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明日のわたしをパンチで起こして[2024/9/4(水)〜9/10(火)]


2024/9/4(水) 秋はやってきている

昨晩夏休みが終わるのがさみしい、としんみりしていた娘は、今朝になると「早くようちえん行きたい!」とジタバタしていた。

娘の髪を三つ編みに編んで、10時に出かける。「秋晴れ」という言葉がぴったりの、カラッと晴れた涼しい日。

近所の友達のお店で、娘と一緒にRちゃんの帽子をかぶっているところを、Tちゃんに撮ってもらった。と言っても、おしゃべりしながら、いつも通りいた。

飛行機がずいぶん低く、町の上空を旋回していた。何かパトロールでもしているしているのだろうか。子どもたちと空を見上げる。飛行機は何度かぐるりとした後、山の向こうへスーッと飛んでいってしまった。

撮影が終わって、家に帰る。お昼ご飯はパスタにしようか、と話す。「何パスタがあるか書いて、どれにしますか?って聞いて!」と娘が言う。「つな とまと ぱすた」「つな なす ぱすた」「つな ナポリタン」などと書く。カタカナはひらがなに書き直しさせられた。

ツナトマトパスタに決まった。しかし、パスタが足りない。先日夫のお母さんにもらったおいしい麺をつかって、ツナトマト麺にすることにした。夏のさっぱり麺。とてもおいしい。

食後、とてもとても眠くなって、私はソファに横たわる。そのまま寝ていた。途中、膝のあたりが冷たい、と思ったら、氷を口に入れた娘がなめていたようで、「ウフフフ」と笑っていた。

1時間ほど寝た頃に娘に起こされる。夫がクリーニングに出していたYシャツをとりに出かける。クリーニングを受け取って車を発車させる頃、「Eコーヒー寄っていかない?」と娘に言うと「寄ってもいいんだけど、ママ、Eコーヒー行くとおしゃべりして帰り遅くなるからなあ」と言われる。そのとおりである。「じゃあ16時半になったら帰ろう」。そう約束してEコーヒーへ向かう。

午後のEコーヒーはのんびりしていた。涼しくて気持ちの良い気候だった朝は来店が多かったらしい。暑くなって、みんな家から出ないでいるのかもしれない。娘と私、それぞれの飲み物を頼んで、ドーナツを半分こして食べる。

やがてどこかの親子がやってきた、と思ったら、町の友達だった。

娘と友達の家の同い年の子は遊び始めたものの「つまんないつまんない」と言っている。「つまらないを存分に味わってみたら」と提案する。退屈って最高に贅沢だ。大人が面白くしてあげる必要はないと思う。

看板娘のEちゃんも入れて3人で遊び始めると、「秘密の階段」やら「秘密基地」やら、わくわくな企画がたくさんで、あんなに退屈そうだった彼らも忙しくなっていた。

おかげで私は、夏の間になかなか読めなかった本がスイスイと読めた。

16時半を過ぎた。そろそろ帰ろうかと思うが、今日は娘が帰りたくない番だった。娘を待っているうちに、また別の友達がやってきて、結局18時頃に帰った。

帰宅すると、娘が「ごはんつくりたい!」と張り切る。EコーヒーでKちゃんからもらったトカドヘチマの皮を、娘がピーラーで剥く。

ヘチマと何を炒めよう?「豚肉にする?鮭もあるよ」と聞くと、「鮭」と言うから渡す。今度は鮭を一口サイズに切っている。「切れないー」と鮭の皮に苦戦している。「それは力がいるの」と言って、私が切る。イライラしちゃう。夕飯づくりは早くしなきゃ、と気が急いていて、余裕がない。娘は、切ったトカドヘチマと鮭を炒め、醤油で味付けしていた。

私はEコーヒーで買ってきたモロヘイヤをフードプロセッサーで細かくして、モロヘイヤスープを作る。以前Eコーヒーで飲んで、おいしかったのだ。

バターを熱して玉ねぎと炒め、水とコンソメを加え、細かくなったモロヘイヤを入れる。フライパンでスパイスとミニトマトを炒める。これをスープに乗せるとさらにおいしい。

今日のおかずは娘がつくった鮭とヘチマの炒め物、私がつくったモロヘイヤスープ。ちょっと物足りないかな、と思ったけれど、十分だった。

食べ終わって片付けをしている頃、夫が帰ってきた。娘がおかずのお皿を指して、「これは〇〇ちゃんが作ったの」と夫に教える。

「今日秋って感じした。さみしい」と夫が言う。彼は夏が好きなのだ。秋が来るのがさみしい、これはきっといろんな記憶がそう思わせるのだと思う。夫は高校球児だったし、夏の終わりは挑戦の終わり、ひとつの区切りに感じるんだろう、と勝手に想像する。

私は秋の文化祭のための夏の合宿、秋のダンスの舞台のための夏の練習、など、いつも秋が本番だったせいか、夏が終わるのが全然さみしくない。いよいよ、という気持ちがする。

娘に「プリンちゃん、お風呂どうする?」と聞く。たまに名前以外の名前で呼びたくなる。「〇〇ちゃんプリンちゃんじゃないんだけど」と娘が言う。「パパがプリンくんてことにして」。じゃあ、と夫に「プリンくんはお風呂どうしたらいいと思う?」と聞くと「うーんプリンくんは考えてみるね、ぷりぷりぷり、プッチーン!パーン!〇〇ちゃんが一緒に入りたい人と先に入ったらいいと思う」。カップの底のツマミを折るとプリンがお皿に飛び出すイメージだろう。その表現を娘も気に入って「プリンちゃんはーうーん、ぷりぷりぷり、プッチーン!パーン!」と、娘もプリンちゃんにはなったものの、答えにたどりつかないから、おいおい、と夫と私でツッコむことになった。

結局私と娘が先にお風呂に入った。娘は体を洗いながら、目をごしごしごしとこすっている。眠たいようである。「ママが体洗って」というから、泡立てたスポンジで娘の体をこすろうとしたら、「キャハハハハハ」と笑って転がった。くすぐったかったのだろう。大胆に床に寝転ぶとき、いろんなものが落ちてきた。あぶないあぶない。

お風呂をあがって、3人でストレッチをして、歯を磨いて、それから娘と二人で布団に横たわった。昨日から、クーラーをつけないで寝ることができている。秋はやってきている。


2024/9/5(木) ようちえんスタート

ついに夏休みが終わって、今日からようちえんがスタートだ。娘は6時半頃起きてきた。早い。

月に一度のわらべうたの日で、一緒に行く。久しぶりの再会の緊張と喜びでテンションがあがった男子たちは、コロコロと子犬のようにじゃれ合っていた。ああ、こんなふうだったか、とようちえんの日常を思い出す。にぎやかすぎて、ちょっと意識が飛びそうになる。

みんなで輪になって行うわらべうたで、輪の真ん中に入って、後ろに立ち止まった人の声を当てる「鬼」になってしまった。娘と一緒に輪の中心にしゃがむ。声を当てるのはそもそもあまり得意ではないうえに、人数も多いし、子どもたちは「あー!」とか「わー!」とか声をあげているし。誰の声かわからなくて、ちょっと泣きたくなった。なんとか3回目で当てて、真ん中から輪に戻る。

わらべうたが終わって、バイバイ、と別れる。

帰宅。昼ご飯を食べて、日記を書いたらすぐにお迎え。

ようちえんの後、子どもたちを預かる当番だった。風のよく通る木陰にいた。ひとりの子のビーサンがなくなる。子どもたちはパトロール隊となって、果樹園跡地の中をあちこち捜索に出掛けていった。

「風で飛んでいったのかもしれない」と、子どもたちは隣のはらっぱへ出かける。

そのままはらっぱで遊ぶことになった。娘は、こげるようになって楽しい自転車に、友達と交代交代で乗っていた。

子たちの父や母がお迎えにやってきた。さあ帰ろうというところでも、なかなか帰ろうとしない。「自転車乗ってから帰りたい」と言う。これが最後ね、と約束する。彼女は自転車でぐるっと何周かすると、帰ることを決めてくれた。

夕飯はタコライス。タコスにしようかと思ったが、「タコスパーティーはお父さんがいるときにしたい」と娘が言うから、タコライスになった。それから茹でたピーマンを塩昆布と和えたのと、冷奴と。

娘が早起きしたから早く寝られるように、と思っていたのに、結局寝たのは21時過ぎていた。


2024/9/6(金) 先っぽ切ったらよく伸びる

5時半に起きる。今日は原稿の締め切りがある。しかし久しぶりにアフリカンダンスのレッスンにも顔を出したい。

朝の時間にできるだけ原稿を進めよう。5時半から8時半まで集中して原稿を1本書き上げた。えらい!これが本当の朝飯前!

まだ眠っている娘を起こしに行く。ぐっすりと気持ちよさそうに寝ている。「〇〇ちゃん、もうようちえんだから起きて」と声を掛ける。起きない。

お弁当をつくりに階下へ行って、また寝室に戻る。「〇〇ちゃん!」「まだねむい〜」「じゃあようちえんは遅れていく?」「うん、そうさせて」。どうしようかなあと思いながら、お弁当の続きをつくる。

9時頃。「まだ間に合うよ」と声をかけに行く。娘はノロノロと起きた。お着替えしよう!と声を掛けて、クローゼットを開ける。娘がそれ、と指さしたワンピースを取り出す。

寝っ転がって「着替えさせて」と言う娘のズボンを脱がせる。「上はできないから自分でして」と言うと、なんとかトロトロしながらパジャマの上を脱いだ。ワンピースをスポッとかぶせる。「抱っこ」と言う眠たい子を抱っこして、階段を降り、トイレの前で下ろした。

パンの残りを食べさせ、すぐに出掛ける。遅刻するかも、と思って急いだら、思いのほか5分前に到着した。

娘と別れて帰宅。アフリカンダンスに行った。たっぷり汗をかいた。

帰宅して、近所のRちゃんのお店でお弁当を受け取って、家で食べる。しみじみとおいしくて感動する。すぐにお迎え。

今日は放課後ようちえんの仲間たちがほうきや染め物をするそうで、見ていたかったけれど、娘が「はらっぱで自転車する!」と譲らないから、その場を後にする。

朝晩は涼しいが、おひさまが出ている日中はまだまだ暑い。私は日陰に腰掛ける。娘は暑い中をずーっとずーっと自転車でぐるぐる回っていた。

永遠に飽きなそうだなあと思う。私はスマホを見ている。「スマホじゃなくて〇〇ちゃん見て!」と言われる。一瞬顔をあげるけれど、またスマホに目が行ってしまう。

駐車場の方からやってきた友達が「はい!おみやげ」と細長いものを手渡してくれた。おいしそうなうどんだった。うれしい。天使かな。自転車の子に付き合ってあげていると、いいこともあるものだ。

一度娘は転んだ。カーブで角度をつけすぎたらしい。泣くこともなく、パンパンと手を払うと、「ちょっと曲がりすぎちゃったみたい」とすぐに立ち上がった。

自転車に乗り始めて、もう40分ほど経った頃だろうか。やっと娘は「飽きてきた」と、私と友達が話しているところへやってきた。

おしまいにして、自転車を片付け、車に乗って、バレエスタジオの方へ向かう。

スタジオの向かいにあるスーパーでアイスを買う。娘はクッキークリーム味を選んだ。エスカレーターを下り、テーブルとイスがあるスペースに娘と向かい合って座る。ひとつのアイスを順番にすくって食べた。

それからスタジオへ向かう。今日は小さなかわいい子が体験レッスンに来ていて、一生懸命ついていく姿がなんとも愛らしかった。レッスンの終わりに、体調を崩して休みに入るというお姉さんが挨拶に来ていた。きっとまた会える。でも別れはやっぱりさみしい。

帰宅した頃には、ドッと疲れていた。早朝から原稿を書いたし、アフリカンダンスでめちゃめちゃ踊った。もう疲れて何もしたくないモード。

夕飯をつくらなければならぬ。「夕飯何にしようかな」と言っていると、娘が「紙に書いてね」と言う。メニューのように、書いたものから選ぶのが最近好きだ。

簡単にすぐできる豚丼にしたかったが、娘はサラダチキンを選んだ。いや、私が書いたんだけど。娘が「お料理したい!」と言うから、鶏むね肉に、フォークで穴を開けてもらう。「これはむね肉?食べてるときにドキッとするかもね」と娘が言う。

それから調味料に漬け込んで、しばらく待つ。そう、しばらくまたなければいけないのだ。

「〇〇ちゃんがやりたい!」と言う娘にイライラした。急いでいるから、私にさせてくれ、と思ってしまう。私は疲れている。

娘は、3キロの米袋を見つけると、米袋を抱っこして、赤ちゃんにして遊び始めた。何やら話しかけている。その様子を見ながら、娘は、自分が手伝ったら役に立つと思ってくれたのかもしれないな、と思う。すぐに「自分がしたほうが早い」となんでも思ってしまう自分を反省する。

むね肉を漬け込んでいる間にナスを焼いて、甘辛く味付けする。ナスの蒲焼き。あとはトマトを切る。むね肉をお湯につけて、サラダチキンもできあがった。今日はこれで十分。

ご飯を食べ終わると娘が「毛先だけ切って」と散髪をリクエストしてくる。娘は、まだ生まれてから今まで一度も髪を切ったことがない。「〇〇ちゃん、ラプンツェルぐらい伸ばしたいんだ」。「毛先を切るともっと早く伸びるらしい」と私が言ったのを思い出して、言っているようだ。

服を脱いだ娘をお風呂のイスに座らせて、毛先を3センチほど切った。「わぁー切っちゃった!明日になったらこんな伸びてるかな!」と娘がお腹のあたりを指して喜んでいる。たぶんそんなにすぐ伸びない。

湯船の中で、切りそろえられた娘の毛先を見ながら、切りたてという感じがするなあと思う。眠たくて、私はむっつりとしてしまう。「怒っているわけじゃなくて、眠たいだけなんだ」と娘に言う。

お風呂をあがって、娘の歯磨きをしてストレッチをする頃、夫が帰ってきた。キッチンに食べられるものが色々あるから、と説明する。

娘は「髪の毛切ったんだー!毛先だけ!」と夫に言う。「切った髪の毛どうしたの?」と夫に聞かれる。3センチほどのパラパラの髪だ。流して排水溝に溜まったのを、丸めてポイッとした。そう言うと、「捨てたの?」と少し驚いた様子で聞き返された。あ、夫はもしかしたら残したかったのかも、と思うがもう遅い。

風呂上がりに壁倒立を練習していた娘。壁に向かって何度も何度も足を蹴り上げているうちに、壁に足がついた。腕で支えきれずにすぐに倒れてしまったが、それでもおお!となる。その瞬間だけ、私もちょっと目が覚めた。

夫が帰ってきてテンションがあがった娘は、まだまだ夫と遊んでいたそうだったけれど、私はもう起きているのが限界。布団に横たわる。

娘もすぐに追いかけて来たけれど、寝室まで一緒に来た夫の足に「お父さんいかないで」としがみついている。「早く寝て早く起きたほうが、明日いっぱいお父さんと遊べるよ」と言うと、「そっか!」と言ってすぐに布団に横たわった。素直である。

「身長も、髪の毛もいっぱい寝たらどんどん伸びるよ」と言うと「髪の毛もなんだ!」と驚いている。まだ私がごちゃごちゃとしゃべろうとすると「もう寝よう」と娘に言われた。


2024/9/7(土) ずっと覚えていたい

娘と夫は9時近くまで寝ていた。おかげで私は朝のうちに仕事をこなし、たっぷり自分の時間をとることができた。

起きてきた二人に続いて、階下へ行く。「ホットケーキつくるか、ご飯炊くかどっちにする?」と娘に聞くと、「ホットケーキって言われたらホットケーキ食べたくなっちゃう」と言う。そうだよね。

米粉と砂糖や塩やベーキングパウダーを混ぜて、ホットケーキを焼く。「ハートの形とか、ダイヤの形とかにして」とリクエストされたが、とろとろの液体は形をとどめず、結局少し歪んだ円形になった。

散歩に出掛けた帰り道、娘が本物のケーキを売るケーキ屋さんをやりたいと思ってる、と言う。どうしてケーキ屋さんしたいと思ったんだっけ、という話になる。娘が「お母さんが持ってるきれいな石がほしいと思ったんだけど、それは買えないってなったから、自分でお仕事してお金集めようと思ったんだよ」と言う。

そうだった!娘のお財布にある小銭では買えない、という話をすると「なんでお母さんは買えたの?」と聞かれた。「お仕事して、お金もらったから、そのお金で買ったんだよ」と話して、そこから自分で働こう、という発想になったのか。親からもらおうとするのではなく、自分で稼ごうとする。自営業の両親の子として生まれた娘の、そんな姿勢は応援したい。

帰宅すると、娘は自転車を漕ぎに行きたいと言う。12時近かったから、私も夫もお昼を食べてからにしたい。「じゃあお母さんお昼作って」。できるだけ早く出掛けたいらしい。「暑かったからちょっとフーってさせて」とお願いする。

今度は「トイレ一緒に来て」と言われて娘のトイレに付き合う。トイレから出てきた娘に「お母さんそろそろフーってするの終わったかな?」と聞かれる。終わったもなにも、あなたのトイレに付き合っていたのだ。

仕方なく立ち上がり、昨日はらっぱで友達にもらったうどんを茹でた。もちもちの平麺で、とてもおいしかった。

食後すぐに娘と夫ははらっぱへ出掛けていった。暑い盛りの時間にご苦労なことだ。私は3つ隣の駅まで出かけようかどうしようか迷っているうちに、眠くなる。スマホを開いたら、中高時代の同級生から同窓会のお知らせが来ていた。ほぉ!と思い、ごろんと横たわると昼寝していた。起きたら15時だった。

ちょうど夫から「今から帰ります」と連絡があり、二人が帰ってきた。

隣町のお店で開かれている、友達のデニムパンツのポップアップショップに行ってみることに。友達の在廊は16時までで、すごくギリギリなのでは、という気がしたが、顔を見るだけでも!と思って3人で行ってみる。

幸い友達はまだいて、私は試着させてもらって、薄手のデニムパンツを注文することに決めた。嬉しい。帰る頃、ちょうど友達のパートナーと子どももやってきて、挨拶できた。行ってよかった。

家に帰宅。今日の夜ははらっぱで夜市だ。盆踊りがあるとのことで、浴衣を着ていくつもりでいた。まずは娘に浴衣を着せる。「浴衣に合う髪型 子ども」と検索して出てきた髪型の中から、娘が気に入ったものをイメージしながら、編み込みをした。

それから、YouTubeの着付け動画を見ながら、自分の浴衣を着る。なんとか着ることができた。

家を出る頃には、いつも参加している合唱がもう始まっている時間だった。

到着して、合唱隊の方へ向かうと、「ありがとうございましたー!」の声が聞こえる。間に合わなかった。

それから友達の出店に顔を出したり、ハンバーガー屋で夕飯を調達したりした。

食べているうちに、今度は盆踊りが始まった。忙しい。踊る輪に加わる。短い振りを繰り返して、だんだん振りが体になじみ、調子が出てきた。もう少し踊りたかった、というところでおしまいになった。

今度はかき氷を求めてキッチンカーに並んだ。一緒に並んだ友達と「クレープもおいしそうだね」などと悩む。あれもこれもおいしそうとはしゃぐ大人たちには動じず、娘はかき氷に心を決めていた。自家製シロップのマンゴーかき氷を注文する。

わたしたちの次にいちごシロップのかき氷を注文したKちゃんが「一口ちょうだいよ」と娘に言う。娘はかたくなに一口あげることはなかった。一口交換したらいいのに、と思ったけれど、いちごシロップをすでに別の場所で食べたことがある娘は、もう食べなくていいらしい。

かき氷を食べて、集まった友達とおしゃべりする。娘は私の膝に座る。「お父さんがいない」と言うので、「探してきたら」と言うと、駆けていった。戻ってくると「どこにもいない」と言う。車の中で待ってくれているのかもしれない。電話をかけてみると、その通りだった。

友達に別れを告げて、車で家に帰る。

浴衣を脱ぐとき、体がほろほろと緩まる。湯船には浸からず、順番にシャワーを浴びた。

布団に横たわる。娘は足元の方に転がっていった。「手つなぎたかったら呼んでいいよ」と言われる。少しして「手つなぎたい!」と呼ぶと「はーい」と言ってコロコロ転がりながら戻ってきてくれた。

「手もつなげるし、お母さんの上に乗ることもできるよ」と言って仰向けになっている私の上に乗っかった。娘をぎゅっとする。この小ささを、この感触を忘れたくない。「覚えてたいなあ、ずっと」と口にすると、「まだまだずっと一緒にいられるよ」と腕の中の娘が応えた。

それから娘も隣にごろんと横たわらせて、しばらく手をつないでいた。「手離して寝よっか」と娘が言ったのを合図につないだ手を離して、それぞれ好きな方へ寝返りを打って寝た。


2024/9/8(日) 去りゆく夏を満喫している

9時過ぎに、夫と娘が起きてきた。これといった予定のない日。昨日の晩、夜市で会った友達と話題にあがったM町へ行くことにする。

それぞれ水着を着て、その上に服を着て、10時に出発。

隣町のパン屋さんに寄り道して、朝ご飯を購入。車で食べながら移動した。具がたっぷり乗ったフォカッチャも、千切りキャベツと大きなコロッケが挟まったコロッケサンドも、どれもおいしいけれど、車で食べるのには向いていなくて、アワアワしながら受け渡し、がぶりとかぶりついた。

高速に乗りそびれたり、間違って左折レーンに乗ってしまったりする。「ミスった!」と夫が言うものだから、娘が「ねえお父さん何回ミスってるの?大丈夫?」と心配そうにしていた。

迂回しながら、無事にM町のK浜に到着。時刻は12時頃。駐車場は空いていないか...と思ったら、たまたまひとつ空いているところを発見!ラッキー!

水着になって、海へ向かう。浜の岩はヌルヌルしていて、何度も滑ってこけそうになりながら、いや、こけたりしながら進んだ。娘はこわくて、ずっと夫をつかんでいる。腰履きになっていた夫の水着の腰の当たりをつかんでいるから、夫の水着がどんどんずり落ちてきた。(安心してください、もう一枚内側に履いてます。)

夫と娘が海に入る。娘はライフジャケットに浮き輪の重装備だ。なかなか夫から離れられない。波打ち際でザブンザブンしている二人を見ている。

やがて私も入ってみようと、帽子とカーディガンとサングラスとイヤリングを外す。岩のてっぺんの濡れなそうなところに置いた。

ジャボンと海に入る。岩場の近くは足が着く。「こっち魚いるよ!」と言われて、夫と娘がいるところまで行く。足がつかなくなった。20メートル泳げたのは、小学生の頃の記録だ。中学高校とプールの授業もなかった。私は大して泳げない、という自覚がある。

「足がつかなくてこわい」と言うと、夫が引っ張ってくれる。娘が「ママこわいって言ってるのに、どうして引っ張るの!!!」と激怒して泣き始める。夫は安全なところへ連れていってくれるつもりだったのだが、娘には、さらにこわがらせようとしているように見えたらしい。それから「ママー!」と夫を離れて私の方へくると「大丈夫だからね」と体に手を回してくれた。

私を守らなきゃと思うことで、夫から離れることができた娘は、それから悠々と浮かびはじめた。「〇〇ちゃんはライフジャケットだけで浮ける?」と聞くと、岩場に立って、浮き輪を脱ぎ、私に貸してくれた。娘サイズの小さな浮き輪をなんとか体にはめて、私も再び海へ。

浮かべる安心感を得て、娘と一緒に海へ漂った。

たまにゴーグルをつけて海の中を覗くと、虹色の魚や、黄色と黒のしましまの魚、青色が鮮やかな魚など見ることができた。

「きれいなお魚いるよ!」と娘に言うけれど、娘は顔をつけようとはしなかった。

たくさん泳いで漂って、疲れてきたように感じた。岩場へあがると、体が重たい。着いてから1時間半ぐらいが経っていた。

海からあがり、洋服へ着替える。お昼ご飯を食べに、駅前のピザ屋さんへ。お昼の営業が終わる間際に滑り込む。

空いている店内で、娘はオレンジジュース、夫は甘口ジンジャーエール、私は辛口ジンジャーエールで乾杯した。ああ楽しい。去りゆく夏を満喫している。

頼んだピザはどれも、塩辛や青のりやアンチョビのようなものや、磯の香りがするトッピングがしてあって、おいしかった。さっき食べたパンがまだお腹に残っていて、娘は2枚、私は4枚と2口、残りのほぼ10枚は夫が食べた。

M町ではいくつか行ってみたいお店があった。ピザ屋さんから歩いてすぐ行けそうな、「本と美容室」へ。本屋さんと美容室が一緒になったお店、と聞いて気になっていた。

地図アプリを開いて向かうがたどりつけず、インスタの道案内を見ながら、歩き直した。

小道を行った先にある小さな民家の水色の扉の前に「本と美容室」と書かれている。開けてみると、シャンプーとカラー剤が混ざったような美容室の香り。ゆったりとした空間に、鏡や、ヘアカットに使うだろうイスなどが置かれている。「本屋さんですか...?」扉から顔を出しながら、おそるおそる聞いてみる。「どうぞ」とお姉さんが言ってくれて中へ足を踏み入れる。

美容室の、左手の奥の廊下へ案内される。その向こうには、本棚がぐるりと囲むスペースがあった。本棚には、腰掛けられる場所がある。あれもこれも、と好きな作家さんや写真家さんの本があって、手に取る。楽しい。

私も夫もそれぞれ1冊ずつ買いたい本を見つけて、さっきのお姉さんにお会計をしてもらって帰る。

まだまだ訪れたい場所はあったけれど、海に入って疲れたし、今日はここまで、また来よう、とM町をあとにした。

車の中ではブロードウェイ版ミュージカル「アナと雪の女王」のCDがかかっている。「Elsa」とアナが呼ぶ発音を夫がマネしてみる。娘から何も反応が返ってこない。と思って振り向くと、寝ていた。

帰宅して、すっかり脱力して寝ている娘を夫が抱っこして部屋に運ぶと、娘は目を覚ました。運ぶ途中に起きたのかもしれない。

お風呂を沸かして、娘と入る。その間に今度は夫がリビングに転がって寝ていた。


2024/9/9(月) 明日のわたしをパンチで起こして

朝、5〜6時はまだ涼しい。草刈りでもしようか、と思うけれど、頭が冴えているこの時間にやりたいことがいっぱいあって、結局草刈りはしないまま。我が家の庭は草が伸び放題だ。

8時過ぎに娘が起きてくる。お弁当をつくる。今日は友達に娘を預かってもらえる日だ。何かおやつも準備しなければ。

するめいかがあった。「するめでいい?」と聞くと「やだー」と言われる。するめ、おいしいし、ずっと噛んでいられていいのに。「桃は?」「桃は家で食べたい」。

昨日パン屋で買った食パンが目に止まった。これをラスクにすればいいのでは?調べたらフライパンでいけそうだ。パンを小さく切って、バターで炒め、砂糖をかけてラスクにした。急な子どものおやつも作れる私、えらい!と自分を褒める。おいしくて、たぶん3つぐらい味見した。

娘を集合場所まで送り、「じゃあね」と言って帰ってきた。

帰宅して洗濯物を干す。それからオンラインで取材内容のすり合わせとインタビュー。今日もとても良いお話が聞けた。

娘のお弁当に詰めた卵焼きやオクラやかぼちゃをご飯に乗せて、お昼ご飯にする。

午後も仕事。細々した作業を色々とこなす。

16時半に娘のお迎えで果樹園跡地へ。ちょっと体を動かしたほうがいいな、と思い、車ではなく、自転車で行く。

娘は、ベンチに寝っ転がっていた。「おうちごっこ」をしているのかもしれない。そういえば娘が言うところの「おうちごっこ」は、私が子どもだった頃は「おかあさんごっこ」と言っていた気がする。「女性だけが家のことをするわけではない」という時代の変化だろうか。たしかに「おかあさん」以外の役割もたくさんあるんだから、「おうちごっこ」のほうがしっくりくるようにも感じる。

「まだ帰りたくないー!」という娘を自転車に乗せて帰る。久しぶりの預かってもらう時間。楽しかったようでよかった。

帰宅。涼しくて、今なら草刈りができるかも、と庭の草を刈る。家の周りを一周ぐるりと刈っていたら、汗だくになった。

草刈りを終えて、家に入り、炒め物やサラダをつくる。

明日からは娘と二人だ。娘の好きなポテトサラダをあとで仕込もうとジャガイモを茹でながら、夕飯を食べる。

食事をしながら、「明日からはお父さんがお出かけで、週末まで帰ってこないね」と話す。「さみしいなあ」と娘。二人でどこかにご飯を食べに行ったりしてもいいなあなどと考えていると「お父さんはばあばの家に泊まるんでしょ?〇〇ちゃんも行こうかな」と娘が言い出した。

関西出張の夫は、初日は実家に泊まる。でもその後2日間は、仕事場近くのホテルに泊まると言っていた。「〇〇ちゃん一人で泊まれる?」と聞くと「できるかも!」と言う。先日も私の実家に一人で一泊したから、自信がついている。

帰宅した夫に相談。それからじいじとばあばに電話。「もちろん良いよ!」と言ってもらう。

娘は張り切って、着替えや歯ブラシなどをリュックに詰める。「水筒のお水入れ替えて」と渡される。もう水筒も準備しておくらしい。

私は食器の片付け。茹でていたじゃがいもの皮をむいて、つぶし、油と塩をまぶして、冷蔵庫に入れておいた。

先日誕生日だったばあばに手紙を書こうと買っていたカードがあった。「新幹線の中で書く?」と聞くと、「今書く」と言う。おたんじょうびおめでとう、などと書いていた。

「〇〇ちゃんのお手紙嬉しいと思うよ。お母さんもいつももらうと嬉しくなっちゃう」と言うと、「お母さんにも書いてあげるね!」と自分の遊び場のどこからか紙を取り出してきて、何やら書いてくれている。

「はい、どうぞ!」「ありがとう」。「なおこちゃんのご はんわいつもお いしい だいすき すてき」と書いてある。不思議なところで区切られているのが楽しい。それぞれの区切りの後にはすべて、♡と◇のマークが書かれていて華やかだった。

寝たのは22時過ぎになった。関西出発のため、明日は6時前に起きなければならない。「〇〇ちゃんが寝てたらパンチで起こして!」と娘が言う。「こうやってパンチするね」とグーにした手で娘の頬をふにふにと押した。


2024/9/10(火) 突然自由がやってきた

朝5時過ぎに起きる。二人のことをちゃんと起こさなければ、と思いながら寝たため、眠りが浅かったように感じる。

階下にいると、5時45分、夫の目覚ましが鳴って、すぐに足音が聞こえた。夫は起きたらしい。

階段をあがって寝室に。「おーい〇〇ちゃん」と声を掛けると、娘はすぐに布団の上に座った。「覚えてた!起きた」とまだ眠そうな目のままにっこりして言う。パンチせずとも起きられた。

昨日のうちに準備して枕元に置いていたワンピースへ娘はすぐに着替える。「お父さんより早くお着替え終わっちゃった!」。

私は急いでサンドイッチをつくる。昨日つぶしたジャガイモにツナを加えてツナポテトにしたものと、ゆで卵をつぶしてマヨネーズで和えたのを具にした。ラップで包んで、紙袋に入れて、夫に渡す。

6時20分頃、二人は出掛けていった。さみしくなるなと思って、娘をぎゅっとする。「会いたくなっちゃうから電話しないかな?」「うん、帰る前の日まで電話しないね」。夫がひくスーツケースを「〇〇ちゃんがゴロゴロしたい!」などと娘が言う。「電車来ちゃうから急いでね」。駅へ向かって歩いていく二人に手を振った。

家の中に戻る。さて、急にひとりだ。自由すぎる。たくさん仕事できるし、本も読めるし、映画も見れる。わくわくとソワソワと。

洗濯機を回す。余ったツナポテトサラダをパンの上に乗せて、トーストして食べる。ゴミを捨てに行く。

アフリカンダンスのレッスンに顔を出す。良い汗をかいて帰宅。

お昼ご飯を食べて、仕事。

仕事が一段落ついて、もう空が暗くなる頃、車に乗ってスーパーへ。20%オフのシールが貼られているお寿司を買った。私にとってひとりでできる贅沢といえば、スーパーでお寿司を買う、なのだ。

シャワーを浴びて、お寿司を食べ、ビールを飲みながらコメディ映画を見た。娘も寝ていないし、夫も仕事していないから、心置きなくワハハと笑える。贅沢贅沢。

22時ぐらいになっていた。そろそろ寝なければと食器を洗う。

洗っている途中で、冷蔵庫の上の壁に、バッタがとまっているのを見つけた。いつどこから連れてきたのだろう。

食器を洗い終えて、ほうきを取りにいく。ほうきの柄でバッタをこちらへ動かす。捕まえて外に出そうと思ったのだ。そろそろ捕まえられるか、と思ったとき、こちらへパタパタパタと飛んできて、うわぁ!となった。

ふと、もしかしたら、亡くなった誰かがバッタに姿を変えて会いに来たのかもしれないと思う。

夏から秋にかけて見られるショウリョウバッタは、亡くなった人の魂だといわれると聞いたことがある。以前亡くなった友達に挨拶に行ったとき、帰り道に車にバッタがとまっていて、ああ来てくれてありがとう、って言っているのかなと思ったのを思い出した。

だとしたら、ほうきで押しのけるようなことをして悪かったな。

バッタはどこに行ったかわからないまま、寝ることにする。

寝る前、昨日娘にもらった手紙を開いてみる。よく見てみたら、「なおこちょんえ」と書かれている。本文も「なおこちょん」から始まっていて、思わず吹き出した。

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