見出し画像

ロンドン土産の赤いジーンズ

今日も「文章講座」の課題をこなすために、スターバックスヘ。パニック障害を持つ私。電車に乗る予定がある日は、医師の勧めでカフェインがより少ない紅茶を頼む事が多い。

イングリッシュブレックファストティーを注文して、席へ移動。紅茶が熱すぎるので、ミルクを入れた瞬間、ロンドンで買った赤いリーバイスのジーンズを思い出した。

当時はバブル全盛期。大学三年生だった私は、夏休みに母に頼みこんで、イギリス短期語学留学の費用を出してもらった。私だけじゃなく、多くの学生が当時、短期留学していた。

私は、日本人が少ないということもあり、イギリス南西部カンタベリーに二週間留学した。クラスは英語のレベルが高く、ヨーロッパの学生中心。珍しい東洋人の私は一人浮いていた。

二週間で一回だけ、奇跡的に口をきいた男の子から、「イギリスのファッションや音楽が好きなら、カムデンタウンがいいよ、ロンドンへフィールドトリップ行ったらさ、一緒に行こう!」と誘われ、すっかり舞い上がった。

 フィールドトリップ当日、彼は約束の事などすっかり忘れて、私は一人であまり治安の良くないカムデンを訪れた。
当時は日本人も少なくて、売り子のインド系のおばさんに、
「スリに気を付けるのよ!」
と言われたり、イタリア系のウェートレスに
「ホリディ?」と声を掛けられたり、自分が珍しがら れて実に楽しかった。

彼とは帰りの待ち合わせ場所で会った。カムデンに行った事を告げると
「マジで行ったんだ!」
と、誘った事などすっかり忘れて驚いていた。この頃は外国人の適当さにまだ慣れていなかった。

思い出の赤いジーンズは後日、再び一人でカムデンを訪れ、買った。
当時は「試着室の底が抜けて地下に落ち、誘拐される」などという話が噂されていて、警戒しながら試着した。

帰国後、このジーンズにボーダーのシャツ、踵の高いブーツを履いて、大学に通った。
ロンドンで買ったお気に入りの服を着て、得意気にキャンパスを歩いていた私、地味な校風の学校では、浮いた存在だった。

 当時大好きだったスミスの音楽、赤いジーンズ、ミルクティー、これらに触れると、あの頃を思い出す。

カムデンタウンはあの頃のままか、そしてあの時、ちょっと好きだった彼は今、どうしているだろう。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?