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フィッシュボーンのゆくえ[2024/4/10(水)〜4/16(火)]


2024/4/10(水) いつもさみしいと思うのは大人だけ

久しぶりに3時に起きる。

4時台に娘が部屋でしくしく泣いている声が聞こえる。寝室のドアを開けると「トイレ行きたい」と言う。階段の電気をつけて、まぶしそうに顔をゆがめる娘とトイレに行った。

「ママ、一緒に寝よ」。請われて一緒に布団に入る。「〇〇ちゃんね、ママとくっついて寝てると思ったら離れててさみしかった」布団の中で娘が言う。体勢を変えようと動くと手をぎゅっとつかまれた。「ずっとこうしてたい。出ていかないで」。目を閉じて、じっとそのままにしていた。寝息がして、そーっと手を抜く。こちらに背中を向けて、向こうにごろんと寝返りを打ったところで、起き上がって布団を抜け出してきた。

8時頃に娘を起こす。春休みが終わって、今日からようちえんの新年度がスタートする。初日は親子で参加することになっていたから、2人分のお弁当を詰めた。

車で途中まで行き、集合場所まで坂道を歩いて登る。途中でKちゃんIちゃん親子が自転車で後ろからやってきて「おはよー」「おはよー」と前に進んでいった。途中の公園で、自転車を停めているKちゃんIちゃん親子に追いついた。

ようちえんでは新しいお友達がずいぶん増えた。初対面の人も多い。まだ全体がわさわさとしている。収穫したての大量の草みたいな感じ。だんだんしっとりしてきたり、草同士が編まれて束になったり、何かが生まれたり。これから大人も子どもも仲間になっていくんだろうなと思う。

娘は慣れていない人がワッといる場にいると落ち着かないようで、私といたがった。たまに「抱っこして」と言って「えー」と言いながら抱っこする。「年長さん」と言うと「はいっ」と言って抱っこから自分で下りた。

よもぎ団子とつくしの佃煮をみんなでつくって食べた。つくしの佃煮がおいしい。おかわりしてパクパク食べた。

ようちえんを解散して、Eコーヒーに向かう。娘は車の中から水筒と「iPad」を持ってきた。片面に赤いペンで手書きの数字が書いてある、娘が片手で持てるサイズの木の板である。なぜか木の板の裏面には黒い布が貼ってあるのが、それっぽい。

「〇〇ちゃんのiPad、ゲームできるんだ」「どんなゲーム?」「お母さんとお父さんと昨日どこ行ったか、とかわかるゲーム」「どうやって遊ぶの?」「人を動かせるの」。RPGなのだろうか。

歩きながら「〇〇ちゃんは前の年長さんがいなくなってさみしいなって思わないの?」と聞いてみる。私はあーもうあの子たちはいないんだな、と思って少しさみしくなった。前の年長さんと娘は仲良しでよくつるんでた(遊んでた、というよりこの表現の方がしっくりくる)が、どうなんだろう。

「思わないよ!」即答だった。「さみしいなって思うのは大人だけだよ」「どういうこと?」「お母さんが子どものときのこと思い出して。年長さんがいなくなってさみしいなって思った?」子どもの頃仲良しだった、ご近所さんたちの顔が思い浮かぶ。「...思わなかった!」「そうでしょ。いなくなってさみしいなとか思うのは、大人だけ。子どもはそんなこと思わないんだよ」。子どもは今、今、今、の連続が日々だ。過去に思いを馳せたり、比較したり、懐かしんだりするのは確かに大人だけのセンチメンタルな楽しみなのかもしれない。

EコーヒーでMちゃんとお茶した。今日のEコーヒーは落ち着いていてゆっくりできた。空いているEコーヒーは最高。最近頭の中にあることを話せてよかった。

オープンしてからまだ行けてなかったご近所の植物のお店に顔を出す。かわいいエディブルフラワーを買ってきた。お菓子に使えたらいいな。娘はチューリップをサービスしてもらった。水色のサテンのワンピースに、鮮やかなピンク色のチューリップはよく似合うなと思う。

夕飯にすき焼きを作って食べる。それから母にもらったアシタバの天ぷら。

先にお風呂に入っていた娘と夫が寝室に向かう。お風呂に入る私に娘が「お母さん、すぐ追いかけてきて。お風呂入って寝る準備したら、ケータイ見たり絵本読んだりしないできてね」と言って階段を昇っていった。私が何をするかよくわかっている。

お風呂からあがる。夫が「すーぐ寝たよ」と教えてくれた。そういえば夕飯食べながらもう眠そうだったな。安心して、ケータイ見たり、絵本(最近ハマってる漫画『異国日記』)読んだりしてから、娘の隣の布団にもぐりこんだ。


2024/4/11(木) 悪者じゃなくて人だよ

娘が機嫌よく起きている声がする。夫が寝室に行く。楽しくじゃれ合いながら遊んでいるのかなと思う。

しばらくすると「お父さんがなんか...なついてくる」と娘が半分困った顔で私の部屋にやってきた。それを聞いて夫も笑い出し「遊んであげてるつもりだったのに」と戸惑っていた。

娘のトイレに付き合う。トイレに腰掛けながら「ママは〇〇ちゃんになついていいから、〇〇ちゃんもなおこちゃんになつかしてね」と言った。

お弁当を詰めて、朝ご飯を食べる。昨日買ったパンをトーストする。

娘のリクエストで、真ん中にバター、右側にチョコレートペースト、左側にピスタチオクリームを塗った。「お父さんとお母さんも同じにして!」。えー私は私の好きなように塗りたい。夫は文句も言わず同じように塗っている。

「やりたいようにやりたいんですけど」と言ってみるが、「同じにしてほしいの!」と言われ、押され負けて同じように塗った。かじる場所によって、クリームとバターが混ざり合ったりして、おいしい。そう伝えると「でしょ!」と娘は得意になった。2枚目はチーズトーストにして、はちみつを垂らした。

食器を片付けていると、白いブラウスにギンガムチェックのスカートに着替えた娘がやってきた。これは、私の洋服と同じ服がほしいと、娘がおばあちゃんにリクエストしてつくってもらったものだ。「〇〇ちゃんもしかして...」「おそろいにしてね!」。やっぱり。

お揃いコーデ、というのは、親が選んで子どもと揃えているのだろうと思っていた。そういう場合もあるかと思うが、我が家の場合はいつも娘発信だ。娘が「〇〇ちゃんと同じような色の服にしてね!」と言ったときに、私がなんとなくそれっぽいものを選ぶ。娘が白いブラウスにギンガムチェックのスカートを選んだ今日は、必然的に私の洋服が決まる。彼女は好きなものは洗濯が終わったそばから着るから、今後私も2日に1度はこのスタイルかもしれない。

ようちえんの集合場所に行く。今日はわらべうたに親子で参加した。

終わったら山に登る子たちと分かれて、EコーヒーにMちゃんのおにぎりを買いに行く。会いたかった友達にも会えて嬉しい。

帰って、仕事。すぐにお迎えの時間。

解散場所でケンカをしているひとつ年下の子たちがいて、娘が仲裁に入る。「やめてあげて」と一人の子がもう一人の子の襟元を掴んでいる指を一本一本開こうとする。やられて泣いている子には「ちょっとお水飲んで落ち着こうか」と水筒が入ったカバンをとってきて、水を飲ませてやっている。どう仲裁するのか実に興味深くて私はじっと見入ってしまう。

ひとりの男の子のことを、その子に泣かされた男の子やそれを見ていた女の子が「Fは悪者だ」「そうだよ、悪者だよね」と盛り上がっている。その言葉を聞いた娘は彼らを見ながら神妙な顔で「Fは...人だよ」と言った。ぷぷっと吹き出しそうになりながら、そうだよね、悪者だとか良い者だとかじゃなくて、結局ただの“人”だよね、と思う。

公園に移動して遊ぶ。晴れて良い天気だったからか、いつも以上に賑わっていた。

家に帰る。夕飯を作っている間、娘がメイクをしたい!と言った。「使ってもいい?」と私の化粧道具からアイシャドウを出してきた。貸してあげることにする。

しばらくすると、何か落とす音がした。アイシャドウのパレットを床に落として中身がこぼれたらしい。ああ貸さなきゃよかった、と思う。「落としちゃうのやだ、もう使ってほしくない」と言うと「わざとじゃなかったんだよー手滑っちゃっただけだよー」と娘が泣き始める。

イライラしてしまう。一人になろうとトイレに入る。「おかあさーん」娘はトイレの外で泣いている。

ちょっと気持ちが落ち着いてトイレから出ると、トイレの前で座っていた娘が立ち上がり「ごめんなさい」と赤い顔で言った。目に涙を溜めて口をぎゅっと結んでいる。「いいよ。怒ってないよ」「怒ってるかと思った」。ポロポロと涙がこぼれる。

もう一度アイシャドウを貸してあげることにする。もう落とされてもいいや。娘は喜んで、鏡の前でメイクを始めた。「ピンクのキラキラの使ってもいい?」「いいよ」「緑もいい?」「いいよ」「茶色も使おうかな」「いいよ」。

「できたー!」とキッチンに現れた娘の目の周りはぐるりとラメラメで、キャッツかシルクドソレイユのそれだった。「キラキラの妖精、キララちゃんなの」と言うと、ご機嫌に跳ねた。


2024/4/12(金) フィッシュボーンのゆくえ

朝ご飯を食べて、娘はおばあちゃんに作ってもらったピンク色のリボン柄のワンピースに着替える。「お母さんも似てるのにして!」私のクローゼットからピンク色のコーデュロイのワンピースを引っ張り出した。秋冬っぽい素材だけど、まぁいいか。選ばれたものをハンガーから取って、わさっと被る。

娘の髪を、ひとつ結びにして、フィッシュボーンに編む。「お母さんも同じにして」と言われたが、時間がない。「お迎えのときにはフィッシュボーンにしておくね!」と言いながら家を出て、ようちえんの集合場所に向かった。

娘を送り届けて、帰宅する。雨がポツポツと降ってきた。家を出る前に干せなかった、濡れた洗濯物が洗濯機の中で待っている。そのうち晴れるだろうと洗濯物をわしわしピンチハンガーに挟んで、外に干す。

仕事。昨日も一昨日もあまり仕事する時間がなかったから、やりたいことがいっぱいある。

今日こそまとまった時間があると思ったのに、あっという間にお迎え。

娘のリボン柄のワンピースはおしりのあたりがすっかり茶色くなっていた。水たまりで滑って転んだらしい。今日はお迎えから直接立ち寄ろうと思っていたところがあったのに。仕方ない、急いで一旦帰宅する。

家に帰ると洋服だけでなく、靴下も汚れていることがわかった。シャワーで足を洗い、全身着替える。すぐに家を出て用事を一件こなす。

そのままバレエに向かったが、始まるまで時間があったから、教室の1階にあるクレープ屋さんに行ってみた。いちごバナナスペシャル。友達に聞いていたとおり、生クリームがもりもりの大サービスだった。

娘は鼻の頭も口の周りも真っ白にして、かぶりついている。高校生の女の子4人組がやってきて、クレープの学割セットを頼んでいた。みんなお揃いみたいなロングヘアをしている。目の前の小さな娘も、いつかあれぐらい大きくなって友達とクレープ食べたりするんだろうな。

今日は突然の別れの報告にさみしさとモヤモヤが入り混じった気持ちになった。さみしい。さみしい。夕飯をつくる気力はすっかり失われた。自分が思っている以上に私は気持ちで生きているらしい。

しかしバレエ終わりの娘と二人、お腹は空いているから、なにか食べなければならない。豚ひき肉の塊を切って、塩コショウして焼いた。あとは今朝までにつくったお惣菜がいくつかあるから、まぁそれで十分だろう。

夕飯を食べてると娘が「あーー!お母さん!」とこっちを見て言う。なんだろう。「フィッシュボーンにしてないじゃーん!」。頭に手をやって「忘れてたー!」と言う。娘が「もうー言ってたのに〜」とこちらを指差しプププと笑いながら言った。

さみしい。さみしい。あと眠い。どこかに失われたはずの気力を振り絞って皿洗いをし、お風呂に入り、ちゃんと娘の歯磨きもして、寝た。


2024/4/13(土) 押してダメなら引いてみてほしい

土曜の朝はゴールデンタイムだ。平日は朝のルーティンが終わったら仕事をするが、土曜の朝はドラマなどを観ていい時間、と決めている。

ゴールデンタイムを満喫しようとTverで再生を始めたら、すぐに娘が起きてきた。ぐぬぬぬぬぬ...という気持ちになる。渋々一時停止ボタンを押して、一緒にトイレに行く。「もう元気になった?」昨日私はさみしくて元気がない、と言っていたからだろう。「まだかなー」と答える。

「もう一回寝てね」寝室に連れていく。パソコンの前に戻り、再生ボタンを押す。

20分ほどしたところで「今何時ー?」と声が聞こえる。寝てないらしい。「7時過ぎ!」「もう起きる」。娘は夫を連れて起きてきた。夫は眠そうだった。

朝ご飯を食べて、着替え。「お揃いにして!」と娘が言う。やっぱり。一昨日着た、白いブラウスにギンガムチェックのスカートというコーディネートを今日もしたいらしい。リアルに2日に一度着ている。「お母さんは自分の着たいものを着たいんだよお」と主張する。「いいから、お揃い」娘に何度も迫られる。その間に彼女はそのコーディネートに着替えていた。

何度も「お揃いにしてね」と言われて抵抗した末、「まぁいいか、お母さんが着てくれなくても」と娘が隣の部屋で言うのが聞こえた。そんなに言うなら着てやるか、と思い始めたところだったのに。「やっぱりお母さんも着る!」。そう言うと「え!ほんと!着てくれるの!やったー」と隣の部屋から目を輝かせた娘がやってきた。押してダメなら引いてみろ、が素直に効いてしまう私である。

そんなこんなで今日も二人で白いブラウスに、ギンガムチェックのスカートだ。

午前中、用事があって私は出かけた。出先で思ったより時間がかかってしまう。「遅くなりそうだから私のこと気にしないで出かけて」と夫にLINEすると「〇〇ちゃんはお母さんと一緒にT公園に行きたいから、まだ家で待ってます」と返ってきた。一緒に公園でお花見したいね、と言っていたのだ。残念ながら一緒に行けなさそうだから、2人で行ってもらうよう伝える。

用事が終わると、すでに3時頃だった。お昼を食べ逃して、海鮮丼のお弁当を買って帰る。ちょうど私が帰宅する前に、出かけていた二人もT公園から帰ってきていた。とてもお腹が空いていた。海鮮丼をかき込む。

家でゆっくりしていたら、すぐにまた出掛ける時間がやってきた。月に一度、団地のコミュニティスペースで開催されるお食事会の日だ。昨日の朝たっぷりポテトサラダをつくったから、持っていくものは決まっていた。夫は今日も白米を炊飯器ごと持って行く、と言うが、水を途中まで入れたまま炊飯器の御釜は放って置かれていた。水を足して、炊飯器のボタンを押す。

お食事会には娘と同じ年代の男の子とそのお兄ちゃんも来ていて、娘は一緒にトランプやかるたをさせてもらった。私は目の前にオレンジの明かりがぼんやりとにじんでいるような心地でいた。日中外出していたのと、昨日から再びやってきた花粉症のせいで、夜よく眠れなかったせいかもしれない。

眠くなるとテンションがあがる娘は、いつもお食事会議の別れ際には、元気いっぱいで大きな声を出している。今日もとびきりご機嫌でみんなに別れを告げて家に帰った。


2024/4/14(日) 桜の花びらをつかまえるのに真剣

日曜の朝も引き続きゴールデンタイムである。昨日ほとんど観られてないエンタメを楽しもうとイヤホンをしてパソコンに向かっていると夫と娘がやってきた。もうもうもう。私のゴールデンタイムよ。

思わず振り向いて「なんで起きてるの?」と言いかけたところで、「お誕生日おめでとー!!」と二人が声を揃えた。そうだった。「ありがとう!」。「なんで起きてるのって言われたねぇ」と二人はすごすごと寝室に帰っていった。ありがとう。そしてあと一時間ぐらい寝てくれたらとても嬉しい。

二人は30分ぐらいで寝室から出てきた。朝ご飯を食べると、スーパーに買い物に行った。夕飯をつくってくれるらしい。私はのんびり身支度をする。

と、今日遊びに来るという友人夫妻からもうすぐ駅に到着すると連絡があった。知らせを受けて、夫と娘は急いで帰ってくる。三人で駅前まで車で迎えに行く。

桜が楽しめるうちに、A山でピクニックをする約束をしていた。車を走らせて隣町のパン屋さんへ。しょっぱいの甘いの、たくさんのおいしそうなパンを手に入れて、A山へ。

2月の菜の花の時期も来てくれた友人夫妻がまだ登ったことのない登り口へ案内した。あまり舗装されていないが、森の中を歩いている風情があって私は好きな道だ。

途中にひらけたスペースがあった。桜の木の周りにベンチがあり、その周りには濃いピンク、薄ピンク、そして薄紫色の芝桜が咲いている。森の中に現れたお花畑を眺めながら、しばし深呼吸する。

なだらかな道、階段の道、交互に続くこの道は、長さこそあるけれど、たくさん転調する音楽のようで、歩いていて楽しい。

山頂に到着。ちょうど空いたテーブル席につき、春のパン祭りを開催した。余ったら持って帰ればいい、と思ってたくさん買ってきたパンを、我が家3人ともよく食べ、あっという間になくなった。

食後にパン屋さんで買ってきた湘南ゴールドを、娘がひとりひとつ配布する。小さくて丸くて、黄色いのにすっぱくない、この地域で穫れるこの柑橘を、私は好きだ。友人夫妻もおいしいね、と食べてくれて嬉しい。

展望台から景色を眺める。今日は晴れていて富士山がうっすら見えた。向こうの空にたなびく雲は日本画のようにも見える。海は手前はエメラルドグリーン、奥は濃紺の2色に分かれていた。

この春何度もここに来ているが、来るたび変わる景色に飽きることがない。

ローラー滑り台を2度滑り、アスレチックの方に移動した。風が吹くと桜の花びらが降ってくる。桜の花びらをキャッチすると、願いが叶うだったか、いいことがあるだったか、聞いたことがある。ちょっと捕まえてみようと手を伸ばしたら、いつの間にか真剣になっていた。両手でパンっと捉えようとすると、手から出た空気が花びらをどこかに飛ばしてしまう。両手でお椀の形をつくり、乗せようとトライしてみるが、なかなかうまくいかない。たまたま手の甲に乗ったひとひらを、そっとポシェットにしまった。

来た道を戻って帰る。脇が急坂になっている狭い道があって、先を行く夫が後ろにいる娘に「〇〇ちゃん気をつけてね」と言う。「わかってる!」と娘。「ようちえんでもこういう道いっぱい歩いてるんだよ!」。娘は、ようちえんでこういう細い道をたくさん歩いているから自信があるに違いない。ようちえんでは小さい子たちに比べると、全く危なげない足取りなのだ。心配する夫の気持ちもわかりながら、それを伝えると、娘は「お父さん、わかってる?わかってるなら〇〇ちゃんに言わないでよ」とややツンツンした様子で言いながらずんずん歩いた。

友人夫妻を駅まで送って帰宅。夫は再び買い物へ。夕飯づくりに向けて、買い残しが色々あるらしい。

その間に、娘とシフォンケーキを焼く。泡だて器やハンドミキサーを使って材料を混ぜるのを、娘が随分手伝ってくれた。

ケーキをオーブンで焼きはじめたら、夫が帰ってきた。今夜はずいぶんたくさん作ってくれるらしい。「ビーフシチューのお肉は、カレー用のお肉で問題ないよね?」と夫が言う。問題ないと思うけど、それは豚肉ではないか...?夫にそう言うと「あーー!」となった。ビーフとポークを間違えたらしい。頭を抱える夫に、「ポークシチューになるだけで何も問題ないさ」と伝える。キッチンを夫に任せて、娘とお風呂に入る。

湯船に入ると娘が「手のこっちとこっとで全然色違わない?」と自分の手のひらと手の甲を交互に見た。「よく焼けてるね」と言うと「こんがりいい色。こっちは生焼け」と手のひらを見た。「お母さんは全身生焼けだね」。たしかにホットケーキに例えたら、私は中まで火が通っているかどうかあやしい感じ。娘は金色のバターが似合いそうなこんがり具合だ。

お風呂からあがると、夫の料理は最終段階だった。フリットにコロッケに、ビーフ...ならぬポークシチューに、温野菜のサラダ。たくさんの料理が並んでいる。今夜はごちそうだ。

逆さまにして冷ましていたシフォンケーキも型から取り出し、飾り付けをする。生クリームを絞り、先日植物のお店で買ったピンク色の矢車菊のエディブルフラワーでお化粧したら、桜が咲いたようになった。いちごを乗せて、チョコペンで娘が「おめでとう」と書いてくれる。読めるか読めないかの文字が、記号か模様のようでかわいい。

「ハッピーバースデートゥーユー ハッピバースデートゥーユー」を娘がおもちゃのピアノで弾いてくれた。赤いろうそくを一本立てたケーキ。目を閉じて願い事をしてろうそくを吹き消す。ありがとう。


2024/4/15(月) オーバイオーバイ!

朝ご飯を食べて着替える。今日の娘は胸元にオレンジ色の花模様のある、ベージュの半袖ワンピース。中に襟付きの長袖のブラウスを着ている。「似てるのにして!」と言われながらも、私は緑地に白い大きな花柄のスカートに白いブラウス、白いベストにした。「似てない」とご不満の様子。全部お揃いの洋服を持っているわけではないからさ、と娘をなだめる。

私が出掛ける支度をしている間、娘は宝箱を開いて、内側にある鏡に向かっていた。「ネイルして、メイクしてるの」おばあちゃんにガチャガチャで買ってもらったアイシャドウを目の上に塗っていた。「青くてかわいいね」と言うと「水色だよ?」と言う。

ようちえんの集合場所まで送る。晴れていて気持ちの良い日だ。

そのままは私はEコーヒーへ向かう。月に一度の好きな本を紹介し合う読書会の日。早めに着いたEコーヒーの中からノリノリの音楽が聴こえる。扉を開けようとすると鍵が閉まっていた。扉の前で少し待っていると、向こうから店主がスケボーですいーっとこちらへ向かってきて。「待ちました?」と言いながら鍵を開けてくれた。

今日の読書会は新しい参加者の方がいて、また楽しかった。Eコーヒーの常連さんで、度々顔を合わせたことはあったが、好きな本を介して会話すると、その人の考えていることや感じていることに一気に深く潜れるような感覚があるなと思う。

お昼にMさんがお弁当を配達してくれた。お弁当の蓋に、かわいい小さな花束と「HAPPY BIRTHDAY」の文字が添えてあって嬉しい。Aちゃんが、私の誕生日が近いことを伝えてくれたらしい。卵のそぼろに桜の塩漬け、菜花やグリンピースや枝豆が緑の彩りを添える。春爛漫なお弁当がうれしく、おいしかった。

午後はアロマを用いたAちゃんのワークショップがある。月に一度の癒やしの時間を過ごしたかったけれど、今日も仕事を進めないとどうにも立ち行かなくなりそうなため、みんなと別れて家に帰る。

外は昼寝でもしたいようなポカポカ陽気だった。

家に帰って仕事。あっという間に4時を過ぎて、友達が娘と遊んでいてくれるはらっぱまでお迎えに行く。

友達と少し話して別れ、娘と車に乗る。Mrs. GREEN APPLEの「ケセラセラ」を再生する。「限界 上等 やってやろうか」という歌詞に鼓舞されて、歌いながら帰る。仕事と自由になる時間の間でギリギリな日々を過ごす私への応援歌。

「“私を愛せるのは私だけ 生まれ変わるならまた私だね”ってところが好き」と娘に言う。「I am」がテーマな牡羊座っぽい歌詞だなと思う。娘は「〇〇ちゃんは、オーバーイオーバイのところが好き!」と言った。たぶん「All right, all right」のところ。

帰ってすぐお風呂を沸かした。昨日夫がつくってくれたポークシチューやサラダがあったから、何も夕飯をつくらなくてよい。最高。娘はシチューをおかわりし、眠い目をこすりながらバゲットを3枚も平らげた。


2024/4/16(火) りんごほっぺちゃん

4時頃、隣の布団で「トイレ行きたい」という娘と起きる。トイレに付き添い、娘は寝室へ。私はそのまま起きることにした。

8時になっても娘は起きてこない。部屋へ行ってみると、赤いほっぺをして寝ている。夫が「かわいいお顔の色だねぇ」と言う。「りんごほっぺちゃん」と私も呼びかけながら、これはもしかしたら、という予感がする。

キッチンでお弁当を作る。今日はそぼろと卵の2色丼。ブロッコリーとミニトマトも添えてみた。彩りが良いお弁当ができた日は嬉しくなる。

娘が夫と一緒に降りてきた。「元気?」と聞いてみる。「元気だよ。ただ眠いだけ」そう言いながら娘はトイレに向かっていった。

朝ご飯を食べる。「ママの隣で食べる」と自分の席ではなく、私の隣に座った。順調に食べ進めているかと思ったが、もぐもぐしながら「なんか変」と顔をゆがめてこちらを見た。

これは熱があるなと思う。膝に抱えて体温計を脇に挟もうとすると嫌がる。なんとか脇に挟む。数字は速い速度で上昇した。38.7度。やっぱり。

「はかられたくなかったのになんで無理やりはかったのー!」と泣く子をなだめて、布団に連れていった。

一緒にいてほしい、と言う娘の隣に腰掛けてパソコンを開く。すぐに寝息を立て始めたから自室に移動する。今日は書くべき原稿があった。「お!これは書けそうだ」と筆が乗ってきたところで「ママァ」と呼ばれる。

「はいはいはいー」寝室に駆けつけると「どうしていなくなっちゃったの?」と言われた。「ぐっすり寝てたからいっかなーと思って」と言うと「だめだぁ」と風船から空気が抜けていくような調子で娘が言った。顔はほてっている。喉が乾いたというから、水を水筒に入れて持って行った。

買い物してくるね、と娘に告げて、近所の八百屋へ。
我が家の熱がでたときの必需品、豆腐とキャベツを買ってきた。
豆腐に生姜と小麦粉を混ぜたものを、さらしに乗せておでこにまく。豆腐パスターという自然の熱さまシートのようなものだ。キャベツは頭の下に敷く。こちらも熱をとってくれる。

娘のおでこに豆腐パスターを乗せてやる。「どこにも行かないで」というから、寝室で仕事することにした。

次に起きたときは、汗をかいていた。身体をふいて新しい下着とパジャマを着せる。以前風邪をひいたときにパジャマを着替えさせるのを忘れていたら、汗疹になってしまった。その反省を活かして、今回はこまめに着替えさせようと思う。

娘に、とつくっていたお弁当を、自分のお昼ご飯に食べた。
原稿を書きながら、豆腐やキャベツを取り替えてやる。

2度ほど着替えさせると夕方になった。
「なんか食べたい」と言う。「おかゆにする?うどんにする?」「うどん」。

卵と梅干しを入れたとろとろのあんかけうどんをつくった。ふーふーしながら食べている。「おいしい」とおかわりした。食欲が出てきたようで何より。熱は38度弱まで下がっていた。

再び寝る娘と一緒に寝室へ行った。外が暗くなったから、資料を読むのにスマホの懐中電灯を使わねばならず、原稿が書きづらい。

やがて夕飯を食べる私と夫に付いて、娘も起きてきた。私たちが食べる横でおしゃべりしたり、笑ったり、だいぶ回復してきた様子だった。

Aちゃんとメッセージのやり取りをしてて、今日から春土用だと知った。身体が調整に入る時期なのかもしれないと思う。歯を磨き、再び寝室に向かう娘と今度は一緒に寝た。



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