コンビニ廻るよ、どこまでも〜朝〜

コンビニの朝は早い。
正確に言うなら、コンビニ店員の朝は早い。
山口まりの出勤は朝の4時だ。
「おはようございまーす。品出ししますか?」
「山口さん、おはようございます。
じゃあ煙草、お願いします」
『店長 日比谷』の名札を付けた男が答える。
深夜から働いているはずだが、いつもと変わらず落ち着いた声だ。
まりは大量の段ボールを開けるべく、気合いを入れる。
あと一時間もすれば出勤前のお客さんが来るから、品切れは無くしたい。
「山口さん、頑張ってくれて有り難いです。シフトも沢山入れてくださって助かります」
レジを精算する手を止めずに日比谷が言う。喋りながらも、その手はてきぱきと動いている。どうやったらあんなに正確に動けるのか不思議だが、とにかく自分の仕事を片付けなければと、まりも手を動かす。
「家から近いし、早起きするのは得意ですから。
子供が大学に進学してからお弁当作らなくなって、その時間がぽっかり空いた所にこうして働けるのは、むしろこっちがありがたいですよ」
「お子さんは、春から東京で一人暮らしでしたっけ」
「はい。ご飯作るのが面倒!って言ってますけどね」
「お母さんの有り難みが分かってくる時期ですねぇ」
「だと良いんですけど」
ぴんぽーん♪
「いらっしゃいませ」
「いらっしゃいませ!おはようございます!」
来店の音楽が鳴ったら挨拶をする。
最初はとっさに反応出来なかったが、最近は考えるより先に出来るようになった。
「さて、精算も終わりました。
今日も頑張りましょう」
「はい!」
まりは段ボールを片付けると、笑顔でレジに立った。







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