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楽しい地球に生まれてきた[2024/4/3(水)〜4/9(火)]

2024/4/3(水) パンダと並んでエントリー

出張先での朝。水曜恒例「1週間分の日記をnoteにアップする」というルーティンワークをこなし、布団やシーツを畳む。

夫から、娘の写真が送られてきた。母に作ってもらったであろう、ブラウスとスカートを身に着けて、両手で裏ピースをしてポーズを決めている。とてもごきげんそうな様子。

荷物をまとめて、行きたいと思っていた喫茶店に向かう。階段を降りたところで取材をご一緒しているカメラマンさんに会った。「あれ、集合まだ...?」「朝ご飯食べて来ようと思って!」意気揚々と答える。「いってきます」と挨拶して、歩いて7,8分の距離をたったか向かう。朝の街は人がまばらだった。

扉を開けると、店内には誰もいなかった。右手にマスターがひとり、ぽつんと座っている。「いらっしゃいませ」私が入ってきたのを見てすっと立ち上がる。やがて奥から「どうぞ」とお水を持ってきてくれた。

モーニングセットを頼んで、今日の取材の資料を読み込んだり、メモをノートに書き込んだりする。とても居心地が良い。

マスターがいる左手奥のキッチンからは、ヤカンや鍋から白い湯気が上がっているのが見えた。白い湯気があがっている光景って幸せだなと思う。あたたかなものの象徴。

卵を割る音。フライパンがジューッという音。やがて、トレーに載ったモーニングプレートとコーヒーを、マスターが運んできてくれた。

ハムエッグの卵を割ると黄身が溶け出してくる。流れてしまわないように急いで、トーストを黄身の部分に押し当て、口に運ぶ。おいしいなあ。

レタスときゅうりとトマトのサラダ、そして小さめのナポリタンも付いていた。私はナポリタンというものが大好きなのでうれしい。小さな小皿に載せられたいちごジャムは果肉がたっぷり。さすがフルーツ王国の喫茶店だ。どこかのジャムだったのか、それとも手作りだったのか、聞いてみればよかった。コーヒーも苦味が少なくて、とても飲みやすかった。

あっという間においしいモーニングを平らげる。ゆっくりしたかったけど、間もなく集合の時間。「とってもおいしかったです」と告げて店をあとにした。

2日前の取材もとてもおもしろかった。会いたい人に会い、対話することができる。ライターというのは本当に良い仕事だなと思う。

新幹線に揺られ、帰る。

駅まで実家の両親と娘が迎えに来てくれた。助手席に乗り込んだ私に、娘が後部座席から「お母さん」と呼びかけてくる。「なにー?」と振り返ると「ひさしぶりだね!」と言う。またしばらくして「お母さん」「どうしたの?」「ひさしぶりだね!」。うん、ひさしぶりだね。

一緒にお風呂に入る。「今日は良い一日だったなあ」と言うから、「何が楽しかったの?」と聞く。「動物園でパンダ見たことと、お母さんに会えたこと」。思いがけずパンダと並んでエントリーしていてふふふと笑った。


2024/4/4(木) なにかあぶない話をください

朝、娘のトイレに付き合う。トイレに腰掛けながら娘が言う。「昨日ね、動物園の駅に着いたとき、血流れちゃってる人がいて」「ええ!」「だから血分けてください、って言ってたんだよ」...うーん...献血のことかな?

「お母さんは何かあった?」「おいしいおそば食べた」「そういうことじゃなくて、あぶない話して!」。街中のトイレを借りられる場所をめぐる街歩きをした、という話をした。(こう書くと不思議だけど本当の話だ)「それのどこがあぶないの?」「トイレ間に合わなかったらあぶないってなるかな、と思って」「ふーん、他には?」私にはあぶない話のストックが全然ない。

昼から午後にかけてミーティングがあった。ミーティング中に母と買い物から帰ってきたらしい娘が、せっせと部屋にパンやヨーグルトを運んでくれる。ありがとう、と目で合図しながらも打ち合わせ中は食べられず、終わってからリビングに移動して食べた。

娘と母と散歩へ出掛ける。上着がなくても暖かい。ここ1週間ぐらいで、春が駆け込むようにやってきたなと思う。久しぶり(と言っても2日ぶり)に私に会えた娘は「〇〇ちゃんはママが一番大好きなんだー」と私の腕に抱きつき、甘える。

桜の咲く公園へ向かった。

娘より小さい、3〜4歳の男の子がちょろちょろと走り回っていた。メガネをかけてマスクをした、スーツ姿のパパらしき男性が「もう行くよ」「公文始まるよ」「そろそろ怒るよ」と言いながら追いかけている。「そろそろ怒るよ」という人が、本当に怒るところを見たことがない気がする、と思いながらベンチに座る。逃げ回る男の子は楽しそうだ。

見上げると目の前の空には桜があった。まだ7分咲きといったところだろうか。「桜をおうちの中に入れられたらいいな」と娘が言う。母が「〇〇ちゃんがおとなになったらそういうおうちを建てたら?」と応じる。「ひとりで?」「ひとりでも誰かとでもいいけど」「大工さんと〇〇ちゃんの二人かな?」家を建てるという実務を二人でするのは、さすがにハードすぎないか。

私は家に帰ってやりたいことがあった。娘は母にお任せして、先に帰ろうかなと思う。「先帰るから遊んでて」と言ったが、「ママ、一緒に!」と言う。

仕方ないから遊具で遊ぶ娘を母と二人で見守ることにする。やがて私が「もう帰らなきゃ」というと娘も「帰る!」とすぐに公園を離れた。母が「お茶していく?」と娘に声をかける。「でもママ」「アイスでもいいよ」「でもママ」「ソフトクリームにしようか?」「でもママ」。アイスにもソフトクリームにも勝ってしまい、結局一緒に帰った。

ふらふらと歩く娘は眠たそうだ。昨日寝るのが遅かった割に、今朝は早起きだったかもしれない。

夕方私は自室にこもり仕事をする。夕飯の時間が来て、母が用意してくれたしゅうまいなどを食べ、お風呂に入った。

寝る前には、娘はおばあちゃんおじいちゃんとストレッチをする。体制をキープしながらひとりが10秒ずつ数えるのを6回繰り返すのだが、10になるときは必ず何か数字と違うことを言うことになっていた。「1,2,3,4…9,トーテンポール!」「1,2,3,4…9,きゅうり!」などそのたびに笑い合って楽しそうな3人を、髪を乾かしながら見ていた。

ふかふかの毛布に包まれて、今日も布団の真ん中あたりにぎゅっと身を寄せ合って寝た。


2024/4/5(金) あなたがそう思うだけで、人と自分は違う

朝ご飯を食べて、家に帰る準備をする。
かばんに入れて持って帰るものと、後から送ってもらうものとに、荷物を分ける。

母が「これは持って帰らなくていいんじゃない?」と言うと娘は「〇〇ちゃんは持って帰りたいの!おばあちゃんがそう思うだけでしょ。人と自分は違うんだよ」と母に言う。

これは今私の中でもアツい「バウンダリー」の話なんだと思う。つまり、自分と他者とを区別する境界線のこと。娘は、この「私は私」という境界線がしっかりしているなと思う。

午前中に家を出ようと思うが、娘は母のお客さんに会ってから帰りたいらしい。母は自宅で味噌づくりを教えていて、今日も味噌づくりのお客さんがくるのだ。じゃあちょっと挨拶して帰るか、と思う。

やってきたお客さんが「一緒につくろう」と誘ってくれて、はりきった娘はちゃっかり大豆と麹と塩を袋で混ぜてつぶす工程や、容器に味噌玉を詰める工程に参加していた。

「もう出るよ」と声をかける。すぐに手を洗いに行った。「もっとやりたいのに」と言うから、「じゃあ〇〇ちゃんはおばあちゃんの家にいていいよ。私はひとりで帰るから」と言うと「やだー」と泣き始めた。娘は見放されることへの傷が深い。わかっているのに、私も言ってしまう。

おばあちゃんが「大丈夫だから泣かないでよ〜」と笑いながら言う。私は「泣きたかったら泣いてもいいよ」と娘を見て言う。感情を抑えることはしなくていいと思う。

リュックを背負い、母とお客さんに別れを告げて、走ってバス停に行く。発車時刻より早めに到着することができた。「間に合ったね」。まだ目が濡れている娘が笑いながらこちらを見た。

バスで駅に着き、電車に乗った。グリーン車で、母がつくってくれたサンドイッチを食べながら帰る。母が朝焼いたパンに、庭で摘んだレタスとハムが入ったシンプルなサンドイッチ。おいしい。ハムが2枚も入っていて、その贅沢さをむしゃむしゃと味わった。

パソコンを開いて仕事をしたのもつかの間、急激に眠くなった。麻酔銃で撃たれたのではないかと思うぐらいの急激さである。あのコナンに出てくるやつ。

娘にちょんちょんと腕をつつかれる。「寝る」と宣言をして、パソコンを膝の上に置いた。

目が覚めると、娘も隣の席で、肘置きに頭を乗せて丸くなっていた。次が自宅の最寄駅だ。

「おーい〇〇ちゃーん」と呼びかけながら身体を揺するが、一向に起きない。「〇〇ちゃーん、もう着くよー」。反応がない。仕方なく、身体を抱えて縦にした。娘は寝ぼけ眼だったが、「もう着くよ」と伝えると、上着を着て、リュックを背負う。手をつないで電車を降りた。

帰宅して、夕飯を作って、バレエに行った。娘は家で練習していたストレッチの体制がうまくいって「できた!」というように、窓越しに目で合図を送ってきたから、うんうん、と頷いた。

家に帰る。夕飯を作っていたからすぐに食べられた。えらい。

お風呂に入る。「みんな、こんにちは!ふくいシャワーだよ!」娘のお風呂系YouTubeが始まった。「シャワーちゃーん!」というと満面の笑顔で手を振り返してくれる。「さぁシャワーを持って...」とシャワーを右手で握る。私も同じポーズをする。「はじまるよ!」

爪を立てて髪の毛を洗うことなど、細かい解説を交えて説明しながら身体を洗い終えた娘が娘が湯船に入ってきた。「お母さんもやって」とリクエストされて今度は私が「こんにちは、ふくいせっけんだよ!」と言う。私のお風呂系YouTuberデビューの日となった。


2024/4/6(土) いつだってマヨネーズは正解を出してくる

朝ご飯を食べてから、夫と娘と3人で近所のA山に登った。いつも夫ひとりで、または夫と娘で登っていたのだが、今日は一緒に登ってみることにした。きっと桜もきれいだろう。

家を出る頃には少し肌寒いと思って厚めの上着を着てきたが、歩いているうちに暑くなり、上着は結局手に持って歩くことになった。

山頂に到着。曇り空。過ごしやすい天気だ。桜が見頃を迎えている。展望台にのぼって、娘が双眼鏡に目を当てる。「桜が見えるよ」と私に譲ってくれた。近すぎて、薄ピンク色の花の塊に目がチカチカしそうになる。ちょっとずらして、遠くの船を眺めた。

それからローラー滑り台をする。この時期の滑り台は、桜のトンネルの中を滑ることができる。夫、娘に続いて私が滑る。あっという間に娘に追いつく。「きゃー」と言いながら振り返った娘に「どーん」と言いながら追突する。娘は「きゃーはははは」と終始笑っていた。

滑り台から上まで戻る道が、なかなか息があがる。私は途中休憩しながら、滑ってくる夫と娘を眺めていた。娘は滑り降りてはすぐ駆け上りを、休まず8回ほど繰り返した。

12時近くなって山を下る。一度家に帰って車に乗り換え、はらっぱで開催しているマルシェへ。のんびりとした時間が流れていた。

私はカレー、娘はガレット、夫はオムカレー。おのおの好きなものを購入して、草の上に腰掛けて食べる。昨日降った雨で、草の上は少し湿っていた。

いつも参加している合唱は、今日は参加できる人が少なかった。でもそのかわりに「なになに足りてないの?」といつもの、ではない人たちも参加してくれて嬉しい。娘は手作りのカバキーニョ(ブラジルのウクレレみたいな楽器)をかき鳴らしたり、ハーモニカ(こちらは本物)を吹く。準備してきたことができて、満足した顔だった。

魚屋さんとお菓子屋さん、それからスーパーで買い物をして帰る。

夕飯は魚屋さんで買ったイカのお刺身。それから、ゲソを使った炒め物。ゲソは魚屋のおばあが「おまけ!」と言いながらたくさん持たせてくれた。マルシェで買ったほうれん草と一緒に炒めたらおいしい。

イカのお刺身に夫は「邪道と思うかもしれないけど...」と言いながらマヨネーズをかけて食べる。知っている、いつだってマヨネーズは正解を出してくる。だからこそ避けているときもあって、塩だけで料理がおいしくできたときにやりがいを感じたりするものだが。うん、でもこれはいける。お醤油とマヨネーズをちょこちょこつけながら、イカの刺身を食べた。


2024/4/7(日) 急に時間の流れは変わって押し出されるかのようにそれはやってくる

朝ご飯にパンケーキを焼いて食べた。食後に本を読む。いつまでもそうしていたかったけど、3人で手分けして掃除を始める。

夫は掃除機、娘はお掃除ワイパー、私は洗濯と水回り。今日は夫のお母さんと、お兄ちゃんお姉ちゃん家族がやってくる。

娘は「ここ、ワニさんの口の中ってことね!」と張り切り始めた。部屋全体が口の中、お掃除ワイパーは歯ブラシらしい。「ワニさん痛い消毒ですよ〜」と言いながら、アルコールが入ったスプレーをプシュプシュと床にかける。「ワイパーの紙取り替えようか?」と声を掛けると、「ワイパーじゃなくて、歯ブラシの紙ね!」と間違いを訂正された。

まだ来るまで2時間あると思っていたのに、やっているうちにあちらもこちらも気になって、2時間はあっという間だった。そろそろ到着しそう!という頃にトイレを磨いて、なんとか間に合った。

車が庭に停まった音がして、子どもたちの声が聞こえる。窓を開けて「いらっしゃい」と挨拶をする。必要な荷物をおろしたり、トイレを済ませたり。子どもたちが庭から娘の遊び場に入ってきて、おもちゃを出して遊び始めた。

全員の用意が整うと、すぐに片付けて家を出ることになった。おもちゃの箱などを棚に戻しているうちに娘がわぁーっと泣き始める。うまく戻らない。急に子どもたちがわっときて、自分の城が荒らされたのにもびっくりしたのかもしれない。

「元あったように直そう」。夫と娘で順番に片付けると、落ち着いたようだった。

家を出て、A山へ向かう。娘と同じ5歳の姪っ子が「〇〇ちゃん手つなごう」と言って娘と手をつないで歩き始める。前会ったときはこんなにすぐに打ち解けられなかったような気がする。姪っ子が社交的なのもあるが、5歳という年齢は友達と遊ぶことが楽しくなる年齢なんだろうなとも思う。

そのまま二人は手を繋いで、山に続く階段を登っていった。私と娘と姪っ子と、小学2年生の甥っ子が一番で山頂に到着。続いてばあばと3歳の姪っ子甥っ子とそのママたち、追いかけるように、途中で友達に会って話し込んでいたパパたちもやってきた。

ピクニックシートを広げ、ばあばたちが買ってきてくれた、惣菜入りのコッペパンを食べる。2つじゃ足りない、と思ってひとりで3つ頼んだが、2つで十分お腹いっぱいだった。チョコバナナのチョコクリームが溶け出して、娘はスプーンを使って、バナナやパンを食べる。

ふとバランスを崩した娘が、こともあろうに、チョコバナナの上に転がってきた。「ああー!」といったときには、スカートが茶色く染まっていた。「ちょっとちょっと〜」。義姉のYちゃんがウェットティッシュをさっと出してくれて、スカートを拭く。娘は笑っていた。

昨日に引き続き、ローラー滑り台をした。お天気が良いからか、昨日以上に山頂はピクニックの人でいっぱい。昨日はすぐに滑れたローラーすべり台も、列ができていた。娘は3回ほど滑って満足したようだ。子どもたちは滑り台を続けたり、アスレチックで遊んだり、思い思いに過ごしていた。

娘は裸足になり、「お父さん一緒に走ろう」と言うと二人で芝生の上を走ってどこかへ行ってしまった。戻ってきて「向こうにIさんがいた!」とお友達ファミリーに会ったことを教えてくれる。

私はピクニックシートで、まだ6ヶ月の甥っ子を抱っこさせてもらう。ふにゃふにゃの赤ちゃんでかわいい。高い高いをすると口をパカッと開けて笑う。抱っこしたまま私が座ろうとすると泣く。立ち上がって揺れると落ち着く。もしかしたら眠いのかもしれない。そうしてゆらゆらしていたら、甥っ子の身体からは力が抜けて、寝息が聴こえてきた。

2年生の甥っ子が元気がなく、日陰にシートを移動させる。おやつに、と持ってきた柑橘を渡す。食べると、少し元気を取り戻したようだった。

ふわふわドームに行きたいから、と山を下る。わが町では遊び放題のジャンプして遊ぶ遊具「ふわふわドーム」。甥っ子の家族が遊びに行った場所では、3分300円だったらしい。思いっきりふわふわドームがしたい、と甥っ子が楽しみにしていた。

我が家へ歩いて戻り、車に乗り換えてふわふわドームがある公園に向かう。

到着したが、駐車場から見えるふわふわドームには誰も乗っていない。これはまさか...と近寄ると、パンパンに張っているはずのドームは、ふんわりと形を変えつつあった。

看板を見る。10分ほど前に終了していたらしい。「せっかく来たのに〜」と頬を膨らませる甥っ子に「ごめんね、また遊びにきてね」と言う。にぎやかな一行は気分を切り替えて、ひとしきり滑り台を楽しんだ。

公園の駐車場が閉まる、と管理者に告げられて、おのおの急いで車に乗り込む。急に時間の流れが変わって、押し出されるかのように別れは突然やってきた。「ありがとう。バイバイまたね」。手を振り去ってゆく車を見送った。


2024/4/8(月) 楽しい地球に生まれてきた

ようちえんの友達が娘を夕方まで預かってくれることになった。ありがたい。

起きてきた娘に「〇〇ちゃん!今日はみんなと遊びに行こう」と伝えると「えーひとりで?」と浮かない表情。伝えるのが突然過ぎて、気持ちの準備ができていないのかもしれない。「久しぶりに会うから緊張する、お母さんも一緒に」。最初だけ一緒にいる、と約束する。

娘の好きなそぼろを朝ご飯に出して、お弁当にも詰める。食べているうちに娘は「今日楽しみになってきた!」と大きい声を出すようになった。よしよし。

着替えをする。「人間はみんな宇宙人だってJが言ってたよ」。Jはようちえんのお友達だ。「お父さんは宇宙人の中の地球人です!」夫が言う。「え!人間の男はみんなそうなの?」「〇〇ちゃんも地球人だよ」「え!じゃあ地球人は楽しいんだね」。うんうん、私たちはみんな楽しい地球に生まれてきたんだね。

お弁当を作ったところで、何かおやつを持たさなきゃ、ということに気づく。ちょうどポップコーンの種が入った袋と目があった。

フライパンに薄茶色の小さな種を入れ、鍋蓋をかぶせて火にかける。パンパンパンとはじける音がする。音が落ち着いたかな、というところで蓋を開けてみると、白くて丸々とした粒がフライパンにいっぱいになっていた。マジックみたいだなといつも思う。ポップコーンを紙袋に入れて、砂糖と塩を適当に入れてしゃかしゃかして味を付け、曲げわっぱに入れた。おやつ完成。

着替えて髪を結んだ娘は、すっかりうきうき楽しみモードになっていた。

車に乗って、友達の家に立ち寄って一緒に参加するRくんをピックアップし、集合場所に向かう。集合場所近くにちょこっと車を停めさせてもらった。「〇〇ちゃん、あの場所長く車停めておけないから、お母さんは帰ってもいい?」聞いてみると、わかった、と娘は頷いた。友達にお願いして、坂道を登っていく子たちを見送りながら、私は家に帰る。

思いがけずまとまった時間ができてありがたい。仕事をサクサクと進める。

夕方迎えに行く。雨が降ったせいか、それとも汗をかいたのか、娘の額はうっすらと濡れていた。「楽しかった!」と言いながら私のところにやってきた。

おしゃべりをして、今日みんなの畑で収穫したという葉玉ねぎを受け取って、帰る。

家に帰って手を洗う。娘に「ぎゅーさせて」と言って、身体に腕を回してぎゅっとする。雨のせいかワンピースも湿っている。「〇〇ちゃんはお母さんのほっぺをぎゅっと挟ませて」と言われて「いいよ」と顔を出すと、唇を突き出した「タコの口」で口にぶちゅっとされた。不意打ちである。「本当はこういう風にしようと思ってたの」と娘はニコニコした。

夜は娘に困ってしまうことがあった。イライラしたり、怒ったりしてしまう。「どうしてそんなにこわい顔してるの」と娘に言われる。

「子育て向いていない」という言葉をたまに聞くことがあるけど、向いている人なんているんだろうか、と思う。私だって、昔から好きなことしかできないし、いつもやりたいことがいっぱいあるし、自分のことばかり考えてて、「向いてる」とは思えない。でもこの子にとって母親は私しかいないし、「向いてない」なんて言いたくなるのをぐっと飲み込みながら。今日も良い母親かはわからないけど、私は私のままで、娘という人と向き合っている。


2024/4/9(火) 雨と風と春休み最後の日

朝、部屋で朝ドラ「虎の翼」を見てみる。実家で数話見て面白かったのだが、1週目はAmazonプライムビデオで見られるらしい。最初から見て、やっと話がつながる。途中で娘が機嫌よく起きてきた。一緒に見る。

夫が「朝ご飯食べるよ」と言うから、動画を一時停止して、私と娘も降りていく。外は雨の音がした。

朝食を食べ終えると夫がゴミ捨てに行くと言う。「〇〇ちゃんも一緒に行く!抱っこ!」と娘。「傘さして行くから抱っこできないよ」と夫が言うと、「じゃあおんぶ!」と娘は夫の背中に飛び乗った。しばらくすると「ぬれた〜!」と楽しそうに娘が帰ってきた。

夫が出かけて娘と二人。娘がスマホで歌の動画を見て、私は仕事する。風でキッチンの向こうから何かがカタカタいう音が聞こえる。雨の音も激しい。

母から「強風で電車が止まっちゃった」と連絡があった。今日は娘の遊び相手をしに向かってきてくれているが、この雨風の中よく来てくれたなと思う。「気をつけて」と返信する。

しばらくして「ようやく動き出した!」と連絡があり、母は予定より1時間近く遅れて我が家に到着した。

おいなりさん、根菜の煮物、ひじき、自家製パンなど母が持ってきてくれたご飯を、ありがたく、温めてお昼にいただく。

お昼ご飯を食べているうちに、外は明るくなってきた。雨もあがり、日が出てきたようだ。

母と娘はお散歩に行くという。ビニール袋を手渡し、「よもぎとってきてね」とお願いする。ようちえんの春休みの宿題で、明日までによもぎを用意する必要があった。ちょうどいい。

2階の自室で仕事していると、ものの15分ぐらいで、「とってきたー!」と娘の声がした。袋いっぱいによもぎが入っている。「近くにあったよ」と母。「ありがとう。もう一回お散歩行ってきたら?」と促してみたが、「ママに会ったらママといたくなっちゃった」と言って娘が離れようとしない。「じゃあ一緒に図書館に行こう!」。3人で図書館まで散歩することにした。

雨上がりの町を歩くのは好きだ。思っていた通り、桜はだいぶ散っている。毎年この時期は雨で桜が散ってしまう心配をしている気がする。散りたての花びらがつくる道は、ピンク色に染まってきれいだった。

図書館の入口で、娘と母と分かれる。二人は子どもの本コーナーへ、私は自習室へ。とても集中できて仕事が捗った。

ふと右側に気配を感じて振り返ると娘が立っていた。「もう帰る?」と聞くと頷く。パソコンやノートをリュックにしまって、自習室を出た。

行きとは違う道を通って家まで散歩しながら帰る。母はカフェに行きたそうだったが、行きたいところはどこも定休日だったから、まっすぐ家に戻った。

家に帰って紅茶を淹れる。いただきもののバームクーヘンを切り分けた。娘が「おうちがカフェだね」と喜ぶ。

夕方帰る母を玄関先で見送った。

夕飯を作る。母が持ってきてくれたおかずが残っていたから、味噌汁と、昨日もらった葉たまねぎと春雨と豚肉の炒め物。

娘は、手作りカバキーニョをかき鳴らしたり、おもちゃのピアノで弾き語りをしたり、踊ったり、ワンマンライブで忙しそうだ。

夕飯の支度が終わろうとしたところで、「ピンポーン」とインターホンが鳴った。出てみると、ご近所さんである。生しらすをどうぞ、と持ってきてくれていた。突然やってきた生しらすに娘も私も「やった!」「今日のご飯は豪華だ!」と小躍りした。

贅沢な夕飯を食べ、たっぷりした気持ちで娘とお風呂に入る。

「見て、右と左で指の長さが違う!」。湯船の中で、両手の平をこちらへ向けて、揃った小指の長さが違う、と娘が言う。「それはこうじゃない?」と私が指の付け値の高さをあわせると、ぐぐっと2本が同じ長さになった。少しふやけてしわしわになった娘の小指はつくしんぼみたいだなと思う。春休み最後の日。


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