「ゆるし」は内臓からはじまる。
N様はスピリチュアルとは無関係な仕事をされていて、とても真っ当な方という印象を受けた。そして、その印象は最後まで変わらなかった。たくさんの本を読まれていて、知識が豊富な方だった。
話してゆくにつれて、「どうやって、ひとをゆるすか?」という話題に自然と行き着いた。
N様も僕も「元々、人間は、光そのものだ。太陽のように明るく光っている。しかし、家庭環境や職場の環境などで傷つき、自分も他人も愛することができなくなってしまう」という意見に同意した。
N様はひとをゆるす時、攻撃をされた相手を「このひとは傷ついているんだな」と理解してあげるということを話されていた。
確かにそうだ。でもそれはあくまでも頭での理解であって、体感が伴っていないと感じた。
頭のなかでそのひとをゆるしたとしても、身体はそのひとをまだ恨んでいる。
小さなもうひとりの少年のようなN様が暗闇のなかでうずくまって泣いているか、顔を真っ赤にして怒っているかもしれない。
「普段、身体の感覚を感じていますか?」と訊くと、N様は「あまり、やっていない」と答えられた。
さらに深く訊くと、「自分は知識としての理解を得るのは好きなのですが、身体の感覚を感じるのが苦手なんです」とおっしゃっていた。
僕の率直な感想は「ほんとうにゆるせるだろうか?」だった。
そして、N様の精神世界の理解が「頭から身体に降りて行かなければいけない」と感じた。
「怒り」は人間の身体のなかで、みぞおち、の辺りに感じると思う。ヨガの世界で言うところの第三チャクラなのだけれど、ここは、「怒り」の感情を司っている。
多くのひとはここに「怒り」をため込んでいる。
母の知り合いの女性で第三チャクラに関係する膵臓に病気を患っている方がいて、そのひとは傍から見ると、とても穏やかで優しいのだけれど、母が言うには、会話すると夫や姑の文句ばかり言うのだと言う。
直観的に僕はその女性の病気は「怒り」とつながっているかもしれないな、と感じた。もちろん、要因は感情だけではないから、断言できないし、科学的な根拠はない。
僕のエピソードを話す。
学生時代から親しくしている友人がいた。彼は職場で上司とうまくいっておらず、大きなストレスを抱えていた。
そして、僕は受け皿になって、彼の苦しみをLineや電話で聞いていた。僕が「こうしたらどうだろう?」というアドヴァイスをしても、「どうせお前には俺の気持ちが分からない」と逆ギレされることが半年ほどつづいた。
友人から連絡が来るのが、嫌になっても、「あいつは本来良いヤツなんだ。今は、ただ傷ついているんだから、ゆるしてあげなくちゃな」と思っていた。
しかし、ある日、それが限界に達した。ふたりで会った時、僕のnoteの文章や内容を笑って、馬鹿にしはじめたのだ。これもう見過ごせなかった。
僕は「もう、いい加減にしてほしい」とはっきり言った。
すると、彼は目が覚めたように、謝罪をしてくれた。彼は僕になら何を言ってもゆるされるだろう、と思っていたのだ。
彼に自分の思いを伝えた時、僕のみぞおちの辺り、つまり第三チャクラの周辺がもう一個の心臓のようにドクドクと脈打っていた。とてもつよいエネルギーを感じた。
たぶん、あのまま我慢し続けていたら、僕は文字通り病気になっていたと思う。
あらゆる感情のなかでも「怒り」は一番強烈だと思う。これを放置してはいけないと思う。僕は家に帰ってから、時間をかけて、怒りを浄化していった。
大きな塊になってしまったお腹のなかの「怒り」をじっくりと感じながら、目を閉じ、手を当てて、ゆっくりと、深く呼吸をしていった。
すると、少しずつ楽になっていった。次に、悲しみが出てきた。
その友人は僕が唯一、noteを書いていることを知っているリアルな人間だった。つまり、それだけ信頼し、仲が良かったひとに、ひどく傷つけられたのだ。怒りだけではなく、悲しみが出てくるのは当たり前だと思う。
その感情が深く呼吸することで明るみになったのだ。
今まで彼に攻撃されながらも、我慢して苦しんでいた自分を労わる気持ちが生まれ、自愛が生まれた。
怒りや悲しみは浄化すると、愛に変わる。
次に起きたのは、友人に対する腹からの理解だった。
この時の理解は、彼に自分の思いを伝える前に我慢しながら、頭で「ゆるさなくちゃ」と考えていた時とは、まったく異なる、神聖なゆるしだった。
自分の身体から生まれた愛の光が彼を包み込んでいるようだった。そして、学生の頃の彼との思い出が自然に思い出されて、少し涙がでた。
ほんとうの意味での「ゆるし」は、身体の中から起こる。
そして、攻撃をしてくる相手にまずは、「やめてください」と言う勇気も必要だ。
あるいは、距離を取ることも大事。
苦しかったら、ゆるす前に、まずは自分の身を守らなければいけない。
愛とゆるしは、知的な理解ではなく、いつでも自分の内臓から始まる。
naokifloweroftheheart@gmail.com
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?