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本当の恐れ、虚偽の恐れ

こんにちは。今日も元気でお過ごしでしょうか。

先日、友人の息子さんの悩み相談を受けました。新卒で会社に入り、自分の希望とは違う部署に一人だけ配属された。その部署である資格試験があり、その試験に落ちてしまって、自分はダメだと、それはもう、明日にでも会社を辞めんばかりに、大変落ち込んでいるというのです。

その理由を聞いてみました。まず、彼は、自分の希望とは違う部署に一人だけ配属された時に、自分が劣っているからに違いないと思いました。そして既に劣等感を抱えている時に試験に落ちてしまい、上司には次回は絶対に受かってくれと言われた。受からなかった自分は見込みがないと思われているのだ、受かった人たちは自分よりもずっと名高い大学に行っていて、絶対に追いつくはずがない。このままずっとこういう調子で行くと、しまいにはクビにされるかもしれない、自分は一体どうなるのだろうという不安にさいなまれる。自己否定感が次から次へと湧いてきて、俺ってなんて頭が悪いんだ、前にもこういう思いをしたことがあって、周りに認めてもらえなかった、きっとまたそうなるに違いないと思い込んでしまう。
 
こんな風に、不安が雪だるま方式に大きくなる現象を体験された方、多いのじゃないでしょうか。 こういう時って、絶望的な気持ちになりますよね。目の前が暗くなり、呼吸が浅くなり、自分の存在がスーっと消えていくような感じです。どこまで行っても抜け出せない迷路をぐるぐる回っていて、抜け出せない。 

何度も何度も襲ってくる不安やストレスは、自分の中に植えつけられた「恐れ」から派生しています。しかも、それは往往にして想像上の幻想、虚偽の恐れなのです。『恐れを癒す』を書いたリサ・ランキン医学博士は、「真実の恐れ」を生命の危機に晒された場合に起こる恐れ、それ以外を「虚偽の恐れ」と呼んでいます。
「真実の恐れ」は、ライオンに食べられそうになった時や、自動車事故、拳銃を頭に突きつけられるなど、本当に生命を守らなければならない状況で起こる恐れです。それに反して、「虚偽の恐れ」は、生命の危機が直接ないのに、「恐れ」のスイッチが入ってしまうものです。これは、日常生活での不安や悩み、ストレスという形をとって表れます。恐れが本当でも、虚偽でも、脳にとっては同じなので、「闘争か逃避か」というモードに突入します。体に備わっている自然のメカニズムが機能して、具体的には、こういうことが起こります。

大脳辺縁系の中にある扁桃体が、「恐れという感情」を感知→視床下部から副腎皮質刺激ホルモン放出因子が神経系に分泌→下垂体から、黄体刺激ホルモン, 成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモンが分泌→副腎からストレスホルモン、コルチゾルが放出。また、交感神経が活発になり、副腎からは、アドレナリンとノルアドレナリンが分泌されます。

実際、体にはどんな変化が起こるのでしょうか? 心拍数と血圧が上がり、呼吸が早まり、気管支が拡張し、もっと酸素を血液中に取り込もうとします。体温は落ち、鳥肌がたちます。消化や生殖機能は落ち、心臓や大きな筋肉、脳により多くの血液が送り込まれ、心臓の鼓動を早め、危険を回避するために、早く走れるように、早く考えられるようにと作用します。コルチゾルは免疫機能を抑圧し、炎症反応を軽減するので、体は、全てのメンテナンス機能を停止し、自然治癒のメカニズムをストップしてしまいます。死ぬかもしれない時に、体の貴重なエネルギーを病気を避けたり、治したりするのに使う必要はないからです。

原始社会では、「闘争か逃避か」というメカニズムが、本当の危険に犯された身を守るのに必要なメカニズムでした。しかし、現代社会では、「本当の恐れ」ではない「虚偽の恐れ」が慢性となっており、こうしたストレス反応が頻繁に起きると、体はそれに耐えられません。幻想である想像上の恐れで、自分を病気にしてしまうことも多々あるのです。



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