がクリエイター面している集団だ。」

いつもの先輩と違う
吐き捨てるように

「俺は転職して編集者になったからな
あいつらの下請けやってた時もあったが、、、

何人も廃業に追い込まれてる。
俺が知ってるだけで片手じゃ済まない。」

アンドー
「うちの会社とは、、、偉く違いますね。」

ダブチ
「うちは小説とマンガ、ホビーの雑誌だけだから
必然的に大衆寄りにならないといけない

大衆的目線になるためには
あんなんじゃ駄目だろ。」

アンドー
「良い方のSと評判が雲泥ですね。」

ダブチ
「良い方のSだって民主的かどうかは
中の社員に聞かなきゃ分かんねー話だよ。
評判が良いSてのと
会社員にとって良いSてのは一致しない。」

確かに
誰に対しても、下請けに対しても
他の協業相手にも気を遣わなくていい
殿様商売している社員の居心地の方が
良いかも知れない。

「金持ってるから、頭下げなくていい。」
基本的な事だ。

みんなに配慮しているという事は
それだけ、神経を削がれる仕事かも知れない。

評判の良さは
中の社員の犠牲で成り立っている可能性だってある。

トヨタや、セブンイレブンは
客にも大概評判がいい。

でも、コンビニオーナーや社員は
疲弊している話が多い。
下請け会社の評判も高くはない。

古書センターの
カレー屋ボンデを出たすぐ先に
古本屋「蛭子堂」がある。

今日は仁絵さんがいない。

店番をしている
猫のソウルを撫でながら本を眺めている。
「そこそこの給料で、、、
幸せもそこそこだけど
ストレスもそこそこでそれでいいや。
平凡は金だっけ?
平凡は非凡?
なんで平凡は良いんだっけ?」
そんな事を考えていると

先程、ジャガイモを食べさせられる
イジメを受けていた編集者が
呪いを解説する本を手にしてた。

本のタイトルは
「ソロモンの指輪、72体の悪魔を使役する力」

目には憤怒の力がこもっていた。

次回
ワルプルギス・イブ
「ソロモンの審判」

二月下旬頃。

この作品はフィクションです。

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