恩寵の次元に生きるということ。
病気になって一週間ほど、ただくつろいでいた。
何もせず、ただリラックスして座っていた。
あえて、自分の身体で何が起こっているのか言語化すると、「腹がすわっている」状態だ。
三つの丹田(上丹田である第三の目、中丹田であるハート、下丹田であるハラ)のエネルギーが一つに溶けあっている。
「腹がすわる」ことができるようになると、「今ここ」にただ何もせず樹木のように座っていられるようになる。
くつろいで何もしないことは退屈ではない。
むしろ至福だ。
たとえば、公園に植えてあるプラタナスの木を思ってみる。
プラタナスの木は別に退屈しているわけではない。プラタナスの木はただそこにくつろいで、うつろいゆく景色を楽しんでいる。
木はディナーを堪能することもなければ、旅行に行くこともない。恋人だっていない。でも木は至福に満たされている。
木のようになってごらん。
そして、第三の目から世界を見渡し、この世で起こることが幻想であると見抜くこと。
その目から世界を観れば、たとえあなたが今、病気だったりお金がなかったり、問題と思えるようなことが目の前で起こっていても、
あなたはそれを映画のスクリーンに映る劇(ドラマ)として眺めることができるようになる。
そして、ハートのなかに住んでいる、あなたの魂を生んだ母親に明け渡し、抱きしめられながら、人生で起こることを信頼する。
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かなりひどいウイルスに身体を侵されていた僕は文字通り何もできない状態で十日ほどを過ごした。
その間、恩寵が降り注いだ。
思考や欲望、それから不安や恐怖が減ったのだ。
もちろん全てが消え去ったわけではない。でも、今この瞬間にただくつろいでいられるようになった。
ただ静かに椅子に座ったり、ベッドに寝転がっている間、僕は完全な至福のなかにいた。光で満たされていた。
ひとは普段、病気や事故や様々な問題が起こった時、それを拒絶してしまう。しかし、起ってくることにゆだね、明け渡した時、ただちに恩寵がやってくる。
僕にとって、ウイルスに身体を侵される、ということはまぎれもない恩寵だった。
病気になる二週間前と、今ではちがう人間になっている。
今あるのは愛と至福だけだ。
創造主、あるいはハートのなかの母なる神が僕に内的な手術を施してくれたのだ、と思っている。
そして、自分は創造主から──ハートの中の聖なる母親から、見守られ、愛されている、という強い確信も得た。
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今月、治療代やら、人に教えるために購入した文献費、あるいは、その道の専門家の方から自分の伝えていることが正しいか、確認するために話を聞いたりして、その謝礼金などで出費がかさんだ。
数日前の晩、僕はこんなことを考えながらねむりについた。
「お金がないなあ。まあ、でも何とかなるかな」と。
その翌朝。
母親に会った時、開口一番、彼女は「はい、これ」と言って、僕に一個のバッグを手渡した。
どうやら、もらい物の使わなくなったブランド物のバッグで、「どうせあんたお金ないんだから店で買い取ってもらったら」と言うのだ。
僕は言われた通り、それを店に持って行って、買い取ってもらった。すると、受け取った金額で今月、必要だった出費を賄うことができたのだ。
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宇宙はあなたを愛している。
神はあなたに手を差し伸べている。
その差し伸べられた手を拒否しているのは、まぎれもない、あなたの思考であり、欲望だ。
あなたが「あれを手に入れよう」、「人生をもっと良くしよう」、「人生を成功させたい」と思っている間は、恩寵はやってこない。
あなたがもし、何もせず、ただくつろいでいたら、周りのひとや、あなたの脳である思考は「ぼおーとしてないで、現状を変えなさい!」と行動をするようにあなたを責め立てる。
彼らの言うことを聞いてはいけない。
彼らはくつろぐことも、恩寵のことも何も知らない。
恩寵の世界にあなたが入ると今まで行動して良い結果を得ようとしていた──人生をもっと良くしよう──豊かになろうと思っていた時とは別の世界を体験する。
それは因果関係を超えた世界であり、
今この瞬間、あなたの過去に関係なく、ただちに光が降り注ぐ世界なのだ。
何度も言うけれど、
恩寵の世界に入るためには、深くリラックスすることだ。そして、思考の言う事を聞いてはいけない。
そうすると、あなたはハートのささやきを聞いて、何をするべきか分かるようになる。
そして、あなたの魂が縁のあるひととつながり、そのひとから連絡が来たりする。
母親はその日の朝、ベッドの中でウトウトとまどろんでいる時に、「使わなくなったバッグが箪笥のなかにあるのを思い出したの」と言っていた。
ひとびとの魂はつながっている。
目に見えない神聖な次元でつながっている。
思考や欲望のない透明な世界では、物事が自然に起こるようになる。
そのためにあなたはリラックスして、くつろぎ、明け渡さないといけない。
ハートの静かなささやきが聞こえるようになるために。
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