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「鳥福」村山 茂さん、4月14日の答。

―潔く休む―

3年前に上梓した『昭和の店に惹かれる理由』(ミシマ社)。第5章にご登場いただいた焼鳥「鳥福」は昭和7年、屋台から創業し、今年で88年を迎える。戦後の昭和25年からは渋谷・のんべい横丁に店を構えた、横丁の最古参だ。2代目の茂さんから、現在は次男の直人さん、三男の潤さんの代ヘ。若い二人を支えるのは、長年兄の片腕となってきた、茂さんの妹・美知子さん。
家族で営む横丁の老舗は、要請をどう捉え、何を決めたのだろう?2代目店主の茂さんに伺った。

家業の一番いいところ

うちは要請通りなんです。
3月末の外出自粛や、夜間の酒場などを避けるようにとの要請を受けて、お客さんにキャンセルのおうかがいを入れました。
そのうえで、どうしてもとおっしゃる方だけ、4月4日まで1階2階合わせて1〜3組のみで営業。これは売上抜きにして、予約をまっとうするためです。

4月5日から、まずは11日まで1週間休むつもりでした。でも途中7日に安倍総理の緊急事態宣言があって、5月6日までとのことなので、それまでは完全に休業します。発表が変われば延長もあり得ます。

たとえば1階と2階に1組ずつなど、中途半端な形での営業はやめようと。相手はウイルスという見えない敵。うちは2坪2階建ての小さな店ですから、これは潔く休まなきゃ、お客さんも家族も守れないと意見が一致しました。

これがね、家族で商う「家業」の一番いいところ。思いが一つになるんです
小さな色みの違いはあっても、大きな色あいの違いはない。つまり赤なら明るい赤から深い赤まであるけれど、「赤」という輪のなかで価値観が共有されているということ。

なぜそれができるかというと、息子たちの代になった今も、仕込みは全員一緒だから。僕と妹の美知子、次男の直人、三男の潤が揃って毎日、営業前に4時間ほど準備をします。この4時間が、基本的な考えを共有する大事な時間です。

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