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中医学 part2

こんにちは、国際薬膳師の水藤直子です。今日は前回から引き続き、中医学について少しお話しします。

中医学は医学システムではあっても、包括的なアプローチをするため、現代医学とは違うということを前回お話ししました。そして中医学の最も大切としているところは、私たちの「健康と長寿」で、「予防」することに最もフォーカスしています。健康で長生きすることは、どの時代も共通したテーマなようで、中医学の養生が確立されたのは遙か昔のことになります。

中医学には、数千年にわたり受け継がれてきた重要な文献が沢山あります。古代よりの人類と自然の記録、臨床の記録、食材や薬に使われる草花動物鉱石の記録など、想像を超える数の文献があります。その中でも最も重要とされているのが「黄帝内経」です。「黄帝内経」は中国伝統医学の基礎理論の元となった経典と言われるもので、紀元前200年頃漢の時代までには、存在していたとされています。複数の人によって書かれたのではないかとされ、未だに読み継がれて、研究されています。明の時代に書かれた「本草綱目」とともに、世界記憶遺産にも登録されています。この黄帝内経には、自然界を観察したこと(天文学・気象学・地理学・生物学・暦学など)、心理学、哲学、それから食材の特性や作用・使い方、人体の生理・解剖・病理・診断・治療などが81篇に収められています。養生保健に関する記載もかなりの部分を占めています。そこには、四季に合わせた飲食をし、情緒を調え、精神を養えば、体のバランスは保たれ、健康で過ごせる、とあります。病気になってから治療するよりも、予防する方が大切であると述べられています。この2000年以上も前に書かれた内容は、現在にこそ適用したい大切な考え方ではないかと思います。

中医学の考える予防・養生法は、何か特別なサプリをとる、〇〇活のような特別な食療法やマッサージをする、というようなことではありません。この数十年の間、さまざまなサプリや健康法が出ては消えていったのは、現代の科学によって魔法のような秘薬を見つけたいという、人間の願望からの短絡的な考えの結果なのでしょう。中医学の養生は、地味で遠回りに思えますが、おそらく健康と長寿への一番の近道だと思います。

中医学では、心は体と切り離せないものであり、自然と私たちも切り離せないものです。その心と体のバランス、自然とのバランス、体の中の臓腑のバランス、気血のバランス、すべてが調和すれば健康が維持され、長寿がかなうとしています。どのようにすればバランスがとれるかは、黄帝内経に書かれています。短くまとめると、次のようなことになります。

1. 規則正しい生活:当たり前のようですが、ここを掘り下げると一冊以上の本になるでしょう。この中には、四季に合わせた飲食をこころがける、暴飲暴食はしないこと、味の偏り(甘い物や辛い物、酸っぱい物などの取り過ぎ)は避ける、消化の良い物を食べる(揚げ物、味の濃いものは消化しにくいため、代謝しきれないものが残ります。嗜好品と考え、頻繁には食べない方が良いでしょう)。疲労しすぎないようにする。休息のし過ぎも体を痛める原因になります。季節に合わせて、寝起きの時間を考える(現代の生活では少し難しいかもしれません。冬は睡眠時間を長めにとった方がいいです)。

2. カゼや感染症の予防:中医学ではカゼやインフルエンザなどの原因を外邪と呼びます。予防法は季節に応じた飲食と行動をし、外邪が体に侵入するのを防ぐことになります。

3. 体を鍛える:季節に応じて、無理のない範囲で体を動かします。マッチョになることではありません。特に40代以降は、関節を柔軟にしておくことは大切になります。40肩、50肩の予防にもなります。動かしていれば、痛みも出にくいと考えます。動いている水は腐らず、いつも使う戸の蝶番は朽ちない、に通じています。中医学では太極拳や気功(日本で認識されているハンドパワー的な気功とは違います。運動です)が、運動療法になります。

4. 精神を整える:自分に合った方法で、心を落ち着けます。過去をいつまでも後悔しない、未来のまだ起きていないことを心配しない。心が軽く、前向きであれば、内臓の働きも良くなります。

このいずれにも薬膳(食養生)は大きなウエイトをしめます。日々の食事がいかに大切かということになります。しかし四つ目の精神の問題に、薬膳は関係なさそうに思われるかもしれません。精神活動は私たちの体から出るもので、脳だけが独立して司っているのではありません。脳も体の一部で食べた物からエネルギーを得ています。私たちの体は、両親から大切な遺伝情報をもらって生まれてきます。生まれ落ちた後は、口より栄養を摂取することで、成長し肉体を保持していきます。食べなければ何日かの後に死んでしまいます。その毎日食べている物から、私たちが歩く、物を掴む、何かを見る、笑う、話す、考える、肌を潤す、呼吸する、排泄するなど、すべての生理活動・行動のエネルギー源を得ています。食べた物から、体の各組織に必要な栄養素を作り出しているのが、胴体の中に納まっている五臓六腑になります。五臓六腑は、小さな化学工場のようで、非常に精巧で入り組んだ仕組みになっています。未だに内臓を完璧に複製した、と言う話は聞いたことがありません。脳はコンピューターのような存在と考えますが、毎日使っているPCやスマホが、電気がないと使えないのと同じで、私たちの脳も食べ物から得た動力源なしには動きません。こういった理由から、精神の問題と思われるときも、薬膳や漢方薬はとても効力があります。

実際に上記の4つのリストを詳しくお伝えしようとすれば、とても膨大な量の情報となってしまいます。中医薬膳学や養生の本、「黄帝内経」は、いくつか本屋やネットで販売されていますので、興味のある方は読まれてみるのもいいかもしれません。私も教室やイベントで、わかりやすくお伝えしています。興味のある方はInstagramやホームページをチェックしてみてくださいね。

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~プロフィール~
水藤 直子(すいとう なおこ)
国際薬膳師
国際中医師
本草薬膳学院 広島校講師

広島県呉市出身。学習院大学卒業後、大手総合商社での勤務後、渡米。カナダのブリティッ シュコロンビア州立大学(The University of British Columbia)を卒業後、バンクーバーで会計士として働く。アメリカ・カナダでは勉強、仕事、友人を通じ、様々な文化思想に触れ、食が健康に与える影響についても気づかされる。日本に帰国してからは、難病の母の面倒をみながら薬膳学・中医学を学び始め、国際薬膳師・国際中医師の資格を取得し、今に至る。現在は、本草薬膳学院広島校講師、お寺で薬膳茶会、自宅で薬膳教室など、薬膳普及活動をしている。

~強み~
薬膳、英語、豊富な海外経験(英会話教室や個人的にも英語を教えている)

~やりたいこと~
薬膳を広める

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